SHIMADANOMEシマダノメ

シマダノメ Season4
第4回 深掘りインタビュー
加藤有輝 選手

『シマダノメ 深掘りインタビュー』Season4の4回目は大ケガから復帰、7月に約1年ぶりの公式戦出場を果たした加藤有輝選手の登場です。長く苦しいリハビリをどのようにして乗り越えたのか、苦しい経験から何を得たのか。またゴールキーパーとしてのこだわりを深掘りしてきました。(取材日/8月3日)。

―大きなケガを経験しました。2021年7月に右ヒザ前十字じん帯損傷。

7月末の練習中でした。やった瞬間に「これは大きなケガになるな」と感じました。でも、診察するまでは少しの可能性を信じようとしましたが、結果的に「前十字じん帯が切れている」と。タイミング的に試合に出ることができていた時期だったので(5月の第14節・東京V戦で北九州デビューのあと、第20節・千葉戦から4試合連続出場中)、「なぜいま自分が?」という気持ちになりました。そのケガも接触プレーによるものではなく、ターンする時に芝に足がひっかかってやったものだったので、割り切れないものがありました。だから1週間くらいは気持ちを切り替えることができませんでした。

―落ち込んで当然でしょう。

手術前のリハビリをしなくてはいけなくて、トレーナーから「クラブハウスに来てやるか」と聞かれたんですけど、行きたくなくて、なぜかチームメイトに会いたくなくて、家ですることにして、トレーナーの方に自宅に来てもらいました。最初は車を自分で運転することができない状態でもありましたしね。

―開き直るというか、ケガに向き合う覚悟を決めたのはいつでしたか?

僕は大宮アルディージャからの期限付き移籍で北九州に来ていたので、手術を埼玉でするのか、それとも北九州でするのかを決めなくてはならなくて、それを埼玉でしよう、と決めた頃ですね。アカデミー年代から僕の身体を診てくれていたドクターが向こうにいたので埼玉で手術を受けることに決めました。

―ここまで大きなケガをしたことが以前にありましたか?

肩を脱臼して手術を受けたことがありました。その時は半年くらいかかりましたが、まだ試合に出ることができていなかったので、ショックの度合いとしてはこっちの方が比べ物にならないくらいに大きかったですね。

―復帰までの時間を比べても、やはり肩よりヒザの方が大変だということでしょうね。

手術後の痛み、リハビリを進める難しさは、ヒザの方が上でした。術後の痛みはかなりあって、何かで強引にくっつけられて自分の脚じゃないみたいな感じもありました。手術を決めて受けたら、復帰までの予定がある程度は見えてくるし、そこに向かうような気持にもなれましたし、ケガに向き合いやすくなりました。

―リハビリ中に2022シーズンの期限付き移籍の延長が決まった時の気持ちは?

シーズンのスタートには間に合わないけれども、途中からでもチームの力になってほしいと言われた時は素直にうれしかった。僕のことを見てくれている人がちゃんといて、本当にギラヴァンツ北九州でプレーしていて良かったな、と。そしてこのチームに対して何も残せていない、僕は2021年に5試合でプレーしましたが、一度も勝っていませんでしたから(2分け3敗)、北九州で何かを残したいという気持ちもあって、期限付き移籍延長のオファーをありがたく受けることにしました。

―去年6月にご結婚されています。奥様のサポートはもちろん大きかったんですよね?

ケガをしてとても不安な気持ちでキャンプ地から帰って来たんですけど、夜遅くに家に着いた時に彼女に迎えられて、元気が出たというか、すごく安心したことを覚えています。

―リハビリ中のサポートは?

食事も随分と考えてつくってくれたし、リハビリの動画も見て回復具合を把握してくれて励ましてくれたり。一人で長い期間リハビリするのとは違って、二人で一緒にリハビリに取り組んだという感覚だったので、プラスになることは大きかったです。

―リハビリ期間中に一番きつかったことは?

手術後3カ月くらいは走るメニューをしてこなかったので、そういう部分での体力を上げていく作業はしんどかったですね。ケガをした右足の筋力がすごく落ちていて、その分、左足に大きな負荷がかかって痛みが出たこともありましたし、そこのバランスが偏っているので、まずうまく走れない。そこを100対100の状態に戻すのに本当に苦労しました。

―リハビリ中にチームの一員として意識していたことは?

