SHIMADANOMEシマダノメ

シマダノメ
第4回 深掘りインタビュー
ディサロ燦シルヴァーノ選手

シマダノメ 第4回 深堀インタビュー ディサロ燦シルヴァーノ選手

『シマダノメ 深掘りインタビュー』の第4回目はミクスタでのFC東京U-23で今季チームのファーストゴールを挙げたディサロ 燦シルヴァーノ選手の登場です。勝利を挙げた開幕戦翌日にディサロ選手を直撃、独自のストライカー論をメインに深掘りしました。(取材日=2019年3月11日)

―開幕戦勝利、そして自身プロ初ゴール、おめでとうございます。昨日は興奮してなかなか寝付けなかったのでは?

いいえ、グッスリです(笑)。でも、いつもとは違うことは確かでした。例えば、試合の後はあまり食べない方ですが、昨日はやけにたくさん食べましたし、体の疲労の具合もいつもとは違ったかな、と。ホームでの開幕戦、自分にとってはプロ初出場のゲームということで自分では分かりませんでしたが緊張していたのかもしれないですし、雨でピッチがスリッピーな状態だったから筋肉への負担のかかり方が違うということも関係しているのか、とにかくいつもとは違う感じはありました。それで、グッスリだったのかな?

―勝利とゴールを祝福する連絡が多かったのでは?

そうですね、法政大での後輩、先輩、監督、それまでお世話になった方々など、トータルで100人以上から「おめでとう」と。返信が間に合わないくらいたくさんの方から祝福していただきました。本当にありがたいことです。

―当日のミクスタにご家族の方はいらっしゃっていたのですか?

お父さんが来てくれました。家にいたお母さんと弟はダゾーンで観てくれたようです。

―お父さんはイタリアの方なんですよね? やはりサッカーには詳しい?

そうですね。自分でも高校生くらいまでプレーしていたようですし、何と言ってもかなりのインテリスタ(※イタリアのセリエAに属する名門クラブ『インテル・ミラノ』を愛するファン、サポーターのこと)なので、サッカーには詳しいですよ。だからいろいろなアドバイスをもらってきましたしね。その血を僕も弟も引き継いでいてインテリスタ。家族でインテルのゲームを見て育ってきた感じです。いまもインテルの試合は欠かさず見ています。

―いつごろからインテルの試合を見るように?

小学校に上がる前くらいからですね。

―イタリアに住んでいたのはいつ頃のことですか?

小学6年生の終わりから中学2年生のはじめまでの1年ちょっとの間です。

―当時は地元のチームでプレーしていた?日本人ということで浮きませんでしたか?

イタリアだけじゃなく他の外国もそうだと思うのですが、よそ者に対しては最初結構冷たく、あしらわれるんですけど、結果を出すと素直に存在を認めてくれる。実際、向こうでチームに入った当初はパスがほとんど来ない。「なんだ、コイツら!」と思ったんで、僕も一旦ボールを持ったら誰にもパスを出さずに、全部自分でドリブルして、点を取ったら、今度はバンバン、パスが来るようになりましたよ。

―そのころのインテルでフォワードを務めていた選手は?

ディエゴ・ミリト(元アルゼンチン代表)ですね。

―そのあたりが、いまのディサロ選手のプレーを見ていてイタリア人フォワードの匂いを感じる理由なのか…。今のサッカーにおいて、フォワードにはたくさんの役割が求められています。守備はもちろんですが、左右のスペースに流れて前線での起点をつくるとか、フリーランでスペースを空けるとか、ドリブル突破からのチャンスメークをするとか。でも、ディサロ選手のプレーにはシンプルさを感じるんです。

さっき話に出たミリトや、クリスチャン・ビエリ(元イタリア代表)というかつての選手や、いまのインテルでプレーしているマウロ・イカルディ(アルゼンチン代表)なんかのプレーを見ても、プレーが“ゴチャゴチャしていない"んですよね。いま話に出したのはたまたま、インテルの、しかもビエリ以外はアルゼンチン出身選手ですが、他のチームのイタリア人ストライカーのプレーを見ていてもシンプルにプレーする選手が多い。なぜ、プレーが“ゴチャゴチャしてなくて"シンプルなのか。それは彼らがフォーカスしているのは、点を取ることだからだと思うんです。いくらボール扱いがうまくても点を取らないフォワードなんて怖くない。これはお父さんからよく言われたことでもあるんです。「点を取らないんだったらフォワードとしてプレーする意味ないからね」と。まあ、そこまで強い口調ではありませんが、そういうニュアンスの言葉を常に聞かされてきました。

―なるべく多くのエネルギーをペナルティーボックス内でのプレーにかける。

もちろん、チームの一員として求められる役割は果たさなければなりませんが、ストライカーが100パーセントのエネルギーをかけるのはボックス内であるべきだと僕は思います。

―でも、いろいろな役割を監督やチームメイトから求められると、そちらにもエネルギーを掛けないわけには行かないのでは?

