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シマダノメ Season2
第9回 深掘りインタビュー
髙橋大悟 選手

シマダノメ Season2 第9回 深掘りインタビュー 髙橋大悟 選手

『シマダノメ 深掘りインタビュー Season2』の第9回は今季最後のレギュラー回としての選手インタビューとなります。登場するのは背番号「10」を背負ってピッチを縦横無尽に駆けた髙橋大悟選手の登場です。今シーズン、髙橋大選手が「初めて経験したこと」ことをテーマに、それぞれについて深掘り、2020シーズンのレビューにもなるようなインタビューになっています。もちろん、あのかわいい後輩とのことも!(取材日/12月11日)。

―今回のインタビューの大テーマを「初体験」とさせていただきます。今季、髙橋大選手にはさまざまな初体験があったと思いますので、それについて深掘りさせてください。まずは、今季40試合出場、9得点(第41節時点)という数字を残していますが、ここまでの数字を残したのはプロになって初めてでしょう?

今季は新型コロナウイルス感染の影響でJリーグが過密日程となる中で、ここまで試合に出ることができたのは、自分でもよくやったなぁ、意外に僕ってタフだったんだな、というのが率直な感想です。

―過密日程もそうですし、開幕からチームの軸として働くのは初めてだったでしょうから、自分の中でも、どこまでできるか分からない状態でシーズンに入っていった、と?

そうです。どこで落ちて行くんだろうという不安を持っていたのですが、そこまで大きく落ち込むことはありませんでした。毎試合、走力のデータが出ますが、そこまで大きな変化はありませんでした。

―平均でいうと、1試合どれくらいの距離を走りましたか?

僕の場合で10キロ後半から11キロにかけて。多い時は12キロいくこともありました。

―それはチームの中では上位に入る数値ですか?

ハイ! 1、2番目に入る数値です。僕、意外に走っていますよ!ソウヤ君(藤原奏哉選手)にはいつも勝てませんけど。でも、若いチームの中でも、僕は若い部類に入る21歳なんでね、それくらい走らないと。

―J2リーグを戦うのも今季が初めてでしたね。

去年戦ったJ3リーグと比べると、ネームがある選手が多いですし、試合数が多い中で、激しく、レベルが高い、ということは感じながらプレーしていました。

―今季1年、充実していましたか?

J1昇格争いにも絡めましたし、昇格という目標達成は叶いませんでしたが、やはり上位争いをすることにかなりの充実感を覚えました。やっぱり、下の争いより、上での争いの方がいいですから。でも、満足はしていません。

―満足していない部分というのは?

結果もそうですが、負けた試合を自分の力でひっくり返すことができなかった。そのチャンスがありながら、そういうふうに持って行けなかったゲームがありましたから。そういう試合を経験するたびに、「自分はまだまだだな」と感じていました。

―満足できなかったのは、技術的な物足りなさ、それともメンタル的な不足がかかわりましたか?

トータルです。全部、足りない。さっきは負けた試合のことを言いましたが、勝った試合でも自分に物足りなさを感じたことはあります。例えば(第33節の)愛媛戦で僕は2点取りましたが、もっと取れたはずですから。

―首位争いを経験して感じたことは?

首位に立っていたころは連勝が続いていましたが、1試合1試合を全力で、目の前の相手を倒すことに集中していたので、順位のことは気にしていない、というところが正直なところです。

―小林監督が「首位に立って戦うという経験をした選手が少ないはずだから、一度、首位に立てばいろいろなことが分かるはずだ」とおっしゃっていました。何か分かったことは?

自分もそうだし、ほかのチームメイトも同じだと思うのですが、びっくりはしました。正直、首位に立てるなんて思っていませんでしたから。その驚きの中で感じたことは追われる者の難しさ。一つの敗戦で自分たちの立ち位置が変わるのはどの順位でも起こり得ることですが、そのプレッシャーというのは、首位とほかの順位では全然違うもんだな、と。でも、その緊迫した感じを楽しいと感じる自分もいました。

―しんどい、ではなく?