プレーで何か助けになることはできない。でも、あの頃はJ2残留争いをしていたので、そこに向けて何かできないかとは考えていました。自分はプレーしていないので、「ここはこういうふうにしたほうがいいよ」という声掛けは、できるんだけどしないほうがいいだろうと考えて、気持ちの面とか、雰囲気づくりの面で役に立とうとしていました。

―昨年末に井澤春輝選手も大きなケガを負いました。

僕と同じ右ヒザの前十字じん帯の損傷です。1シーズンの中でそのケガを負う選手が二人も出るなんて、そうそうないことなので、ハルキがケガした時は、すごく悔しかったんですよね。いまは順調で復帰が見えてきていますから、少し安心しながら「プレー以外でチームにやれることもあるよ」という話もして、ね。

―理想とするGK像は?

いまは足下の技術を生かしながら攻撃にも参画していく、攻撃的なキーパーが主流になっていますが、でも最後はゴールを守ることが第一。だから、攻守にアグレッシブというか、そういうキーパーになることが理想ですね。

―コーチングも重要な仕事だと思います。声掛けで注意していることは?

ゴール前では厳しく声を掛けることが必要ですが、選手によっては声の掛け方で気持ちが下がってしまうこともあるので、そこはこっちが理解して、言葉のチョイスを含めて調整しています。

―そういう面でいうと、加藤選手は他の人のことをよく見ている。

良い意味でも、悪い意味でも、ですね(笑)。普段の生活でも他の人が何をやっているのかすごく気になることがあって。時に、「人のことは関係ない」と思えることも大事な場面がありますよね。

―試合中の映像を見ていて気になることが一つ。瞬きがものすごく遅いことがあるのですが、あれは?

クセなんでしょうね、妻にも言われます。落ち着きたいときに、そうしているんだと思います。

―加藤選手はキックは右足で、スローは左手で行います。キーパーとして珍しいのでは? メリットは?

出会ったことはないですね。でも態勢を変えずに左右にフィードできるのでプレーのスピードが上がるというメリットはあるかもしれません。

―7月9日の第16節のガイナーレ鳥取戦が約1年ぶりの復帰戦となりました。それまでサブメンバーにも入っていなかったので見る側としてはかなり驚きました。

1週間の準備期間でなんとなく鳥取戦のメンバーにかかわれるのかなと、感じてはいました。先発は当日に言われました。でもメンバー入りを予感した時に心の準備はできていたので、焦りはありませんでした。

―実際にピッチに立った時の感想は?

やっと戻って来ることができた。ここから改めてのスタートだな、と。

―2021年の話を先ほどしていたように、加藤選手にとってはこの鳥取戦が北九州にやってきて初めての勝利となりました。

そうです。うれしかったんですけど、失点は自分のジャッジミスというか、安易な失点だったので、そこは引っかかった。練習でもあんなミスはしないのに…。十分に準備はしてきたけれども久しぶりの試合で身体が固まっていたのかな、とかいろいろと考えましたね。

―今季出場3試合目となる第18節・藤枝MYFC戦で1-3の敗戦。複数失点ということもあり落胆したのでは?

自分の立ち上がりの判断のところで、乾貴哉選手のところにボールをつけて、そこからミスが重なって失点してしまった。逆にそこから集中してプレーできたと思っているので、結果的に3失点をしましたが、鳥取戦とFC岐阜戦(第17節。2-1勝利)と比べたら、個人的にはそこまで変なプレーはなかった、落ち着いてプレーはできた、という感覚でした。

―そうした落ち着きが出てきたことで第19節・アスルクラロ沼津戦で加藤選手にとっては北九州加入後初の無失点勝利(1-0)につながった?

今だから言えるのですが、自分でも信じられないようなミスをしてしまった鳥取戦の後、少し自分に対しての不安があって、岐阜戦に向けた練習ではテンションが低かった。でもその週はいつもより長い5日の準備期間があって、選手教育として、北九州出身の元ボートレーサー、植木通彦さんの講演会がありました。そこでの植木さんの話が、その時の自分に刺さったんです。

―どういうところが心に響いた?

