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シマダノメ 第8回
深掘りインタビュー 川上竜選手

シマダノメ 第8回 深掘りインタビュー 川上竜選手

『シマダノメ 深掘りインタビュー』の第8回目は、第9節時点で全試合連続先発出場中のMF川上竜選手の登場です。加入2年目の今季は、キャプテンを務めた昨季の経験も踏まえて、さまざまな点で変化が表れているように感じます。なので、今回はズバリ、川上選手の中で起こっている『変化』について深掘りしました。驚きの事実も明かされます!(取材日=2019年5月30日)。

―今回は、変化をテーマにお話をお聞かせいただきたいと思っているのですが、そういえば髪型、変わりましたよね?

そうなんです。しばらく長めをキープしていたんです。髪は切っていたんですが、すく程度に抑えていました。なぜか?いや理由はなくて、なんとなく。で、今回もなんとなく短めにしました。

―個人的には短めのほうが、川上選手のイメージですね。

そうですか、ありがとうございます。

―昨季と今季の一番の変化と言うと、プレーポジションですよね。去年はセンターバックがメインで、今季は開幕からボランチとして出続けています。もともと、ボランチとしてプレーしていた川上選手ですが、一度センターバックを経験することで、ボランチでのプレーに何らかの変化があったのでは、と推測するわけですが?

去年は最初の4試合くらいは、トップ下というか中盤でプレーして、以降はセンターバックがメインになりました。一昨年、福島ユナイテッドFCに在籍していた時も最初はボランチ、シーズンの後半戦をセンターバックでプレーしました。当時福島の監督だった田坂(和昭)さんから「またボランチに戻った時のことを考えたら絶対に良い勉強になるから」と言われていましたが、その言葉をいま実感しているというか、去年センターバックとしてプレーしている自分が、自分の前にいるボランチに対して感じていたことを思い出しながら今季はプレーしています。「こういう状況の時、ボランチにはあそこにいてほしかったんだよな」と思い出しながらポジションを取る。センターバックのことも気にかけたポジショニング、というのが今季ボランチとしてプレーするようになってからの変化の一つかもしれません。

―センターバックを助けるために何をすべきかを、より深く考えるようになった、と。

でも、そればかりになると、後ろに重たくなる(※チームとして見た場合のラインが下がり過ぎてしまう)ので、ボランチとしてほかにやるべきこともあるわけで、その役割の中で、状況に応じてうまくバランスを取りながらプレーするようにはしています。

―今季はじめ、ボランチが川上選手の主戦場となりそうだと分かった時に話を聞いたら「動けるんで楽しいです!」と声を弾ませていました。たくさん動くことに充実感を覚える、そこに快感を覚えるという感覚は独特だな、と思うわけです。

しんどい、きついんです。でも、動くって好きなんですよね。この前の讃岐戦(5月19日 第9節/1-1の引き分け)の時もかなり激しく動いていたので、苦しいし、しんどいけど、ハイになっている自分がいるんですよ。なんでですかね?

―動くのが好きな川上選手ですが、今季のここまでの試合を見ていると、動きの質に変化があるように思えます。

去年の最初、中盤でプレーしていた時は、ただがむしゃらに動いていたと思います。今年も最初は同じような感じだったとは思うのですが、徐々に考えて動くようになりました。

―考えて動く、とは?

基本的にはボールホルダーや、ボールサイドに動くのですが、例えば状況によっては自分が動かないほうがいいこともあるし、あとは、行くにしてもより良いタイミングを計るようにもなりました。たまに、周りのことも気にせず自分だけがボールに行っている時もあって、その時は「ヤバイ」とは思うのですが、今はすぐに戻れるコンディションにあるので、「それはそれで良いや」と思う時もあるんですよね。

―相手からすれば、川上選手のようにボールに対して敏感に動くと、「あの選手はすぐに食いつくから、それを逆手に取ってやろう」とも考えることもあるはずです。

そうなんです。それはコウケンさん(加藤弘堅選手)からも指摘されているところで、練習の中で行うミニゲームで相手にコウケンさんがいると、あの人は相手の出方をよく見てプレーできるので、僕の“食いつく"動きをうまく利用するんです。で、「ボールホルダーがフリーで、余裕がある状況の時に寄せていっても簡単に外されるし、外すことで楽に次の展開に持っていかれるよ」と。そういう指摘を受けてきたので、今は、フリーの相手選手に行く時は慎重に、というのを心掛けています。時には行かずに、あえてやらせる、という選択肢も持てるようになりました。

―それは自分の動きに制限を掛けることになるので、“動くの大好き人間"である川上選手にとってはフラストレーションとなるのでは?

いや、そこまでは(笑)。ただ、そういうことを意識し始めた最初のころは多少あったんです。考えて動くようにすると、最初の一歩がどうしても遅れがちになる。で、遅れたことで相手を逃がしてしまう。それが気持ち的にしんどかったのは事実です。

―今はそういう遅れがなくなった、と?