求められることは全部やりたいし、できるようになりたい。そんなふうに思っていた時期もあります。高校、大学に入ってからもしばらくはそういう考えで、全部をうまくこなそうと努力していました。でも、いろいろなところでエネルギーを使っている分、いざゴール前に行ったときにエネルギーが残っていないというか。点を取るって、パワーという意味だけではなくて、駆け引きや、反射、集中力といういろいろな部分で相手に勝るためにかなりのエネルギーが必要になる。だから、できるだけ相手ゴール前、ボックス内でのプレーのためにエネルギーは残しておきたい。そういう考えに落ち着いたのが大学の4年生、22歳になった頃ですね。うまい選手は中盤にいるので、僕は入ってきたボールを正確に足元に収めて、そのうまい選手や前を向いている良い状態の選手に簡単にボールを預けて、僕はボックスに入って行く。それが、僕にとっては一番点が取れるプレースタイルなんだと理解するようになったんですよ。

―ボックス内ではどんなところにエネルギーを使うのでしょうか?

マークに来る相手との距離感をどう調整するか、そのための駆け引き、シュートを打つためのスペースをどのようにしてつくって、そこにどのタイミングで、どうやって入って行くとか。あとは味方の距離、例えば昨日の開幕戦だったらイケさん(池元友樹選手)との距離感とか。そういうところを意識して調整するところにエネルギーをかけたいんです。昨日のゴールで言うと、あれはイケさんからのボールが素晴らしかったことが大きいのですが、その良いボールが上がってくる前に僕が気を使ってたのはポジションどりです。最初、センターバックの横にいたのですが、相手のサイドバックは空中戦があまり得意ではないというスカウティングもあったので、そちらに近づいて行って、そして向こうの視線が僕から外れた時を狙ってスピードを上げて中に入って行き、あとは良いタイミングで飛んで頭に当てるだけでした。

―イタリア人フォワードは確かにボックス内でのエネルギーの掛け方にこだわりがあるようです。例えばかつてのACミランでゴールを量産したフィリッポ・インザーギ(元イタリア代表FW)とか。

インザーギはオフサイドぎりぎりを狙って裏を取る駆け引きがすごかった。まぁ、ミランの選手なので、インテリスタの僕としては、彼個人のプレーにフォーカスして見ていたわけではありませんが(笑)、一般的に言ってイタリア人ってあまり器用じゃないので、多くのことをこなすのではなく、その中から絞り込んだ部分で自分を表現するとか、そこに“命をかける"とか、そういう感じなんですよ。ずっとイタリアのサッカーを見てきた僕なので、そういうところにも影響を受けているのかもしれませんね。

―ボックス内でパワーを使うとなったら、そのほかのエリアでは、言葉は悪いのですが“フラフラとしている"状態になります。そのことを特に気にすることもなくなったということですか?

確かに気にする時もあって、そういう時は後ろに引いてボールを触りに行くこともあるんです。でも、そういう時に自分に問いかけるんですよ。「お前の仕事は何だ?どこでエネルギーを使うべきなんだ?」って。僕が下がってボールを受けるよりも、うまいイケさんが下がってボールを受けた方がチームのためになる、というのもありますしね。

―池元選手の話が出ましたが、チーム内のライバルのことはよく観察しますか?

当然です。チームメイトですけど、ポジションを争うライバルですから! イケさんは、経験値が高くて、それは僕らが持っている若さというパワーだけで埋められるものじゃない特別な武器。それと技術が高くタメをつくれるので、もう一人のフォワードを生かすのがとてもうまい。町野(修斗選手)は高さもあってシュートもうまい。本当に良い選手だなと思います。ソウタ(佐藤颯汰選手)は運動量もあるし、一瞬で抜け出すスピードがすごい。1対1で向き合った相手が反応する前に抜け出している、そんな特別な速さを持っている選手。それぞれに特徴が違うフォワードが揃っているので、見ている人はきっと面白いんじゃないかな、と思います。

―昨年末のインカレ(全日本大学選手権)の決勝では駒沢大を破って優勝を果たしました。その試合で決勝ゴールを決めて法政大の42年ぶりの優勝に貢献して大会のMVPに選ばれたわけですが、その経験はやはり大きいのでしょうか?

そうですね。あの大会での経験は本当にプラスになりました。特に誰よりも早くゴール前に入って行き、ボールに触る、という僕が理想とする形でゴールを挙げたことはストライカーとしての大きな自信になりましたし、そこで得た自信があったから、ギラヴァンツ北九州に入っての始動から昨日の開幕まで、たくさんのライバルがいる中で何の焦りもなく、とても落ち着いてトレーニングに臨むことができたと思っています。

―法政大からJリーガーになった元チームメイトのことは刺激になりますか?

