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シマダノメ Season2
第10回 深掘りインタビュー
小林伸二 監督(前編)

シマダノメ Season2 第10回 深掘りインタビュー 小林伸二 監督(前編)

『シマダノメ 深掘りインタビュー Season2』の第10回は小林伸二監督の登場です。14年に並ぶクラブ最高順位タイとなる5位で終えた2020年シーズンについて深掘り、また指揮続投が決まった2021シーズンについては浅掘りしました。1時間15分のロングインタビューとなりましたので、今回の前編と来年公開の後編に分けてお届けします。(取材日/12月24日)。

―2020シーズン、お疲れ様でした。まず、還暦を迎えられた小林監督のこの1年での肉体的、精神的疲労度はどのようなものだったのかな、と。

肉体的にはキツかったですね。精神的にはチームが勝っているので、試合が次々に来てもリカバリーは早かった。日程の過密さから言えば、切り替えが本当に難しいシーズンだったと思います。リカバリーとリフレッシュをして次のゲームに向かう時間が本当に短かったのでね。幸いにもチームがうまく波に乗ったのでリフレッシュできた反面、時間がないから当然省いていくものはあるのですが、次のゲームに向けた準備は省略できない。例えば、相手の分析と対策は不可欠で、そのために試合映像を見て、ミーティングで選手に伝えるために映像の編集も必要というところでいくと、どうしても時間がかかり、体をリフレッシュさせるための休養時間は十分に取ることができなかった、だから肉体的にはキツかったですね。

―最終的に5位という成績で終えました。この結果をシーズン前に予想していましたか?

10位以内にどうにか滑り込みたい、という考えでシーズンに入りましたから、予想外といえばそう言えなくもない。開幕戦の福岡とのゲームは0-1で負けましたが、そんなに悪くない戦いをして、「これからどうやって点を取って行こうかな」というところで思案はしなくちゃいけなかったのですが、シーズンの入りとしてはそんなに悪くなかった。でも、新型コロナウイルスの影響でリーグが中断、長崎との再開戦を前に新型コロナウイルス陽性の疑いが出て練習を休まなくてはいけない事態になったこと、その前に鹿児島に練習試合に行ってそこであまり手ごたえがなかったことを含めて「準備が足りていないな」と感じながらのリーグ再開となりました。

―準備不足を感じながらの第2節の長崎戦は1−2で落とすことになりました。

長崎戦の後から第3節の琉球戦までの数日間に私はかなりの精神的ストレスを抱えました。琉球戦の後に、第4節・岡山戦、第5節・京都戦、第6節の磐田戦と、難しくなるだろう対戦が続いていたので、もし琉球戦を落として連敗してしまうとマズい展開になるなと思っていたので。

―つまり、長崎戦の後の琉球戦で4-0の快勝を収めたことはチームにとって大きかったと?

本当に大きな勝利でした。勝つだけではなく、攻撃が機能して4点を取れたことが大きくて。それからリョウ(佐藤亮選手)とレレ(ディサロ燦シルヴァーノ選手)という途中出場の選手がゴールを決めたことで、その後のチームの戦い方と私のカードの切り方の方向性も決まったんですよね。

―方向性というのは?

5枚の交代カードを切ることが可能になったレギュレーション変更の中で、チームとしては前半から飛ばして積極的な試合運びをする、疲れたら迷うことなく選手を入れ替える、そうすることでハイプレッシャーを私たちの武器にできるな、という方向性が定まったのです。

―岡山に2-0、京都に0-0で引き分けた後の第6節・磐田戦は0-2で敗れました。

その磐田戦もシーズンの中で大事な意味を持つ一戦になりました。磐田戦の後に選手に言いました。「チャンスをつくることはできた。しかも、個人ではなくチームとしてその形にまで持っていけているので、あとは誰かが冷静に決めることができればいい。だから去年より一つステージが上のJ2という舞台で戦うけれど、自分たちがやろうとしていること、やっていることに自信を持っていいんだよ」と。あの磐田戦の後から快進撃が始まるんですよね。

―そうです。第7節の山口戦から第15節の千葉戦まで、クラブ新記録となる9連勝。9連勝の要因は何度も聞かれたかとは思いますが。

正直「こんなんで勝っちゃうの?」という感覚になることもありましたが、でも、その後、振り返って感じたのは、1点を取った後、あるいは1点を取られた後の精神的な面での切り替えを練習の段階から言い続けて、選手もそれを当たり前のようにピッチで表現できるようになったことが大きかったのではないか、ということです。

―練習でどんな言葉を選手にかけていたのでしょうか。

例えば、どんな形のトレーニングであってもキーパーがいてゴールがあってという練習では「1点を取ったら次のゴールを取りに行こう!」「点を取られたらすぐにリカバリーしよう!」という声かけを常にしていました。実は去年、監督を引き受ける前に点を取られたら足が止まる、1点を取ったらそこで満足してしまう傾向にある、と聞いていたので、そういうコーチングは絶対に入れなきゃダメだなと自分の頭の中にあった。だから去年も言いましたが、今年もそれは続けて、そうすることで選手たちは、それが自分たちの取るべき姿勢だ、と自然に思えるようになり、今年はよりその意識が高まり、9連勝のときにそれが“普段のまま“という形で出て、うまく働いたんだろうな、と。それが先制されても逆転する、あるいは追い付かれても突き放す、そういうゲームにつながったと思います。

―5位という成績でシーズンを終えた選手たちにはどんな評価を与えますか?

