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シマダノメ『見たよ!聞いたよ!練習場で!』Season.2 No.008

シマダノメ『見たよ!聞いたよ!練習場で!』Season.2 No.008

オーストラリアの『メルボルン・シティFC』への移籍が発表された椿直起選手に北九州を離れる直前にリモート取材をお願いして心の内を語ってもらいました(取材日11月30日)。このコーナーの番外編として「サヨナラ、行ってきます」のミニ・インタビューをお届けします。

―突然の移籍に驚いています。

移籍すること自体はすでに決まっていたのですが、いつチームを離れるべきかについては1カ月前くらいからシンジさん(小林伸二監督)とは話していました。でも、急きょ、向こうに行くことになって。それが決まったのが岡山戦(11月28日)の前日でした。

―オーストラリアにはいつ出発するのですか?

12月3日です。4日に向こうに到着しますが、新型コロナウイルス感染予防のために2週間の隔離措置があって、それが終わってメディカルチェック、本契約という流れになる予定です。

―『※オーストラリアAリーグ』の開幕はいつですか?

12月27日です。 (※『オーストラリアAリーグ』…オーストラリアのプロ1部リーグ。2004年にスタートした新しいリーグ。2020-21シーズンは椿選手が移籍するメルボルン・シティFCを含めた12チームで戦う。通常シーズンは10月開幕、7月閉幕の3回戦総当たりで行なわれていたが、今シーズンは12月末開幕、5月末閉幕の2回戦総当たりで実施予定)

―移籍を決断した理由は?

小さいときから海外のビッグクラブでプレーすることを夢見ていて、プロになってからもそれが目標の一つでした。そのためにJリーグで活躍する。そういう考え方でしたから、今回、海外から誘いがあった時は「すぐに行きたい」と思いました。

―シーズン途中でチームを離れることについて。

シンジさんとも12月20日の最終節までは戦うということで話を進めていたので、それが岡山戦の前日にシーズン終了前に切り上げとなり、僕自身もビックリしたところはありました。でも、12月27日の開幕日から逆算して、2週間の隔離、そこからチームに合流してチーム戦術の確認、理解という流れを考えると、致し方ないのかなとも思いました。いずれにしても12月3日の出発でも開幕戦に間に合わない可能性が大きいですね。

―第37節の岡山戦に先発、62分で交代した後、ゴール裏サポーター席の前を通ってベンチに戻る時に、サポーターから受けた拍手をどのような気持ちで受けていましたか?

僕はその試合が最後だということが分かっていて、でも、サポーターの方々はその試合での「御苦労さま」という意味で拍手を送ってくれたと思うので……。サポーターの方々にあいさつすることもなくお別れしなくちゃいけないので、かなり気持ちは複雑でした。

―移籍するのはメルボルン・シティFCというチーム。同じメルボルンを本拠地とする『メルボルン・ビクトリー』というチームもあって、そのチームでかつて本田圭祐選手がプレーしたことがあり、『ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC』では小野伸二選手がプレー。日本を代表する選手がプレーしたオーストラリアで海外初挑戦。いろいろなプレッシャーがありそうですが?

プレッシャーというものはまだ感じていませんが、不安は多少なりともあります。不安があると言いましたが、サッカーの面では自信を持って行きます。でも、言葉の問題によるコミュニケーションとか、日常生活の事とか、そういう面での不安があるということです。

―向こうでは通訳の方がつくのですか?

いいえ。半年間の契約ですし、何か得て帰ってこないといけないと感じていて、自分から積極的にコミュニケーションを取ることにチャレンジする、という意気込みと取ってもらえれば(笑)。

―外から見ているだけの印象ですが、椿選手の性格からすれば、ばっちりコミュニケーションは取れるでしょう?

僕の性格だから難しいかも。自分から飛び込んでいくのはムリ、ムリ、ムリ! 下から入っていって、行ける! となったら、行くタイプなので。

―じゃあ、プレーで自己アピールをしていく、と。

そうですね、サッカーをプレーすることで認めてもらって、チームに馴染んでいくつもりです。

―椿選手が横浜F・マリノスからの期限付き移籍という形で北九州にやって来たのは2019年、夏真っ盛りの8月でした。そこからこの11月までの16カ月間、北九州の一員として過ごした約1年半で何を手にしましたか?

今年は試合に絡ませてもらって、そこが去年と一番違うところで、試合に出て得たものが多くて、守備とか内側に入ってのプレーについてはベンチ外だった去年から練習で意識してきたことでしたけど、それをやっと実戦の場で発揮できるのが今年でした。それが通用した部分が結構ありましたし、自分の武器であるドリブルは今年、出し切れたかは分かりませんが、通用したという実感があります。でもアシストやゴールという数字としての結果を十分に残せなかったのは悔しいところです。

―先ほど「オーストラリアに行く上での自信を手にしている」とおっしゃいましたが、その自信はここ北九州で手にしたと?

