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深掘りインタビュー!第14回
北川柊斗選手

シマダノメ 深掘りインタビュー!第14回 北川柊斗選手

『シマダノメ 深掘りインタビュー』の第14回目は、8月半ばにJ2・モンテディオ山形から期限付き移籍で加入、デビューから3試合連続の途中出場ゴールでリーグ再開後の好リスタートの立役者の一人になった北川柊斗選手の登場です。『名は体を表す』と言いますが、“シュート"への強いこだわりと、にわかには信じがたいマンガチックなエピソードから24歳の素顔を深掘りします。(取材日=2019年9月19日)。

―ギラヴァンツ北九州でのデビュー戦となった第21節のヴァンラーレ八戸戦から第23節の福島ユナイテッドFC戦まで3試合連続計4ゴールを挙げました。しかもいずれも途中出場で!

僕がギラヴァンツ北九州に来たのがJ3リーグ中断期間中の8月半ばでした。だからリーグ再開後の今季残り試合である14試合が僕の出場可能試合で、そのすべてに出場すること、そして7ゴールを挙げることを個人的なノルマに掲げていました。なので、最初に出場チャンスをもらった時、とりあえずシュートを打つことだけを考えていて、それで1点目を取ることができ、その姿勢を継続することで、福島戦での2ゴールを含めて計4ゴールを取ることができたと思っています。

―ノルマの7ゴールまで早くも、あと3ゴール。

そうですね。今のペースで取ることができればノルマの達成は可能かな。もちろんそんなに甘くはないのかもしれませんが、ペースを維持できれば二桁得点も狙えるかもしれません。

―途中出場によるゴールを3試合も続けることは簡単なことではないと思います。

これまで途中出場でゴールを決めた経験は、ほぼありません。だから、自分で今の結果をどう分析していいのか分からないのですが、ボールを呼び込む時の動き出し、あるいは最後のフィニッシュのところでも、無意識というか、本能、感覚のままにできているという自覚があって、それが良い方向に出たのかな、とは思っているんです。

―本能、感覚に任せたプレーは、その3試合だけに限って?

いいえ。もちろん、ビルドアップの際には相手も味方もよく見て考えながらプレーはするんですけど、いざゴールを奪いに行くという時のプレーは本能に任せて、という感じは、自分のプレースタイルと言っていいと思います。

―福島戦では2ゴールを決めました。1点目はスライディングしてきたディフェンダーの足にシュートが当たり、それに反応したキーパーの足にも当たってゴールイン。2点目は藤原奏哉選手のボレーシュートをゴール前でコースを変えてゴールインと、こう言ったら失礼だとは思うのですが、ラッキーなゴールだった、とも言えるのでは?

正直、2点目のゴールはラッキーでしたね。でも、あそこに立っていた、たまたまそこにいた、その“たまたま"がフォワードとしては大事だとは思いますが、まあ、自分でも体のどこに当たって入ったかも分からないくらいなので、ラッキーはラッキーでした。でも、1点目はテラさん(寺岡真弘選手)からのロングボールが出た時に、寄せてきた相手選手にタイミングよく自分の体を当ててボールを拾えた。その後に、ボールがうまく自分の前に転がったという、“たまたま"はありましたけど、そのままゴールへ向かう選択、また、シュートはファーサイドを狙ったもので、それが相手選手に当たって“たまたま"コースが変わりましたが、それでもボールがゴールに転がり込んだのは、その時に僕が持っていた勢い、というものが影響したと思いますし、相手ディフェンダーの競り合いから始まった一連の流れ、それをトータルな視点で見て、個人的には納得しているゴールなんです。

―なるほど。それにしても、福島戦での1点目。競り合いの相手はハードファイターの阪田章裕選手で、彼を吹っ飛ばしたフィジカルコンタクトの強さには驚きました。

そもそも、僕はフィジカルが強い方ではありません。だからこそ、ああいうコンタクトがある場合は、タイミングを大事にしています。ボールが届く瞬間は相手もパワーを集中して当たりに来ます。でも、その直前、まだパワーを集中し切れていない段階で僕から体を寄せると、フィジカル能力に優れる選手でもバランスを崩すものなんです。でも、タイミングが早過ぎるとファウルを取られますから、ほんと、微妙なところなんですけどね。

