SHIMADANOMEシマダノメ
シマダノメ Season4
第2回 深掘りインタビュー
髙澤優也 選手
『シマダノメ 深掘りインタビュー』Season4の2回目は今季加入組の一人で、10番を背負い、副将も務める髙澤優也選手の登場です。苦しいチーム状況の中、どういう思いでピッチに立っているのか、またストライカーとしてのプレー哲学やこだわりを深掘りしてきました。(取材日/5月24日)。
―まず、J1でのプレー経験がある髙澤選手がなぜ今季J3リーグのギラヴァンツ北九州でプレーすることを選んだのでしょうか?
自分の中で一番大きかったのは、監督が天野(賢一)さんだということ。また、クラブとして自分を必要としてくれているとの熱を一番感じたのがギラヴァンツ北九州だったからです。
―天野監督との接点は髙澤選手が流通経済大に在籍していた時ですよね?
そうです。半年間だったのですが、お世話になりました。流経大サッカー部のスタッフは熱血タイプの方が多かった。そこにプロクラブのコーチを務めていた天野さんが来た時に、それまでとは異なる空気を生み出してくれました。
―どう空気が変わったのでしょうか?
それまでの流経大はとにかくよく走って、というスタイルだったし、練習でしたが、天野さんが来てからは戦術的な練習が増えました。とても論理的で勉強になったし、それが僕にはとても新鮮で面白かった。走る練習も減ったのでうれしくもあったし(笑)。そして、そういう考えで練習をし、プレーをするのがプロというものなんだな、と学んだことが僕にとっては大きかった。そういう刺激をもらった天野さんが指揮を執るチームだからギラヴァンツ北九州でプレーしてみたいと思いました。
―大学卒業後、プロ選手となりザスパクサツ群馬でプレーすることになりました。プロ初年度の2019年にいきなり17得点を挙げ、J3リーグ得点ランク2位に、チームのJ2昇格に貢献しました。いま、振り返って17得点を挙げることができた要因は何だったと思いますか?
要因が自分では分からない。それが要因かもしれません。
―どういうことでしょうか?
プロ1年生の勢いとノリでプレーしていたことが良かったのかもしれません。何も考えずに、ゴール前に入っていき、そこに来たボールを相手ゴールに入れる。そのことに集中できていたから取れたんじゃないか、と。
―もしかしたら群馬のチームスタイルもプロ1年目の髙澤選手にとって合っていた?
そうですね。いま松本山雅FCでプレーしている吉田将也選手とのホットラインがいい、というふうに当時は周りから言われました。彼はサイドでプレーするクロッサーで、常に自分のことを見てくれて良いクロスを上げてくれました。さっき言ったように、何も考えずにゴール前にいることができたのは吉田選手がいたらからでもあるでしょうね。
―群馬での活躍もあり、翌年にはJ1の大分トリニータでプレーすることになりました。J1でのプレー、何を感じ、学びましたか?
まず大分に加入が決まり、シーズン前のキャンプでの練習がすごくきつく感じたんです。でも、ほかの選手に聞くと、大分の練習はJ1の中でも楽な部類に入ると聞いて、「えっ⁉」となって。練習メニュー自体の強度はそれほどでもなかったのかもしれませんが、一緒にプレーする選手たちのプレーの質と強度が高くて、そこに何とかついていこうとして、それが体力的にも精神的にも相当な負荷がかかっていたということです。徐々には慣れましたが、J3とJ1の違いというものをそういうところで感じました。
―そういう厳しさを味わう中で、しかし大分での初年度で6ゴールを挙げました。
レベルは違うなと感じながら、でも、自分は試合に出たらゴールを取れる、そこの自信みたいなものは揺るぎませんでした。だから、いつでも試合に出られるように準備は怠りませんでした。6ゴールという数字自体に満足はしていませんが、1年目である程度の結果を残せたことはやはり自信にはなりました。
―2021年は8月に大分からアルビレックス新潟へ期限付き移籍。そのシーズンは新潟での1ゴールを挙げるに留まりました。何が難しかったのでしょうか?
