SHIMADANOMEシマダノメ
シマダノメ Season4
第6回 深掘りインタビュー
平山駿 選手
『シマダノメ 深掘りインタビュー』Season4の6回目は第26節・福島ユナイテッドFC戦でのJリーグ初ゴールに始まり3試合連続計4得点を挙げた平山駿選手の登場です。北九州に加入して2年目で果たしたブレイク。そこまでの道のりと4つのゴールについて深掘りしてきました。(取材日/10月20日)。
―まずは、第26節・福島戦で挙げたJリーグ初ゴールからの4得点を振り返っていただきましょう。1得点目の福島戦のゴールから。
まず、福島戦に向けた準備段階で僕自身の調子はかなり良かったんです。練習の最後に行うゲームで、僕は2日連続で点を取りました。それはいずれもサブ組でプレーしていたのですが、前日に福島戦に臨むメンバーの方に組み入れてもらいました。そういう中であのゲームは途中出場でしたが(72分に上形洋介選手と交代)、調子が良かっただけに、自信を持ってピッチに立つことができました。
―自信があったので、得点場面でも落ち着いてプレーすることができた?
コタ(藤川虎太朗選手)からのクロスに対してニアサイドで触ろうと思って入って行ったのですが、クロスが相手に当たってコースが変わり、タイガ君(前川大河選手)のところにこぼれて、タイガ君のシュートが自分のところに来ました。その時にそんなに焦ることもなく、落ち着いて流し込めました。
―平山選手にとってはJリーグ初ゴールだったから喜びたかったはずですが……。
0-2から僕の1点で1-2に。まだ負けている状況だったので、喜ぶことはできませんでした。もっと喜びたかったのですが……。
―試合後にはどんな気持ちに?
家族LINEがあって、そこでお兄ちゃんと弟、両親と家族みんなが祝ってくれたので、その時には初ゴールのうれしさを感じることができました。
―男3兄弟なんですね。
3歳上の兄と1歳下の弟です。
―第27節のテゲバジャーロ宮崎戦での得点はPKによるものでした。PKのキッカーとしてあらかじめ指名されていたのでしょうか?
決まっていませんでした。僕としては自分がもらったPKですし、自分が蹴るつもりでした。でも、相手キーパーがレッドカードを提示されたこともあって、PKを蹴るまでに時間が空いたんですよね。そこで選手が集まって話している姿を見て、誰が蹴るべきかを迷っているんだろうと感じた天野監督からタクさん(永田拓也選手)経由でリョウ君(佐藤亮選手)をキッカーに、という指示が僕らに伝わってきました。でも僕はどうしても蹴りたかったので、ベンチの天野監督のところに行って「蹴らせてください」とお願いしました。
―直訴だったんですか!天野監督は何と?
「自信あるか?」と。そして僕は「ハイ、あります!」と。
―PKには自信があったのですか?
ありました。これまでの高校時代、大学時代も公式戦では一度も外したことはありませんから。
―PKは左隅へ蹴りましたね。
蹴る前に左へ蹴ろうと決めていました。蹴る瞬間に身体の向きで右へ蹴るような感じを出して左へ蹴りました。
―今度は喜べましたね。
はい、宮崎戦のPKは先制点だったので、うれしくて思い切り喜びました。
―あのPKが4得点のゴールラッシュにつながりました。自分が得点を挙げての勝利はギラヴァンツ北九州でプレーして初めてということになりますね。
はい。それがうれしかったんです。
―第28節のヴァンラーレ八戸戦では2ゴールを挙げました。1点目はヘディングによるゴールでした。
ファーサイドに僕はいたのですが、ソウ君(藤谷壮選手)からのクロスがふわりとしたボールだったので、ボールに向かうタイミングをためてミートする瞬間の勢いをつくっておいて、力強くたたくことができました。最初からボールの落下地点に入って行くのではなくて、少しタメてから入っていったのが良かった点だと思います。
―藤谷選手にアシストとなったクロスについて聞くと「あの得点の前にも同じような状況で、同じような場所に、同じようなふわりとしたボールを落としたが、誰もいなかった。今度は誰かいてくれよ、と思いながら蹴った」と話していました。
ソウ君が言う1本目のクロスの時、僕はニアサイドに入っていて僕の上をボールが越えて行きました。2本目は、なぜか分からないけど僕はファーサイドにいて、コタが大外からニアサイドに入ってくれて相手を引き付けてくれたので、僕が決めることができました。
―いま「なぜか分からないけど」と言いました。点を取る時って、そういうことがよくあることなのでしょうか?
なぜか分からないけど、ゴール前でこぼれ球が自分の前にこぼれてくるとか。そういうのは調子が良い時にあるように思います。福島戦でのゴールもそんな感じでした。調子が良いから自分のところにボールが来る、ということは、もしかしたらあるのかもしれませんね。
―ストライカーのゴール感覚について語る時、「嗅覚」という言葉を使います。
嗅覚という言葉が使われる時は、狙いを持ってそこにポジションを取る、ということだと思うので、今僕が話した「なぜか分からないけど」という感覚とは違います。福島戦と八戸戦の1点目は、調子がいいから生まれる「勘」のようなもので取れた得点だと思います。
―とはいえ、クロスを入れる選手の態勢などを見て、自分のポジションを決めている、ということもあるのでは?
