SHIMADANOMEシマダノメ
シマダノメ 第6回
深掘りインタビュー 町野修斗選手
『シマダノメ 深掘りインタビュー』の第6回目は、横浜F・マリノスからの期限付き移籍で今季加入の19歳、FW町野修斗選手の登場です。第2節から第6節まで5試合連続フル出場中のシャイボーイに、ストライカーとしてのこだわりと自身の現在の心の動きを深掘りしました。悩みながらの前進。間もなく結果が出る、の予感アリです!(取材日=2019年4月19日)。
―第6節のアスルクラロ沼津戦ではサイドからのクロスにヘディングで合わせる場面が3回ほどあって、それぞれが得点の可能性を感じさせるものでした。出場6試合の中では一番良いパフォーマンスだったのではないでしょうか?
あの試合のチャンスは全部ヘディングによるもので、下(足元)でのシュートがなかったので、自分としてはそこが少し物足りないところではあるんです。
―沼津戦まででベストパフォーマンスの試合を挙げるなら?
まだ、ベストがありません。
―沼津戦ではフリーキックを蹴る場面もありました。入りませんでしたがかなり惜しいコースに飛びました。あの場面でキッカーを務めたのは自信があったからですか?
あのフリーキックは自分が倒されて取ったものでしたし、2点目を失ってからすぐだったので、何とか追いつきたいという思いもあり自分で蹴りました。フリーキックには自信があります。高校の時はほとんどのフリーキックを蹴っていましたし、たくさん決めてもいました。ただ最近はフリーキックの練習はあまりできていません。そこに時間を掛けてられない、ほかにやるべきことがたくさんあるので。
―でも、その沼津戦でフリーキックの実力を披露したので、次からも自信を持って「蹴ります!」と手を挙げられるのでは?
どうでしょうか。短い距離にも自信はあるのですが、それはほかにも蹴ることができる選手が揃っているので、自分が蹴るとしたら沼津戦のような(約30メートル)長い距離の時になるんじゃないですかね。
―長い距離のフリーキックに自信があるということはキック力があるからだとは思うのですが、加入当初から見ていて感じたのは、町野選手は体の線が細いのに、なぜ強いシュートが打てるのか、なぜキック力があるのか、という疑問です。
特別な練習をしてきたわけではないので、自分にもよく分かりませんが、おそらくは足の振りの速さ、それとインパクトのところで、体重をうまく乗せられているからじゃないでしょうか。それも特に意識してやっているわけではないので確かな理由かどうかは分かりませんけど。
―町野選手の中では強いシュートで点を取りたいという気持ちが強いのでしょうか?
もちろん、状況によってはコントロールシュートと言われるようなコースを狙うことを意識したシュートも打つんですが、そういう“置きに行く"感じのシュートで外した場合、キーパーにセーブされた時の後悔っていうのが半端なくて、それなら思い切り強いシュートを打って外した方がまだ納得がいく、というのはあります。
―沼津戦では足でのシュートがなかったという話ですが、そこに何か理由は見当たりますか?
自分の動き出しが悪くて、足でのシュートが打てる状況でパスをもらえていないということが一つ。あとは、チームのためにプレーする、という意識が強すぎるのか、強引になら打てる場面でもより得点の可能性が高いと思うところにいる味方へのパスを選択している、というのも理由かもしれませんね。そこに関しては自分でも無意識ではあるんですが、試合の映像を見返している時に「ああ、ここは自分で打てたな」と思うことが時々あるんです。
―もう少し、エゴであってもいいと?
チームの勝利のためにプレーすること。自分のゴールよりもチームの勝利の方が大事、という思いを持ってピッチに立っているのですが、僕はまだプロになって2年目の選手ということと、まだプロでゴールを取っていないという2つの現実をもう1回、はっきりと自覚して、もっと、どん欲にゴールを目指すべきなんじゃないか、と、この2日のオフ(4月15日と16日)を利用して実家に帰った時に考えました。
―実家は三重県のどちらですか?
伊賀市です。伊賀忍者で有名な街です。今回はサプライズというか、新大阪駅まで車で迎えに来てもらう父にだけ話して、母とおばあちゃんには内緒で帰りました。2人はすごくビックリしてました。「夢か!」みたいな顔で。そういう意味ではサプライズは大成功でしたね。開幕戦にはみなミクスタに来てくれていたのですが、実家に帰ったのは開幕前以来ですから3カ月ぶりでした。家族のみんなサッカーが好きです。プレーヤーとして国体選抜になったこともある父、おばあちゃんもなぜかサッカー好き。
―町野選手の「修斗」という名前はサッカー経験のあるお父さんの命名ですか?