そうですね、練習から意識して取り組むことで、考えるスピードが上がったのでしょうか、考えて結論を出して動くまでの過程がスムーズになったように思います。

―今、井上翔太選手もボランチでの起用になっていますし、ポジション争いが激しくなっています。ライバルに負けない川上選手の武器とは?

ボールを奪う力。前に出て行って、また後ろに戻れる力。行って戻る、を両方とも100のパワーでできるところが僕の力かな、と思います。

―「行って戻る」の「行って」の部分の距離が最近は伸びていませんか?

攻撃の部分でより高い位置にまで出て行く、ということですよね?それは今季最初から意識してはいたんですけど、実際にできるようになったのは讃岐戦あたりから。あの讃岐戦のゴールもまさにそういう意識があったから生まれたゴールだと思います。

―意識し始めて実際にできるようになるまで時間がかかったのはなぜでしょうか。讃岐戦がそのタイミングとなったのはなぜでしょうか?

讃岐戦の前あたりまでに、自分が守備でやるべきことの整理がある程度できるようになった。でも、「攻撃面での選択、プレーが慎重過ぎる、アンパイだ」と小林伸二監督から言われていたんです。だから、そういうプレーを増やしていけたらなと自分でも思い始めていて、それに実際にチャレンジしよう、できる、と思ったのが讃岐戦だった。試合展開とか、チームが優勢に進める試合内容だとか、そういうのがうまく重なった時に自分が高い位置にまで行けた。それがあのゴールシーンだったのじゃないかな、と。

―天皇杯1回戦の徳山大戦でもペナルティーエリア内に入っていくシーンがありました。

そうですね、例えば(福森健太選手の)1点目の時は、左サイドの深い所にまで出て行って起点をつくったのですが、ああやって攻撃的に出て行く、というシーンは今後も増やして、得点にも絡めるようになりたいと考えています。そうすれば選手としての幅が広がるかな、と。でも、あくまでも失点をなくすために守備のところでバランスを取るというのを基本としながら、ですね。

―相手ボールを奪う秘訣って何ですか?

僕は体の使い方がうまいほうではないし、読みが鋭いかって言われると、それも取れるか抜かれるかの2分の1の確率でいっているような気はしますし…、う~ん、でも、相手のボールの動かし方や、体の動かし方に対するリアクションは人より早いような気もします、もちろん、自分で意識するようにもしている部分でもあるんですけどね。

―鋭いリアクションが可能だというのは、コンディションが良い、ということでもあるのでしょうか?

個人的には開幕からずっと良いんです!

―コンディションが良い理由は?

単純に練習量が多いし、たぶん、一人ひとりが試合で走っている距離や強度は去年よりも上のはずなのですが、それでもみんな「練習よりも試合の方が楽だ」と言っています。

―それだけ今年の練習はキツイと?

そうです(笑)。オフ明けと2日目の練習が特にきついですねぇ~。週で一番きついのが今日やっていた4対4の練習ですね。

―試合での走行距離は各自が把握しているのでしょうか?

はい。ロッカールームに張り出されますから。僕は大体1試合で11キロ前後。讃岐戦が今季の中で一番走っていて11.7キロでした。

―それはチーム内で最長?

いいえ、ウチはサイドバックが一番です。新井(博人)は12キロを越えています。

―去年はキャプテン、今年は副キャプテンを務めています。去年の経験はどう生かされているのでしょうか、そしてそのことでどんな変化が生まれたのでしょうか?

今年に入って何十回もされた質問です(笑)。自分の中ではそこはあまり変わっていないのかな、と。ただ、今年は勝てているので肩の荷が下りている状態ではあるんです。おそらくですが、今年は勝てているから、皆さん、僕にその質問をしてくるんじゃないですか?

―そういう意味では勝利の素晴らしさを今年は特に感じられているのでは?

そうですね、勝って何が変わるかっていうと、メンタルだと思うんです。それを今年は強く実感しています。去年は先制を許すと正直チームの中に「あー、ダメだ」「またか」という雰囲気が流れていたんですが、今年は「まだ大丈夫」という感じなんです。

―今季ここまでチームが好調な理由は何だと思いますか?