―そこでボールを自分のものとした後の、ゴールに向かうドリブルに迷いがありませんでした。まさに一直線、という感じで。

僕が入るまでの試合の流れ自体が良くなかったですし、あれが僕のファーストプレーのようなものだったので、そこで思い切りよくプレーしよう、シュートしようと、決めてピッチに入っていったので、迷いませんでした。

―三重県出身、名前が「しゅうと」。その二点で、町野修斗選手と共通しますね。

そうなんですよね。僕は鈴鹿市出身で、町野は伊賀市なんですよね。あのぉ、三重出身の選手が珍しいと思ってらっしゃるようですが、意外にたくさんいるんですよ。山口蛍選手(名張市)、金崎夢生選手(津市)、浅野拓磨選手(三重郡菰野町)、和泉竜司選手(四日市)とか。ほかにも有名選手が本当にたくさんいるんです。

―和泉選手の名前が出ましたが、北川選手は名古屋のアカデミーの出身なんですね?

はい、そうです。中学からですね。中学の時は鈴鹿から電車で2時間くらいかけて通って、高校からは寮でした。

―名古屋のユースから進んだのは、筑波大学ですね。そこで、野口航選手と出会った。

筑波大での日々はまさに青春でしたね~。ワタル(野口選手)とは同期で、そこで仲良くなって今も仲良くしてもらっています。

―その野口選手から、筑波大学時代の北川選手に関する、とんでもないエピソードを聞いています。ちょっと信じられないような話なので、それが本当かどうかを本人に確認したくて。

何の話ですか!

―まあ、お聞きください。ある大学との練習試合。着替える際の北川選手の様子がどこかおかしいことに野口選手は気になったようです。「なんか、ソワソワしてるな」。でも理由は分からなかった。それで、「アイツ、同じメーカーの、同じ色のスパイク、左足分を2つ持ってきちゃったんです。それで、左足用を強引に右足に履いた! こっちから見たらスパイクのつま先が両方とも同じ方向に曲がっていて、違和感アリアリでした!」。ハイ、これ本当の話でしょうか?

ですね。でも確か、あの日は“たまたま"土砂降りでグラウンドが水たまりだらけでラッキーでした。足下が見えにくかったので、誰にもバレませんでしたからね。

―では、もう一つ、同じスパイクがらみで。ある日の練習でストッキングを忘れた北川選手。「アイツ、素足にスパイクで練習をやり切ったんですよ。練習終わりの足を見たら、傷だらけでした!」。これ、本当?

はい、でも、あれも運よく、冬だったので短パンではなく長いジャージをはいていて足下が隠れてていたので、誰にもバレませんでした。

―野口選手にはバレていたのでは?

あれは、僕がワタルだけには、教えたんですよ。

―野口選手だけに、ねー、そうですか。そのエピソードを楽しそうに話す野口選手を見ていても、2人は本当に仲がいいんだなと、思います。

性格が合うというか、僕もワタルもお調子者なので。

―野口選手もお調子者?

そうですよ。ワタルのこと、まじめなヤツだと思っちゃダメですよ、アイツ、めちゃくちゃお調子ものですから!

―仲が良い野口選手がいるから北九州に来ようと思った?

さすがにそれはないです。でも、ワタルに冗談っぽく「北九州に来いよ」と言われた1週間後に本当にオファーをいただいたんですよ。あれには僕もビックリで。でも、本当に悩んだんですよね。行って大丈夫だろうか、と。

―悩みながらも決断した理由は?

シンジさん(小林伸二監督)が山形で監督をしてらっしゃった時に一緒に仕事をされていたスタッフの方から「あの人の下でプレーすれば本当に成長できるから」と言われて前向きに考えるようになって、最後はシンジさんから電話をもらって直接お話をさせてもらって決めました。

―山形では昨季、17試合出場で1得点という結果。ルーキーイヤーでこの結果、満足しましたか?