植木さんも大ケガを負いながら立ち直り“不死鳥"と呼ばれた方らしくて、「勝つための準備をする」という言葉が特に響きました。勝利のための準備って何だろうと考えた時に、まず、試合が迫っているのにヘコんでいる場合じゃない。次に向けてまずは気持ちを切り替えないと、と気づいて不安がっている自分を解放できました。すごく良いタイミングで、すごく良いお話を聞けたんですよね。それで岐阜戦に向けて良い準備ができました。

―いま、チームは間違いなく良い方向に進んでいますが、ここからさらに躍進するために必要なことは何だと思いますか?

先制点を取れているので、後ろは失点しないために身体を張って守る必要があります。その中で追加点を取ることができれば、よりスムーズな試合運びができる。天野賢一監督もよく試合前に「追加点を取って勝ちに行こう」という話をされていましたが、そこに尽きるかな、と。沼津戦も1-0で勝つことができましたが、2点目を取るチャンスもありました。夏場なので体力的にも難しいところはあるのですが、そのせめぎ合いのところを何とか制して、前に進んでいきたい。

―ケガ人続出の中の厳しい戦いをモノにすることでチームの結束力が高まっていると感じますか?

沼津戦のベンチには、加入1年目の選手が3人いましたが、練習でのプレーを見てもシーズン当初に比べるとかなり成長していると感じます。沼津戦では井野文太が最後に出てきてプロデビューを果たしました。ファーストプレーでしっかり身体を張ってボールを奪って落ち着いてプレーできていました。自分のことに照らし合わせてみると、高校卒業して1年目でプロデビューできるなんてすごいことです。そして、長谷川光基と伊東進之輔に出番はきませんでしたが、僕らが少し声を掛けて落ち着かせてあげれば十分なパフォーマンスを出せるところまでレベルは上がっていると思っていたので不安はまったく感じませんでした。

―しっかりとチームの底上げはできている、と。

だからケガ人が多い状況ですけど、誰が出ても戦力ダウンになるとは考えていません。沼津戦までのゲームでも途中出場の選手がしっかりと力を発揮してチームのパワーを維持していました。そういう状況ですから、結束力も自然と高まってきていると感じます。

―加藤選手が復帰して4試合です。復帰戦で感じた喜びをまだ感じながらプレーしているのでしょうか?

1試合を終えるごとに、1試合が来るごとに、こうしてプレーすることができていることは幸せだと感じています。もちろん試合だけではなく、日々のトレーニングでサッカーができていることに喜びを感じています。その感覚がなくなりかけた時は自分のプレーができなくなるだろうと思っています。

―ケガをしてから復帰するまでの過程を思い出すとき、それは、つらく厳しいというイメージのものなのでしょうか。

もちろん、つらいし難しいリハビリでしたが、自分の場合はあっという間に月日がたったという感覚もあります。おそらくそれは、手術は埼玉で、リハビリは北九州であり、年末のオフシーズンはまた埼玉に帰って、新シーズンはキャンプに入って、とセッションごとに環境が変わっていったことが良かったのでしょう。

―いま、定位置をつかんでいる状況ですが、ポジション争いは厳しいはずです。

シーズン開始時には吉丸絢梓選手が出て、次に田中悠也選手が出て、後藤大輝選手もサブに入ったし、みんなそれぞれに良いところがあって、誰が定着するのかが分からない状況です。だから毎日の練習で良いプレーをしないと出番を手にできないという危機感を持ってやっています。そういうのは確かに厳しい状況だと言えますが、それによって自分も成長できるはずなので、実に有難い環境だと思っています。

文・島田徹 写真・筒井剛史

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加藤有輝選手の一口感想

■麻婆豆腐の素
「辛いのが得意ではないんですが、ちょうどよいシビ辛さでした!ご飯が進みそう!」

■広東風ふかひれスープ
「卵スープが好きな僕には嬉しい一品で、フカヒレの濃厚な味わいも楽しめました!
簡単に調理できるので、忙しい奥様方の味方にもなってくれそうです!」

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