そうです。しかも父はフォワードだったので「修斗」にはそれなりの願いが込められているんだと思っています。
―先ほど言った「もっと、どん欲に」というのは家族と話しながら考えたのですか?
いいえ、道中の新幹線の中で。考えたというか、自分の立場をもう一度冷静に考えた時に、「チームと勝利のことを考えて」と言える立場にあるのか、そんな余裕が自分にはあるのかって思ったんですよ。
―レレ(ディサロ 燦シルヴァーノ)選手がこのコーナーに登場してくれた時に「もちろん、チームの一員として求められる役割は果たさなければなりませんが、ストライカーが100パーセントのエネルギーをかけるのはボックス内であるべきだと思います」と話していました。
僕もレレ君のように、ゴール前での仕事に集中した方がいいんじゃないかと考えたこともありますし、その考えが間違っているとも思いません。ただ、後ろに引いてきて踏ん張って踏ん張ってボールをキープすれば、最終ラインから2列目にかけてのラインを押し上げられますし、そうすることでチームが目指すコンパクトなサッカーにつながる。それは誰かがしなければいけない仕事だし、ならば僕がやってやろうと思ってやってきたわけです。でも、ゴールという結果を出せていないところに目を向けると、「欲張りすぎてんじゃないのか」とも思ってしまう。そんなことを帰省の道中の新幹線の中であれやこれやと考えていたわけです(笑)。
―ゴールという結果はともかく、チームの勝利というところで十分に貢献できているから出場機会を得ているのでは?沼津戦の前に小林伸二監督に話を聞いた時にこんなことを話していました。「確かにまだゴールはない。だけど、開幕戦のFC東京U-23戦では途中出場でチームの2点目、シンタロウ(國分伸太郎)のゴールをアシストしているし、この前の富山戦(1-1のドロー)でも同点ゴールはケンタ(福森健太)のシュートをレレが押し込んだものだけど、ケンタのところにボールがこぼれたのは新井(博人)のクロスにマチ(町野)がしっかりと競りに行っているから。マチはよく走れているし、いまのまま続けていればみんなに認められ、そうなるとボールもどんどん集まるから点も取れますよ」と。
そうですか。まあ、ゴールへのどん欲さを持ちながら、でもチームの勝利のために、というこれまでのスタンスも持ち続けて、というところに落ち着くんですかね。確かに、ゴールという結果が今は出ていなくても、これまでのようなプレーを続けていれば、チームの攻撃にも迫力がもっと出てきて、そうなればチャンスの数も増えるでしょうし、チャンスが増えれば僕にもゴールチャンスが巡ってくるだろうし。なんかそんなふうにしていれば、こぼれ球が自分のところに転がってきそうな感じもしてきました。「でもなぁ、今の自分の立場を考えるとなぁ」って堂々巡りになるんです。まあ、しばらく悩みますね、そこは。あ、悩むと言っても、立ち止まるってことはありません。走りながら悩みますよ。
―得点感覚を思い出すために、というわけではないのですが、点を取る時、ゴール前でシュートを打つ時には、冷静さが必要なんでしょうか?
いろいろな状況を見て判断するために冷静さが必要か、という意味の質問だと思うのですが、僕の場合は無心という感じですかね。例えばシュートフェイクを入れて切り替えして逆足でシュートを打つ時なんか、切り返せばディフェンダーがこう動くから、キーパーの重心が傾くから、と考えてやっているわけではないように思います。あくまでも感覚に従って切り返しているような。あるいは、最初から「切り返そう」とあらかじめ決めているとか。なんか今、自分のことじゃないように話していますけど、実は僕、ゴールした時ってその瞬間の記憶がないことが多いんです。だから、「こうです」と言い切れないんですよ。良いシュートで決めた時、“ゴラッソ(スペイン語起源の造語。美しい、華麗、スゴい!などを含む素晴らしいゴールのこと)"と周りが言ってくれるようなゴールを決めた時、あとになって「なんであそこで打ったんだろう?」と思うことが多いんです。理由がない時に良いゴールが生まれているように思いますけどね。
―ボックス内とフィールドのほかのところでは、集中の意味が違うのかもしれませんね。例えば、集中しているから、いろいろな状況を的確にとらえて数ある選択肢の中から最適解を見出してプレーとして表現できる。それも確かに言えることのように思えますし、町野選手が言うように「無心でいる」ことも実は集中しているからこそのもの、その証でもある、と言えるような気がします。深いですねー。
ホント深いです、サッカーは。
―得意なゴールパターンは?