ありがたいことですから! 良い経験だな、と。 自信もつきましたしね。自分たちがやっていること、やろうとしていることにしっかり向き合っていけば、十分にやれるんだと思えていましたからね。

―クラブ新記録となる9連勝について。髙橋大選手自身、過去に経験は?

おそらくはない……。プロになってからは間違いなく初めての経験です。

―9連勝の間、何を思っていましたか?

あっ、勝っちゃうな、って。負ける気がしないのではなく、勝っちゃってるな、という感じでした。

―それは勝ち続けている理由が分からない、という感覚ですか?

そうなんですよね。要因が何かは分からない、とにかく勝っちゃうな、と(笑)。

―逆に9戦未勝利の時期もありましたが、その時はどういうふうに感じていましたか?

難しいな、と。でも僕の中では9連勝している時よりも、9戦未勝利の時間の方が大事だなと思いました。

―なぜですか?

自分と向き合えたからです。チームが勝っている時、自分の調子が良くてゴールを決めることができている時って、あまり物事を深く考えていませんでした。でもチームの調子が悪い時には、自分が勝たせられるようなプレーをしなくちゃいけない、そのためにどうすればいいのか、というふうにいろいろと考えを巡らせました。それを考えることで自分の中で新しいエネルギーが生まれてくるんですけど、それでも勝たせることができないという感じだったので、正直、キツかった。でも、9連勝している時よりも、そっちのほうが自分のためにはなっているのかな、成長するためには良い時間じゃないのかな、と思いました。

―9戦未勝利の間は、明確な理由もみつからなかった?

そうですね。だからというわけではないんですけど、「相手が研究してきているから」というところに理由を見つけようとしていたように僕は思います。あのころは、そうですね、「相手が僕のプレーを読んでいるから」という考えでいました。でも、いま振り返れば、相手が読んでくる以上のプレーを僕が見せれば良かったこと。チームとしても同じで、相手を乗り越えていけばいいだけだった。

―そこは反省点だと。

他者に理由を押し付けていたあのころの自分をものすごく反省しています。高校のころに「勝った時はお陰様で、負けた時は自分のせいだ」とよく言われたものですが、まさにそれですね。あの頃は、自分と、自分たちに目を向けることができていなかった。それができなかったから昇格を逃したとも言える。でも、そのことをすごく後悔すると同時に、それに気づくことができた、のは良かったな、とも思います。だから9戦未勝利という僕にとっての初体験は悪いだけではなかったということですね。

―9戦未勝利を抜けた後、一気にまた上向きになるかと思われましたが、そうはいかなかった。

思い通りにいかないもんですね。でも、理由は簡単。自分たちにそれだけの力がなかったということです。

―「ギラヴァンツ北九州のサッカーは面白い」と言う人が多かったのですが。

僕の周りの人たちのほとんどは「面白い」と言ってくれていました。

―やっていてどこが面白かったのでしょうか?

僕の場合はやはり攻撃。アグレッシブですから。

―そういうのが見ている人にも伝わったということでしょうね。

でも、やっている僕らは結構キツかったです(笑)。

―そのキツさを乗り越えて戦うエネルギーはどこから?

勝つこと。特に9連勝ですよね。あそこで自信をつけたこともそうですけど、キツいことをしているから勝てていると感じましたし、それがあったから9戦未勝利の時のキツさも何とかみんなで耐えられたんだと思います。やっぱり、勝つって楽じゃない、キツいことをしなきゃ勝てないということを少しでも分かっていましたからね。でも、キツいけど自分やチームが少しずつステップアップしていることはそれぞれが実感できているから、楽しくもあるんですよ。

―じゃあ、日々の練習も嬉々として?

