SHIMADANOMEシマダノメ
シマダノメ『見たよ!聞いたよ!練習場で!』Season.2 No.005
チームスタッフがカメラを向ければ必ずおどけた表情を見せる、20歳の若者らしい明るさは去年と変わらない。30歳を過ぎても、そこは変わらないでほしいとは思う。でも、変わったところもある。ヘアスタイルが変った。少し大人びた。横浜F・マリノスからの完全移籍となり、車のナンバーも「横浜」から「北九州」に変わった。身も心もギラヴァンツ北九州の選手となった。そして……。
チーム練習が再開され、トレーニングメニューが個人のフィジカルアップ中心のものから対人メニューへと移っていく頃から町野選手の「ターン」のスムーズさが目を引いた。後方からのグラウンダーのパスを受けてパッと前を向いて背後に迫る相手選手に向かって自分のタイミングで仕掛けられる態勢と間合いを素早く、うまくつくりだしていた。
町野選手は言う。「去年からシンジさん(小林伸二監督)や天野さん(賢一ヘッドコーチ)に言われてましたし、今年もチョウさん(長島裕明コーチ)からよく言われるのがターンについてです。良い態勢で前を向かれるのが相手は一番嫌だろうし、何よりゴールに向かってプレーする意思を見せることで相手に脅威を与えられる。後方から来たボールを後ろからサポートに来た味方選手に落とすだけのフォワードではきっと相手も怖くない。そして、もしうまくターンができるようになれば、味方へ落とすプレーもより効果的になるはずです」
去年と同様に、今年も全体練習後に平野智己コーチにパスを出してもらってターン練習を繰り返している。ボールを受けると同時に体を反転させる基本的なパターンはもちろん、右に上半身を振っておいて左に抜ける、あるいはその逆、と実に多彩なターンを実にスムーズに、実に素早く、実に正確に行う。去年からヒザの使い方を中心にさまざまなターンを指導してきた小林監督も最近の町野選手のターンに「良くなった!」と太鼓判を押す。
それから、セオリーと自分らしさのバランスに気を配るようになったのも新たな変化の一つだろう。「シンジさんからはフォワードとしてのセオリーをいろいろと教わっていて、『それを習慣化させつつ、お前の特徴を出せ』と言われているので、そこを練習から意識するようにしています」(町野選手)。
このセオリーについて小林監督に聞くとこんなふうに解説してくれた。「持ち前の良さはあるが、ある状況になった時には、マチがちゃんとポジションを変える、あるいは的確な場所に顔を出すことでチームに組織的なプレーと連動性が生まれるので、そこはしっかりできるようになってほしいと話した。それがつまりはセオリーというもの。それをしっかり理解した上で組織の中で動いて、自分を出すことを意識してほしい、と話している。ターンもうまく力が抜けて上手にできるようになったし、『全体の中の一人』としてのセオリーも理解し始めていると思う」
それから自粛期間を境に変化した部分もある。「肉体改造ですね。少し体重を増やしてパワーをつけたいと思って、自粛期間中に自分でいろいろ調べて、筋トレと食事の両面からアプローチしています。食事は補食の部分で鶏肉を食べるとか、朝もヨーグルト、納豆、豆乳など、タンパク質を多めに採る様にしています。あとはリカバリー時に果物でビタミンCを。成果ですか? 開始したのが5月のはじめ、そこから1カ月で1・5から2キロくらいは増えました。体重は増えたが、動きは重くありません。最終的には3、4キロは増やしたいと思っています」
体重を増やす目的な複数ある。背後からの相手の圧力に負けずに安定したポストプレーをするなど、フィジカルコンタクトに負けないようにするため。それから前述のターンにも関係してくるが、前を向いてダッシュを掛けた時の加速を増すため。これは攻撃時だけではなく、守備時のプレスの際に相手ボールへの寄せを素早く、力強く行う時にもかかわってくる。それからもともとパンチのあったキックとシュートの威力をさらにアップさせるため。90分を通して動ける持久力はそのままに瞬発力につながるパワーをも備えることができれば、J2の舞台でも良い結果を残せるはず。そうすれば、チーム内トップスコアラーという昨季の勲章を、昨季の8つを越えるゴールを挙げた上で今季も手にすることができるだろう。
戦術、技術、フィジカルと、いろいろな面で変化の途上にある町野選手だが、一番の変化は「自分を変えなきゃ、変えたい」という心の部分の成長ではないか。それは肉体改造の話の中の「自分でいろいろ調べて」という言葉に表れているように思う。人に言われて、ではなく、自らアクションを起こしたというところがとても大事で、それが見えたからこそ、かつて誰も経験したことがない中断期間の間に生まれたいくつかの変化の先にある、町野選手自身の未来予想図はきっと輝かしいものとなるはずだ、と思うのだ。
文:島田 徹
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