特にこれというのはありませんが、比較的得意だな、と思うのは、左サイドから来たパスを、体を開いて右方向に止めて右足でファーサイドにズドン、というやつですね。ボールは巻くんじゃなくてストレートで。マリノスの時は練習でもよくそのパターンを練習していて決まる率もかなり高かったので自信を持っているパターンなのですが、今季は6節までで一度もその形でシュートを打てていません。どうしたらその形がつくれるんだろうって考えています。
―ヘディングシュートの形で得意なのは?
ヘディングに関して言うと、右サイドからのものが合わせやすい。だいたい右足で飛ぶので右からのボールの方が合わせやすいのかなぁ。この前の沼津戦は左サイドのヒロトさん(新井博人)からのものばかりだったから入らなかったのかな(苦笑)。でも今は形はどうでもいいんです、とにかく1点を、プロ初ゴールを早く決めたいんです!
―先ほども話に出てきましたが、レレ選手は同じストライカーとしてライバル関係にありますが、オフでも一緒に過ごすことが多いようですね。
はい。特に意識してはいないんですけど、ヒロト君とレレ君と一緒にいることは多いですね。
―プロとしては町野選手がレレ選手よりも先輩ですよね?
でも、レレ君の方が年上なので、そこはしっかり先輩として接しています。でも、レレ君も含めてほかの先輩方も「町野はオレたちをなめている」と思っているように感じています。空気を読んで、イケる人には行っているので、そう思われるんでしょうか。
―レレ選手のインスタには、新井選手とのおふざけシーンがちょくちょくアップされています。
ヒロト君は面白い人です。一緒にいるとついふざけてしまいます。一日に50回はふざけています。ノリが合うんです。
―そういう意味では新井選手とは連携も良さそうですし、ゴールを決めるためにいろいろな要求もしやすいのでは?
確かに息は合うと思うんですけど、自分から要求することは少ないんですね、それはヒロト君だけじゃなくて、ほかのチームメイトに対しても。
―もしかして、もっとこうしてほしい、こういうボールが欲しい、と要求していけば、さっき話した得意のシュートパターンに持っていけるのでは?
あっ、確かに!う~ん、要求してみます。
―沼津戦での今季初敗戦について。
警戒していたセットプレーから失点したこと、無得点に終わったことは反省すべき点。特に僕はフォワードなので、無得点に関して思うところは大きい。でも最後まであきらめない姿勢をみんなが持ち続けられたことはプラスにとらえたいと思います。開幕前と今を比べてみると、いろいろな状況が変わってきていると思います。開幕前は昨季最下位だったという事実に選手もサポーターの方々も思うところがあって、それをバネにして開幕4連勝というところにつなげられたと思うんです。そうやって勝点を重ねていくと今度は相手の僕らに対する気持ちも変わってきてそれが僕らの戦い方というものにも影響してきました。これは小林監督からも言われていることですが、調子が良いからといって決して受けに回らないこと、いつも前向きにチャレンジすることが大事なんだと、沼津戦の後であらためて思いました。そういう意味で、今季初めての敗戦を、もう一度開幕前の気持ちを思い出すための良いきっかけにしたいと思っているんです。
―今季は横浜F・マリノスからの期限付き移籍による加入という形。完全移籍とは気持ちの上で異なるのでしょうか?
完全移籍の経験がないので何とも言えませんが、期限付き移籍は2チームから結果を求められる立場となるので、本当に結果を出すことが大事。結果を出せば僕を出してくれたマリノス側から「出した甲斐があった」と思われるでしょうし、ギラヴァンツの一員としては結果を出すことで初めてチームメイトとサポーターの方々から信頼されるんだと思います。
―シーズン終了後にどんな結果を出したいと?
チーム内で一番たくさんのゴールを取っていること。
―レレ選手は20ゴールを目標に挙げていますが?
そうですか。シーズンが終わった時、チームで一番得点できているように一試合一試合全力で頑張ります。
文・島田徹 写真・筒井剛史
(次回シマダノメ『深掘りインタビュー』の第6回目は5月中旬ごろにアップ予定。登場する人物は?お楽しみに!)
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