昨年は何もかもがうまくいかなかった感じですね。試合に出るけど得点を取れない状況が続くと不安がどんどん大きくなっていきました。自分にとってはスタートが大事なんだろうなと思います。
―スタート?
20年、J1デビュー戦となったのがサンフレッチェ広島戦でした。試合終盤からピッチに立ち、2分後、ファーストタッチでゴールを決めることができました。あれで勢いに乗ることができました。去年は大分で9番をつけさせてもらって周囲の期待が大きい中でなかなか結果が出せずに、自分の中でプレッシャーを感じていた、それが悪い方に行ったのかもしれません。性格的にはそこまで悩む方ではないんですけど、1年間通して結果を出せないと、さすがに…。
―昨季苦しんだ分、強くなることはできたのでしょうか?
まず、ギラヴァンツ北九州に加入して10番をつけさせてもらったことでクラブからの期待を、練習や試合での応援からサポートしてくださる皆さんの期待を感じることができています。そういう大きな期待感をプレッシャーに感じるではなく、「よし、やってやろう!」と思えているのは、少し強くなれたからだと思います。
―スタートという点で見ると、今季はまずまずのものになったと思います。第2節のテゲバジャーロ宮崎戦で初ゴール、第4節のFC今治戦で2ゴールを挙げましたから。しかし、その後、チームは勝てず、髙澤選手にもゴールがありません。
期待されている中、今の自分の出来、チームの状況は不甲斐なく感じています。でも、シーズンにはまだまだ先があり、自分もチームもまだまだやれると思っています。個人的にはチームメイトが自分を見てくれていると思っているので、みんなでつないでくれたボールを自分が決めれば良い流れに持って行けると思っています。
―髙澤選手はJ1での実績もあるし、チームを引っ張っていかなければならない立場にあります。
そこは自分でも理解しています。じゃあ、どうやって引っ張っていくか。そこは自分でも考えたところです。自分らしい引っ張り方とは何だろうと。
―その答えは?
今のギラヴァンツ北九州には若い選手が多い。その若手のレベルに自分が下りて合わせて、まとまりのようなものをつくっていくという方法もあるとは思うのですが、自分の場合は厳しい要求をすることで若手を上に引っ張り上げる形でリードする方が合っているだろう、と。若手が自分のように上のカテゴリーを経験した選手を追い越してやろうとギラギラしている方がチームとしても伸びるんじゃないか。今はそう考えて行動しています。チームが良くなることが一番ですから、そこを基準に自分が何をすべきかを考えたい。
―マイ・ウェイを突き進むタイプだと思っていましたが?
自分が点を取れてもチームが勝てないと嫌なので。
―今季ここまで、天野監督が掲げるスタイルを実践する難しさをいま感じているのでは?
後ろからうまくビルドアップしてゴールにつなげる、宮崎戦の2点目のようなゴールがいつもできればいいんですけど、そうはいかない。相手もあることだし、対策も練られるので難しいのは分かっている。でも、ああいうゴールを取れるようなチャレンジはしていきたい。結局、ああいう形のゴールを奪う、あるいはああいうゴールを生み出すための姿勢や考え方を追求していかないと上のカテゴリーには行けないと思いますから。
―宮崎戦の2点目のようにチームとしてボールをつないで最後に自分が決めるゴールと、今治戦の2点目、自分で長いドリブルで運んでシュートにまで持って行くゴール。どちらが好きな形ですか?
どちらもうれしいゴール。個人的な観点で言えば今治戦のゴールかな。ああいうゴールはやっぱり個人的に乗れますから。
―あのゴールはJ3リーグ月間ベストゴールにも選ばれましたね。
でもチームの一員としての観点なら宮崎戦のゴールでしょうね。あれだけ多くの選手が絡んで決めたゴールは個人で決めたものとは別の喜びがあります。また、あのゴールこそが、天野さんが目指しているスタイルが見事に表現されたゴールですからね。
―あの宮崎戦のゴールが取れるんだから…、という思いが外から見ている人にはあるんじゃないか、と。
そうですね。勝利をなかなか手にできない状況が続いて、徐々に自信を持てない状態になっている感じはします。もっと自信を持ってプレーすれば、また同じようなゴールは取れるはずです。
―個人としての理想のゴールの形は?