よくやった、と思います。でも、シーズン中にその言葉を選手に対して言ったらおしまいです。だからめっちゃ難しい。負けても「まあ、そういうこともあるんだよ」と私の頭の中で思っていても選手には「次の試合で取り返すぞ」と言う。2019年は前年に最下位となったチームですからかなり厳しい言葉を投げました。でも2020年は、レベルが異なるJ2リーグを戦うんですからね、そんなに事は簡単には運ばないし、若い選手が多いので、今年は失敗も良い経験になるはずだ、とのスタンスで私はいました。でも口にする言葉は選手の気が緩まないものを選ぶ、という形で。だって、首位に立った経験をしたことがない、そこでどんなプレッシャーを受けるかも知らない。そういう選手たちに対して、首位から落ちたからって「何、やってんだよ!」とは言えませんよ。だって初めてなんだから。初めての経験や失敗を今後に生かせば、それでいいんですよ。

―確か4連勝、5連勝したあたりで小林監督が選手に「強いチームというのは10連勝くらいするんだよ」と言ったと聞きました。

いや、もう3連勝したくらいで選手が浮かれていた。「オレたち、3連勝もできたぜ!」という感じでね(笑)。そういう雰囲気になるってことはこっちからしたら「もうアップアップじゃん」と思えたので「もっとチャレンジしていこうぜ。キツくなってから頑張るんじゃなくて、調子が良いときにもっと頑張るんだよ」って選手には言ったんです。あとは、相手に力みを与えることですね。例えば簡単に失点をした後の相手フォワードというのは力が抜けて楽にプレーできるもの。「この程度の守備陣ならオレも点が取れるな」とね。でも最後の最後まで踏ん張って対応しようとする姿勢を見せれば、たとえそれで失点したとしても相手フォワードは「点を取るのは簡単じゃない」と思うから、やはりシュート場面で力んで外す、そういうことになる。だから、失敗はしても気が緩んだプレーだけはさせないようにこちらは注意していました。

―シーズン途中で、「これはJ1昇格があるかもしれない」と思う瞬間はありましたか?

いいえ。厳しいなと思っていました。

―それは個々の選手の能力、チーム全体としての力量からの客観的判断というところですか?

そうです。大体が首位に立つと引きずり下ろされるものです。首位から一度落ちてそこからもう一度首位に返り咲くには時間もそうですが、相当なエネルギーが必要となり簡単なことではない。私自身もそういう経験をしてきました。2002年の大分の時だけが比較的安定して首位あたりをキープできたくらいで、2008年の山形のときも6月以降から上り調子になって2位で昇格を果たしましたし、2013年の徳島、2016年の清水もそうですが、J1昇格を決めたときはいずれも後半戦の“まくり”でしたからね。われわれはJ3から上がってきたチームで、ほかのチームからしたらお客さん扱いで、最初は比較的好きなようにやらせてもらえる。そのかわり2巡目はそうはさせないよ、とね。

―首位から落ちた後にもう一度返り咲くためには何が必要だったのでしょうか?

選手とチームに『幅』が必要でした。選手で言えば、相手の強い圧力をいなせるだけの技術的な幅、それから周囲の反応を気にせずに自分のプレーに集中できる精神的な幅。チームとしても、研究を深めてくる相手に柔軟に対応できる幅の広い戦い方があれば、もう一度ジャンプすることができたように思います。でも、そういうのって、どうしても経験が必要になるのです。

―対戦相手が自分たちのことを研究してきたなと感じたゲームは?

やはり、第21節の水戸戦ですね。9連勝中にも相手がウチを警戒し、研究してきたことを感じるゲームはありましたが、多くはわれわれのハイプレスに対してはロングボールで逃げるとか、ポゼッションに対しては低い位置で構える、といった対策でした。しかしそれらはそんなに怖くはなかった。引いてくるのであれば、ウチはボールを持てる、ということですから。ロングボールに対しては中盤でのセカンドボールへの意識を高めれば、それほど怖くない。けれど、水戸はわれわれに対してハイプレスをかけてきた。圧力をかけられてもそれを回避する準備をしていたつもりだけれども、水戸戦はそれができなくて0-3で負けてしまった。でも、その水戸戦があったからシーズン終盤は相手に圧力を掛けられてもボールを失うことなくボールを前に運べるようになったし、それで得点も奪えるようになったんですよね。

文・島田徹 写真・筒井剛史

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厚切り牛肉のビーフシチュー

小林伸二監督の一口感想

「非常に濃厚で美味です。お肉も分厚く、食べ応え十分ですよ!」

小林伸二監督の一口感想

(後編へ続く。後編は1月上旬にアップ予定、お楽しみに!)

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