確かに、八戸戦の1点目は、ソウ君の縦に抜け出すスピードを見てファーサイドへふわりとしたボールが来るかも、という予測があったことも確かです。その予測は、練習の中で起こった同じような場面の記憶から立てたものでもありますね。
―第29節の愛媛FC戦での佐藤亮選手が決めた先制点は平山選手によるアシストでした。
カミ君(上形洋介選手)も中に入ってきて僕を呼んでいたのですが、それ以上に大きな声でボールを要求していたのがリョウ君でした。あの時は、カミ君のほかにユウダイ君(永野雄大選手)とコタもいて選択肢はたくさんあったのですが、一番大きな声を出している人を選びました(笑)。
―大きな声で要求するって大事なんですね。
大事ですよ。それが「点を取りたい」「取るんだ」っていう気持ちの強さの表れでもありますから。
―その愛媛戦では自身の4試合連続ゴールもかかっていて、結果的にアシストはしたけれども得点を挙げることができませんでした。そのことについてはどう感じましたか?
4試合連続で取りたかったので、少し悔しさがあったことは確かですが、自分がやるべきことは勝利のために働くことなので、アシストという仕事も大事だと考えています。ただ、結果的にあのゲームは引き分けに終わってしまったので、そのアシストも喜びとしては十分なものにはなりませんでした。
―3試合連続計4ゴールという好調の要因は何でしょうか?
1点を取れば波に乗って取れる自信はありました。高校の時(三菱養和FC)でも大学の時(法政大)でもそうだったので、その波に乗れたことが、まず一つ。あとは、なかなか結果を出せない中でもシュート練習などをやり続けた成果だと思っています。
―天野監督に平山選手の好調の要因を聞くと「コツコツと努力した結果」と答えてくれています。コツコツと努力することは昔から得意なのか、そして、そういう成功体験が過去にあったのでしょうか?
高校の頃はサッカーを楽しんでいましたが、自主練をすることはほとんどありませんでした。全体練習の後はみんなで仲良く話して帰る、という感じでした。大学に入ってからは少し変わりました。授業が終わった後の自由な時間が増えて、そこで自分なりに考えるところがあって、そういう時間を無駄にしてはいけないと思って筋トレをしたり、個人練習をしたりするようになりました。
―大学時代のそういうコツコツした努力が成果として出たのでしょうか?
大きな成果として出たかと言われると、そうでもありませんが、ただ一緒にする仲間もいたので、成果は出なくてもそういう努力を継続することができました。その感覚はプロになっても持ち続けることはできました。
―今の好調は、大学のころからの努力の積み重ねでもあるということかもしれませんね。プロ1年目の昨季の個人的な目標は何でしたか?
10得点でした。
―2年目の今季の目標は?
5ゴール、5アシスト。
―1年目で現実を知って下方修正を?
そうです(笑)。
―今季序盤はケガもあり、なかなか出場機会を手にできない中でも努力し続けようと思えた理由は?
仲間の存在。それからファン、サポーターとたくさんの方が僕を応援してくれているのは分かっていて、それに答えるため、恩返しをするためには自分は結果を出し、活躍する姿を見せなきゃいけないと考えていて、そのためには努力を怠ってはいけないと思っています。
―具体的にはどんな努力を重ねてきたのでしょうか?
去年、J2リーグを戦いながら感じたのはフィジカル面が物足りないことでした。だから筋トレに取り組み、それは今年もある程度は継続しています。あとは自分の武器であり、チームの勝利に貢献できるのはシュートを決めること、得点を取ることなので、そのためにシュートがうまくならないといけないので、全体練習後のシュート練習はずっとやり続けました。
―そのシュート練習で一番意識していたことは?
ファーストタッチのボールの置き場所です。大学からシュートには自信があり、良いファーストタッチができれば良いシュートが打てるということは理解していました。でもプロになればディフェンダーのレベルは上がり、彼らを相手に得点を取るためにはファーストタッチのボールの置き所の精度と質をさらに高めなければならない。だからプロになってもそこへの意識とこだわりは強く持ち、日々の練習で高めようと思っています。
―すべてのシュートに自信がありますか。
右足シュートは良いところにボールを置くことができればかなり。でも、左足とヘディングはまだまだ自信がありません。
―さらに多くのゴールを決めようとするなら、左足とヘッドにも磨きを掛ける必要がありますか?
今年、捻挫で負傷離脱して以降、左足の感覚が鈍ってきたように思うので、最近は左足シュートを打つようにしていますし、ヘッドも含めて今後も継続して練習で磨いていこうと思っています。
―コツコツ練習の成果が出始めるようになったことで感謝したいのは誰でしょうか?