いや、練習はキツかったっす! でもサッカーは好きなんでね(笑)。

―その髙橋大選手の「好き」という気持ちは、練習だけじゃなくて試合でも良いプレーになりそうでならなかった時に上げる甲高い奇声に表れていると思います。

「アッ~」とか「モウ~」でしょ? あれ、よく怒られるんですけどね。でも、好きなことを職業にできているので、やっぱり楽しいし、楽しまなきゃ、と思っています。

―去年の途中からではありますが「小林伸二」も初体験。どうでしたか?

本当に丁寧で、よく見ているなと感じます。恐らく外から見ているだけじゃ分からないくらい、少しだけ調子が悪い時にちゃんと声を掛けられるんです。「言われるかな? でも言われないだろう」というくらいのミスもちゃんと指摘されます。いろいろ怒られましたね。チームのコンセプトのところ、例えば攻守の切り替えで少しサボっていたら必ず言われましたし、あとは返事が小さい、とか(笑)。

―10番を背負ったのはプロになって初めてですよね?着けてみて感じたことは?

10番は初めてです。そうですね、自分の調子が悪いのが続いた時は10番を重く感じました。そもそも10番って一流の選手がつけるものであって、一流の選手に調子の波があったらダメじゃないですか。だからそのときは10番を背負う重みを感じました。

―10番をつけて良かったと思ったことは?

やっぱり10番ってカッコイイじゃないですか(笑)。そのくらいの感覚です。

―ここまでで「キツかった」「苦しかった」という言葉、それに反する「面白かった」「楽しかった」という言葉の両方が出て来ましたが、今シーズンを振り返って、その二つの割合はどんなものになりますか?

五分五分です。1年間通して考えるとそうなります。楽しいのが「7」という時期やその逆になる時期もあったけれども、トータルで見れば5対5ですね。

―シーズンの終わりを待たずしてオーストラリアのメルボルン・シティFCに移籍した椿直起選手の話を。

アイツのことはもういいですよ。「ダイゴ君、まじ寂しいっす。暇な時に連絡していいですか? どうせ、ダイゴ君も暇でしょ」とか言いながら全然連絡がないし! こっちが電話しても出ないし!

―椿選手にとって最後の試合となった岡山戦後のリモート会見で髙橋大選手をリクエストしたのですが、今までに見たことがないような落ち込みよう、悔しがり方だったので、気になっていたんですけど、その後の椿選手へのサヨナラ・インタビューで理由が分かったんですよね。

あの試合、ナオキが最後の試合になることを知っていたのは選手の中では僕だけだったので、どうしても勝って送り出してあげたかったんです。それともう少し長くピッチでプレーさせてあげたかった(62分で交代)。そのためにも点差を広げたかった。それができなくてホントに申し訳なくて。でもアイツは最初に北九州で会った時から「ダイゴ君、僕は海外でプレーしたいんだよね」と言っていましたから、アイツの夢がかなって僕もうれしかったんです。

―椿選手が移籍の相談をしたら髙橋大選手が、いろいろと情報を取ってくれたと言っていましたが?

清水エスパルスでお世話になった先輩、長谷川悠さんがオーストラリアでプレーしているので(6部相当のリーグに参戦しているウーロンゴン・オリンピックFC所属)、連絡をして情報を教えてもらってナオキに伝えました。話は戻りますが、あの岡山戦ですね、試合後のリモート会見でもナオキのことは言いたかったんですけど、クラブからのリリースがまだだったし、言えなくて、試合に勝てなくて申し訳なくて悔しくて、それで会見で冷たい感じの受け答えになってしまって、本当に申し訳ありませんでした。あとで、ああいうのはホントよくないなと反省しました。

―そんなにかわいがっていたんですね。でも、椿選手が海外でプレーすることを悔しく思う気持ちは?

それはないんですよ。アイツは最初からそれを望んでいたから、そうなって僕もただうれしかった。それに僕には僕のプランがありますからね。

―髙橋大選手のプランとは?