北九州に来るまでの自分はほとんど試合にも出たことがなくて、プロとしては全然でしたが、この1年で試合に出させてもらう中でつかんだ自信がオーストラリアにつながっていると思います。

―チームが変われば椿選手に求められる役割も当然変わってくるでしょう。そこに対応していけそうですか?

そこも不安要素ではあります。向こうのキャンプにも参加していない、いまプレシーズンマッチをやっていてそれにも参加できない、そういう準備期間が少ない状況、しかも半年という短いシーズンを考えても、どれだけ早くチームにフィットできるかが大事になると思います。不安だけど、やるしかないですね。

―それでも向こうは椿選手を欲しがった。

この1年間の自分のプレーを見た上での評価らしいので、その期待には応えないといけないな、と思っています。

―北九州で思い出に残る場所は?

う~ん……、やっぱりミクスタでしょうね。マリノスのユース時代に全国大会での優勝をした地で、そこにプロとして帰って来て、プロ初ゴールを決めて、と。僕にとって縁が深い場所になりました。

―個人的なベストゲームは?

めっちゃ良かった、っていう試合がなかった、というのが正直なところです。でも記憶に残るのは徳島戦(第8節/2-0勝利)ですね。僕がプロ初ゴールを挙げた試合。

―一番悔しかったゲームは?

アビスパ福岡戦、僕がケガをして途中交代となった試合です(第24節/0-2敗戦)。ケガをしたことじゃなくて、やっぱり勝ちたかった試合ということで。

―さきほど生駒仁選手に椿選手の移籍について話を聞いたら、「めっちゃ寂しいです」と言っていました。

絶対、ウソ(笑)。でも、ジン君を含め、ダイゴ君(髙橋大悟選手)たち一つ上の人たちには本当にお世話になったんです。僕は年下なのに生意気な口を聞いていたのですが、一つ下の人間とは見ないで、なんか同い年って感じで、何かある時は「じゃ、ナオキを呼ぼう」と誘ってくれていたので……、僕も寂しいです。

―例えば髙橋大悟選手には今回の移籍について何と声を掛けられたのでしょうか?

移籍で迷っている時期に最初に相談したのがダイゴ君です。普段はおおふざけする人なのに、その時はいろいろな人からオーストラリアの情報や、移籍についての情報を仕入れてくれて僕に教えてくれたんです。今回も急きょ向こうに行くことになったのもダイゴ君には話して、だから岡山戦が最後になると知っていたのは選手ではダイゴ君だけでした。だから僕が交代でベンチに下がる時にダイゴ君は寄ってきてくれて声をかけてくれました。今は「日本代表に入ったらオレの名前を口にしろよ」と、ふざけていますけど(笑)、一番かわいがってもらった人です。

―岡山戦の試合後会見で髙橋大選手に、この敗戦を受けて残りの試合にどう生かしたいか、と聞いた時に、「今日はどうしても勝ちたかった試合だったので、一番は悔しい。今は次がどうこう言える感じではないですけど、良い準備をしたいと思います」と言っていました。その「どうしても勝ちたかった」理由は、勝利で椿選手を送り出したかった、ということだったのでしょうね?

試合後、ダイゴ君はずっとオレに「ゴメン、ゴメン」と言ってくれたんです。僕は気にしないでほしいと言ったのですが、ずっと僕に謝っていました。ダイゴ君は練習場だけじゃなくて、選手寮に帰ってからもずっと一緒にいた人なので、ホントに寂しいです。

―年齢の離れた、例えば岡村和哉選手とか、池元友樹選手あたりからは、どんな言葉を掛けられたのでしょうか?

そういう年上の人たちとも深くかかわらせてもらっていたので、「頑張れよ」という言葉は全員からいただきました。オカさんは「お前ならできるぞ」と。そういうふうに皆から思ってもらえるとことで、僕も自信をもっていこう、と思えたんです。

―ギラヴァンツ北九州のユニホームは向うに持って行きますか?

もちろんです。チームのみんなからサインをもらったので、それを持って行きます。あとは、ダイゴ君と交換したユニホームも。

―北九州のサポーターに向けて一言。

サポーターの方々にあいさつできないまま北九州を離れることは本当に申し訳なく、残念に思っています。できれば、どこかでそういう機会をつくれればと思っています。それがいつになるかは分かりませんが、日本に帰って来た時に、しっかりできればな、と。短い期間でしたが、いつも声援を送っていただき、パワーをいただき、本当にありがとうございました。オーストラリアで頑張ってきます。また、いつか!

文:島田 徹

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