キーパーの吉田(舜)はザスパクサツ群馬に入って、昨日の開幕戦で先発しましたし、J2のFC岐阜に入った長倉(颯)は左サイドバックとして第1節と2節で先発しました。もう一人、黒﨑(隼人)がJ2の栃木SCに入っているのですが、ケガをして少し出遅れましたが、この前、連絡を取ったらかなり良くなったみたいで、きっとこれから活躍しますよ。同期みんなが試合に絡める存在であるので本当に良い刺激になっています。あとは、まだ在学中の後輩にも良い選手が揃っているので、先にJリーグでプレーすることになった僕らが活躍することで法政大と後輩に注目が行くようにしたいですね。

―大学の時の公式戦では何ゴールを挙げたのか覚えていますか?

4年間のリーグ戦で言うと70数試合に出て、10ゴールくらいですかね。自分でも少ないとは思いますが、それこそ先に話したように、ゴールだけに集中するのではなく、すべてをこなそうとしていた時期が長かったですからね。ただ、一発勝負のトーナメントに限って言うと、得点率が高かったと思います。2試合に1点以上は取ったんじゃないかな。勝負強さはあるほうだと思います。

―勝負強さって何でしょうか?

ここぞ、という時を感じる能力?う~ン、自分でもなかなか分かりにくいですが、大事な場面でいかに集中できるか、ということじゃないでしょうか。

―プロ1年目で9番を背負うことについて。

期待されていることは感じますし、とてもうれしく思います。だけど、レアル・マドリードとクロアチアで10番をつけるルカ・モドリッチが「背番号がプレーするわけじゃない」と言っていましたが、プレーするのは自分なので。背番号はあまり関係ないでしょう?

―ここまで話を聞いてくると、ストライカーとしての在り方もそうですが、しっかりとした『自分』を持っているな、と感じます。

それは両親の教育が大きいでしょうね。母は日本人ですが、そういう人間としてあるべき姿について教えてくれました。

―反抗期はありましたか?

ないんですよ。小さいころから「このお父さんとお母さんの言うように行動していたらうまく行く、成功する」と常に感じてきたので、反抗しようとも思わなかった。あと、自分のことをちゃんと認めてくれた上で正してくれる両親だったので、反抗する必要もなかったんだと思います。

―最後になって聞くのもあれですが、ニックネームの「レレ」について。

「ディサロ燦 シルヴァーノ」の「シルヴァーノ」の部分がイタリアの名前なのですが、例えば試合中とか家の中でも急いで呼ぶ時には難しい。そうなった時に、両親が短くて呼びやすいミドルネームのようなものがあったほうが良いと考えた。イタリアでは「サムエレ」とか「ダニエレ」など、最後に「レ」がつく名前の子どもは「レレ」と愛称をつけることが多くて、両親が「それいいな」となったらしいんです。僕の名前の最後に「レ」がつくわけではないけど「レレ」が良い、と。それから僕は「レレ」に。物心ついた時からそう呼ばれていたので、僕自身が「なぜ、レレなんだろう?」とは思いませんでした。

―「レレ」は「LELE」という表記?

そうです。

―両手でつくる「レレ・ポーズ」(ページトップのタイトル写真)はいつ考えたのですか?

高校の時(三菱養和ユース)のチームメイトに池田樹雷人(いけだ・じゅらと)という仲良しがいて、彼はいま長野パルセイロでプレーしていますが、彼の下の名前が「J」で始まるので、左の手の平を正面に向けた状態で親指を広げると、前から見ると「J」に見えて、右の手の平を同しようにすると「L」に見えるので、それを「二人のポーズにしようぜ」ってなったのが始まりで。そこから少し改良して両手の人差し指と親指でつくる「L」を二つ並べて「LELE」を表現したんです。

―昨日のゴール後に新井博人選手と手をバシバシと合わせるパフォーマンスを見せました。

今季加入の新人の中では一番長く一緒にいるのが新井で「二人で何かしたいね」という話をしていて、海外の選手のゴールパフォーマンスを参考に僕がオリジナルでつくりました。最初、新井は「ダサい」とバカにしてたんですが、何とか説得して、朝の挨拶として始めて、いまはご覧の通りのレベルにまで達しました(笑)

―その新井選手との合わせ技やレレ・ポーズという、ゴール後のパフォーマンスが今季何回見られるのでしょうか?とりあえず10(ゴール)を期待していいですかね?

いいえ、20を目指します!

文・島田徹 写真・筒井剛史

(次回シマダノメ『深掘りインタビュー』の第5回目は4月上旬にアップ予定。登場する人物は? お楽しみに!)

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