まず、走れていることでしょう。後半になってもそこは落ちないし、だからこそ、先制されても焦らずに試合を運べる。「後半勝負だ」と思えるんです。あとは、ボールを奪う位置が高いことが攻守に良い影響をもたらしているように感じます。去年は押し込まれたら低い位置で対応することがほとんどで2トップが孤立する、という状況でしたが、今年は後半の終盤に入っても前からボールを追えて、そこで奪うことができて、良いカウンターにつながっている。前から行くこと自体は楽ではないんだけれども、そこで奪えたら心が楽になり、前向きなプレーができるんですよね。低い位置できつい思いをしてボールを奪っても、なかなか良い攻撃ができない。そのあたりの変化も大きいように感じます。

―例えば、第3節のガンバ大阪U-23戦は、相手の技術の高さもあり、前に出て行ってもボールが奪えない、という時間が長かったように思います。

そうですね、彼らは本当にうまかったから、なかなかボールを奪えなかったんですけど、ああいう時は、しっかり後ろでブロックをつくって粘り強く守る。それがきちんと意思統一ができた試合だったと思いますし、ああいうふうに粘り強い守備と、前から行く積極的な守備の両方を使い分けられるのも、好調と言われる要因かもしれませんね。

―ガンバ戦はかなりボールを回されました。ああいう試合展開になると、よく動く川上選手なんかは特にイライラしたりするのでは?

しません!一人でもイライラしたらダメ。そこから崩れていきますから。

―見た目のイメージで失礼なのですが、当初は川上選手のことを“武闘派"だと思っていました。ボールホルダーに対する守備も激しかったですしね。

これ、誰も気づいてないと思いますが、僕、プロになって今年で3年目、まだ一度もイエローカード(警告)をもらっていないんです。

―ウソでしょ!あれだけ激しく行っているのに!

まだ警告ゼロなんです!でも、「逆に(激しく)行けてないんじゃね?」と周りから言われることもあります。でも、行っているんですけど、寸前で止まるようにはしていますし、一か八かで足を出して相手をひっかけて倒す、ということもそんなにはないんですよ。でも、この3年間のうちで、もし自分がイエローカード覚悟で止めに行っていたら防ぐことができた失点も、実はあるような気がしてはいるんです。そこをどう捉えるか……。

―意外に冷静、そしてジェントルマン!

でも、一か八かではなく、確信をもって足を出すことができるようになれば、ファウルの数は増えるかもしれませんが、ボールを奪える回数も増えるような気がしているんです。

―センターバックとボランチでプレーして3年、警告がないのは勲章ととらえていいでしょう。レフェリーとのコミュニケーションがうまいとか?

そこは意識したことはありません。でも、「あっ、これはイエローだな」と自分では思っていてもカードが出ない、ということは何回かありました。

―激しいけど正当、あるいはファウルを犯したとしても潔いものだとか、そういうのってカードが出る、出ないに関係するのかも?もしかして、『正々堂々』って言葉が好きなのでは?

好きですね。

―そのあたりは厳しく教育された影響でしょうか?

父は厳しかったですね。小学校のころプレーしていたチームの監督が父だったんですけど、当時は結構自分の思い通りに行かないとイライラして相手を蹴ったりすることがあって、そういう時はかなり厳しくしかられました。そういうことを繰り返しながら、冷静にプレーするとか、クリーンにファイトするとか、そういうのを意識し、そして無意識にそれができるようになった気がします。

―小学校の頃は“荒くれもの"だったんですね。でも、根底にあるのは負けず嫌いな性格とかじゃないでしょうか?

負けるのは昔から、そして今でも大嫌い。時々、ソウタ(佐藤颯汰選手)の部屋に行って彼のゲームで遊ばせてもらうんですが、そこでも絶対に負けたくない。

―そういえば、プライベートの川上選手をほとんど知らないんです。去年はキャプテンで、チームとしての苦しい状況が続いたので、そういう話ができなくて。なので、突然ですが、オフって何をしてる?趣味は?

オフ?何もしません。寝る。時々、銭湯に行く。門司にある、楽の湯に。たまに、寮にいるソウタとゲームをやる、くらいですかね。最近チームの中でゴルフが流行っているけど、あまり興味はないし、本当に無趣味なんですよね。

―独りで過ごすことが多いんですね。

それが別に寂しくもない。あっ、掃除は好きです。しかも、排水溝とかまで磨いちゃう、徹底した掃除ってヤツですね。

―少しずつ出てきました。

あっ、カラオケ!父と行くようになって…、意外に心地よいですね。よく歌うのは、玉置浩二さん、T-BOLANさん、中西圭三さん、とか。僕の時代の方々ではないんですけど、一緒に行く父親の影響でそうなっちゃいました。

―何となくですが、素顔が見えたような気がします。いずれにしても、今季最後にはさらに変化した『ボランチ・川上』を見られるような気がします。お話にも出ましたが、もっと得点に絡んでほしいですね。

勝つことが一番大事。その上で、得点にも絡みたいとも思っています。得点といっても、僕の場合は去年もそうですし、この前の讃岐戦も、泥臭い感じのものになるとは思いますけどね!

文・島田徹 写真・筒井剛史

(次回シマダノメ『深掘りインタビュー』の第9回目6月下旬ごろにアップ予定。登場する人物は? お楽しみに!)

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