僕は着々と力をためることが大事だと考えていて、25、6歳ころがフイジカル的にもピークになるでしょうし、そこから逆算していきたいな、と。

―椿選手の海外移籍も含めて、周りの選手のことで喜べることがほかにもありましたよね? 同じ鹿児島県出身で小さいころから選抜チームでのプレーで知っていて、ほぼ幼なじみとも言える生駒選手がリーグ終盤になって先発でプレーするようになったこととか。

それもうれしいことでしたね。でも、最近、ジンにはより高い要求をするようになりました。今までもジンにできることはちゃんとしていたから何も言うことはなかったんですけど、よりもう一つ互いにレベルを上げられるように最近はいろいろな意味で言うようにしています。「あのタイミングでパスがほしいんだよ」とか「あそこはもう少しタメでほしい」とか、ですね。

―そういう、仲間を大切にする感覚って、育ってきた環境によるものでしょうか?

どうですかね。仲間の存在って間違いなく自分にとってのパワーになっているので、じゃ自分も仲間にとってそういう存在になりたい、と考えているだけです。周りの人のおかげで自分がある、と思ったら、自分以外の人を大切にしなきゃ、って思うのが普通だと思うんですけど。

―新型コロナウイルスによる様々な影響が出たのも、髙橋大選手だけではないんですけど、初めての経験ですが、過密日程とか、無観客での試合開催とか、どんなふうに捉えていましたか?

過密スケジュールに関しては、僕にしたら良かった、というか。試合のあとにすぐに次の試合が来るということは、良い時にはそのままの勢いでノッていけるし、悪い時は次の試合がすぐに来るから気持ちを切り替えなきゃと割り切ることもできました。ありがたいことに試合にずっと出させてもらったので、悪い時に気持ちをすぐに切り替える必要がある状況でメンタル面はかなりタフになったと思います。

―無観客については?

北九州に移籍する時には清水のサポーターから愛をいただきましたし、北九州でも温かく迎え入れてもらって、どんな状況にあっても後押しをしてくれますし、普段からサポーターの方々の存在は僕ら選手にとって大きいものなんですが、今回無観客試合や自粛期間を経験すると、その存在をより大きく感じるようになりました。

―大変な思いをしてらっしゃる方々がたくさんいて、そういう方々には心からお見舞い申し上げるしかないのですが、でも、とらえようによっては、決して悪い事ばかりではないような気もします。

はい、そうですね。僕としたら自分を見つめ直す時間、ギラヴァンツ北九州を深く知る、北九州という街を知るという意味で良い時間になりました。自粛期間中には積極的にSNSを通じて情報のやりとりを皆さんとする中で、一生懸命にトレーニングして試合で懸命に走るだけではなくて、サッカーのいろいろな面を通して僕らができること、ギラヴァンツ北九州というクラブとしてできることが、まだまだあるんだなと分かりましたし、それによってサッカー選手として、また一人の人間として成長できたんじゃないかなと思います。

―髙橋大選手は清水からの期限付き移籍という形で昨季途中と今季を北九州でプレーしているので、来季はどうなるのか、気になるサポーターの方がたくさんいらっしゃると思います。

まだ北九州でも清水でも、何も話していない状況です。でも、北九州を簡単に踏み台にはできない、という思いはあります。このチーム、このクラブの未来は本当に明るいので、このチームでやりたいとは思いますが、こればかりは僕だけで決まることではないのでいまは何とも言えません。でも、求めてくれれば来季も北九州で、という気持ちが僕の中にあることは確かなことです。

文・島田徹 写真・筒井剛史

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髙橋大悟選手の一口感想

「具の海鮮類がおいしいのはもちろんなんですが、ライスもおいしい!どういう言葉で表現していいのかわからないんですが、食べだしたら止まらなかったですね!」

髙橋大悟選手の一口感想

(『シマダノメ 深掘りインタビュー Season2』の第10回目、2020年最後となるインタビューは小林伸二監督が登場予定。12月末にアップ予定。お楽しみに!)

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