やっぱりキーパー陣ですね。いつも居残り練習に付き合ってもらいましたから。キーパーがいないゴールに向かって蹴り込むのと、ゴールマウスにキーパーがいて蹴るのとはまったく違います。より実戦に近い形で練習することはとても大事だと思います。
―三菱養和FCと法政大の先輩であり、かつてギラヴァンツ北九州に在籍したディサロ 燦シルヴァーノとの関係について。
僕が大学の1年生の時にレレ君は3年生でした。2年間いっしょにプレーしました。めちゃくちゃ優しい先輩。公式戦では何試合か一緒にプレーしました。ギラヴァンツ北九州への加入は、レレ君の推薦があって決まったと思っているので、とても感謝しています。
―最近は連絡を取りましたか?
そうですね、ついこの間もLINEで「最近、頑張ってるね」って来たので「ちょっと本気出しました」と答えておきました(笑)。
―ギラヴァンツ北九州での同期は前田絋基選手と狩土名禅選手です。その関係性は?
まだ僕が車を持っていない時は前田の車に乗せてもらっていたので、常に行動を共にする感じでしたね。自分が車を買ってからは少し距離があきました(笑)。
―前田選手はどんな人ですか?
ザ・真面目。とてもしっかりしています。優しい。でもプレーは激しく、そこに大きなギャップがあります。身体を張ってくれるので頼もしいディフェンダーです。
―狩土名選手とは?
最初は少し距離がありました。でもそのうちに距離が縮まって。ものすごく面白いヤツなんです。映画や漫画の話を聞かせてくれます。
―今年はFWとしてではなくサイドでプレーする時期がありました。
サイドでプレーしていた時によく言われていたことは、クロスボールに対してゴール前に入って行くことでした。その感覚は、フォワードでプレーしている時も大事にしていて、それが八戸戦のゴールにもつながったのかなと思います。
―守備のやり方はサイドとFWで違いますよね?
サイドの時は中を絞りながら、また後方にも戻らなくてはいけないので、守備面ではきついと感じます。FWの時は自分で守備のスイッチを入れて、そこに仲間が付いて来てくれる。アクションとリアクションの違いによって、きつさが違うのかな、と思います。
―国内外で好きな選手はいますか?
最近はあまり海外の試合を見ないのですが、少し前まではリバプールのフィルミーノ選手(ブラジル代表)を気にして見ていました。技術が高い、シュートもうまい選手です。
―今は母国、ウルグアイのナシオナル・モンテビデオでプレーしているルイス・スアレス選手と平山選手は目や口元の感じが似ているなといつも思っていたのですが。
それは初めて言われました。似てます?(笑)
―尊敬する選手や指導者の方はいますか?
一番お世話になったのは、三菱養和FCのOBで関屋拓実さんという、小学校の時の指導者の方です。僕がチームとは別に入っていたスクールで指導してもらいました。小学校6年生の時に僕は浦和レッズ、大宮アルディージャ、横浜F・マリノスのジュニアユースチームに入るための練習会に参加したのですが、すべて落ちました。その時、落ち込む僕に手紙をくれて励まし、支えてくれました。僕がその後でプレーすることになる三菱養和FCを紹介していただいたのも関屋さん。そこから法政大、ギラヴァンツ北九州とつながりましたから、とても感謝しています。今でも関屋さんとは連絡を取っていて、オフシーズンには関屋さんが指導するスクールに行って子どもたちとボールを蹴っています。
―今の趣味は?
ないんですよ。でもボウリング、ダーツを時々。家にいる時はYouTubeを見たり。高校の時もボウリングにはよく行きましたし、今でも地元に帰った時は昔からの仲間と行きます。
―地元はどちらですか?
埼玉県の朝霞市です。
―今後の人生設計は? 結婚願望とか。
結婚願望はあります。子どもは2人か3人はほしいですね。僕が3人兄弟で仲が良く、一緒にいて楽しいということもありますが、一人よりは2人、3人いたほうが生きて行く上での支えになると思うので。ただ、結婚も子どももまだ先の事ですね。
―選手としての今後の展開は?
プロになった時に「10年はプロとしてプレーしたい」と思っていました。今年で2年目なのであと8年はプロ選手としてプレーできるように、努力を重ねていきたいと思いっています。
―J2昇格の可能性がなくなりましたが、今季残りの試合をどう戦いますか。
昇格はなくなりましたが、残り試合は無駄にせず、自分は来年に向けてしっかり活躍して、来季もギラヴァンツ北九州でプレーすることができるなら、チームをJ2に上げたいと思っています。
文・島田徹 写真・筒井剛史
今回のイチオシ商品
石窯ピッツァ
マルゲリータ/クワトロフォルマッジ
定価:961円(税込)
長時間発酵させ職人が手伸ばしした本場イタリアのピザ生地に、チーズ等の具材をたっぷりトッピングし石窯で焼き上げた、ファディこだわりのオリジナルピザ。
平山駿選手の一口感想
■石窯ピッツァ(マルゲリータ)
「生地モチモチで、ドライトマトがアクセントになっていて美味しいです!」
■石窯ピッツァ(クワトロフォルマッジ)
「複数のチーズの味が感じられますが、それぞれが邪魔しあうことなくうまく絡みあって美味しいです!」
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