理想の形はクロスからのワンタッチゴールです。ドリブルで運んで、というよりは、ゴール前にうまく入ってシンプルに取る。それがストライカーだと自分は考えています。
―良いクロスへの入り方とは?
どのタイミングでゴール前に入っていくか、じゃないですか。クロスが入って来る瞬間にDFの前に入ること。
―タイミングを図るにはクロスを上げる味方の状況も的確に把握する必要がある。
そうですね。自分のタイミングだけで入って行っても、そこはクロッサーとの共同作業なので。だからそこは練習でしっかり合わせる必要も出てきます。
―さきほど、DFの前に瞬間的に入ることが大事と話していましたが、DFとの駆け引きも大事ですね?
まずDFよりも自分の方が優位な立場にあると理解しておくことが大事。DFはボールの軌道を見ながらFWも視野に入れて対応するという難しい状況にありますし、そもそもクロス対応はDFにしたらリアクションになるわけですから、FWの動きに対応する時にはワンテンポ遅れるわけです。その優位性を理解していれば、自分主導の駆け引きができるはずです。
―ゴール前のプレーにフィジカルの強さは必要ですか? というのは髙澤選手の身体の線が意外に細いので。
もちろんフィジカル能力が高い方がいいのかもしれません。でも、スペースとタイミングが合えば、相手に接触することなく点を取ることができるのも事実。自分はそっちの形を目指したい。正直言うと、フィジカルトレーニングが好きではありませんし(笑)。
―第9節時点での髙澤選手の個人データです。1試合平均シュート数は2.7本。シュート決定率は12.5%。この数字をどう捉えていますか。
まずいずれも物足りない。シュート数に関してはチームとしても少なく、チームの攻撃もかかわって来るものですが、決定率に関しては個人の問題なので、すごく不甲斐なく感じています。1試合のうちに2つ、3つある決定機を外しているのは事実ですから。
―決定機をモノにできなかった試合後にはどう感じていますか?
試合直後は相当に悔しいし、自分に腹が立っています。でも、翌日には「よし、次だ」となっています。
―そういう気持ちの切り替えは、特にストライカーには必要かもしれません。
悩みすぎるのもよくない、ということは去年経験していますし。
―もう一つのデータ。チーム内での髙澤選手の得点割合が42.9%。チームの得点源であるという事実はストライカーとしてはうれしいことなのでしょうか?
そもそもチームとしての得点数が少ない。トータルで7点のうち、自分は3点。例えば、チームが20点、30点取っている中での今のパーセンテージならうれしいのですが、そうではありませんから。
―今季は副キャプテンを務めています。どう立ち振る舞っていますか?
そういう肩書を持ったことがあまりないので、何か副キャプテンらしいことができているかは分かりません。ただ、プレーで引っ張って行こうという気持ちはあります。
―ここからチームとしてどう這い上がっていきますか?
目標であるJ2昇格をあきらめている選手は一人もいません。ゆっくり進める状況ではありませんが、天野さんの目指すサッカーは挑戦し甲斐のあるものですし、それをピッチでちゃんと表現できれば応援してくださる方をワクワクさせられるものだと信じています。だから、まずは目指すスタイルを貫き通すこと。それを結果につなげるために質を高めること。そのために日々の練習に真摯に取り組むこと。それしかありません。
―ここからチームが上昇気流に乗るためにまずは何をするべきでしょうか?
攻撃的なスタイルを追求しているので、攻撃の質を上げること。そしてなかなか得点を取ることができていないので、得点を取ることだと思います。そうすれば、チームとして自信を持つことができると思います。
―今季の個人的な目標に20ゴールを掲げました。目標達成、行けますか?
大丈夫、行けます! 当然、一人の力では無理です。個人を磨くというよりも、チームとしての攻撃を磨くことが大事。チームのみんなでレベルアップして目標達成につなげます。
文・島田徹 写真・筒井剛史
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