満足はしませんでした。まず、ほとんどの試合、フォワードではなくウイングバックでプレーしましたからね(※先発9試合のうち7試合で左ウイングバックとしてプレー)。だから、点は取りたかったんですけど、ゴールまで遠いですからね、1点取るだけで終わっちゃいました。

―なぜ、左ウイングバックに?

最初にウイングバックとして先発した試合(第8節/愛媛戦2-0勝利)で点を取っちゃってからそのまま、という感じですね。でもかなり勉強にはなりました。特に守備面は。と言っても自分の背後は取られまくりで。それも含めて良い勉強になりました。

―ここまで3試合で4ゴール。これからまだまだたくさんの得点パターンを見せてくれるとは思うのですが、自分で得意とするパターンはどういうものですか?

これ、といってパターンがないことが自分のストロングポイントだと思っています。ドリブルからのシュート、ワンタッチゴール、ループ、まだ北九州ではありませんが、ヘディングも、そして左右両足、どういう形からでもゴールを奪える自信はあります。

―これも野口選手からの情報です。「アイツ、パスなんて考えない。いや、パスを知らないかも、というくらい、シュートの意識が強いんですよ」と。

そうですね、シュートを打たないと意味がない。シュートがあってのパスです。オレはパスあってのシュートとは考えません。

―4つのゴールシーンは、まだパスの選択肢があってのシュート、というものではないですね?

はい、全部、選択肢はシュートだけのパターンですね。さすがにキーパーと2対1の状況になればパスも考えますが、基本はまずシュート、です。打たないとチャンスは逃げていく。

―そういうメンタルになったのはいつごろから?

中学の時。それまでは中盤の真ん中でプレーしていましたが、フォワードをやり始めるようになってからは、まずシュートだ、と。

―シュートへの意識が強いことは素晴らしいことだとは思いますが、ミスした時は周囲から「パス出せよ!」の声が出ることもあるのでは?

今季、山形ではハーフタイムに入ってコーチから「パス出せよ」と言われたことはあります。前半にシュートを打ち過ぎて。結果に出れば言われなかったとは思うんですけど。でも、何人かの先輩からは「それがお前の良いところだからそれを続けて、そうすることで相手も食いついてくるはずだから、その時にはパスな」と言われましたね。山形の先輩は本当に良い人が多いんで。だから今回の移籍も迷ったんですけど、経験豊富なディフェンダーの加賀健一さんが「試合に出て経験を積んだ方がいいんじゃないか」と言ってくれたことも、移籍を決めた一つの理由でもあるんです。あとボランチの本田拓也さんからもいろんなアドバイスをいただきましたね。

―小林監督も北川選手のシュート感覚を高く評価しています。北九州での3試合でのシュート決定率は80パーセント(シュート5本で4得点)。シュートの質を上げるために意識していることは?

高校まではパワーだと思っていましたが、プロになってから、特に昨季の山形でコースを狙って打つことの重要性に気づかされました。全体練習後、中山仁斗さん(※今季からジュビロ磐田でプレー)と石川竜也コーチ(※今季から山形のアカデミーコーチ)の3人でシュート練習をしていたのですが、石川コーチからは、体全体の力みは取りながら、でも、ひざ下からの振りの速さを意識してゴールの四隅を狙うことでシュートの精度が高まることを教えていただきましたし、中山さんはコースをしっかり狙った上で、あの人、内転筋がとても強いので、パンチの効いたインサイドシュートをバンバン決めるすごさを見せつけられて、同じようには蹴れないんですけど、理想的なイメージとして僕の頭の中に残っているんです。あの頃の練習は今に生きてると思います。

―出場機会を求めてやって来た北九州で、どんな能力に磨きを掛けたいと思っていますか?

結構、試合中に存在感が消えちゃうタイプなんです。それは、ボールに絡んでいない、というよりは、チームプレーにかかわれていない、という意味です。例えば、ボールに触っていない、ボールを受けるために顔を出しているわけではないけど、自分のポジショニングによって、とか、フリーランニングをすることでチームメイトのプレーを助ける。あるいは、自分が止まる、動かないことでチームメイトを生かすことも含め、これは山形のコーチからいただいた言葉ですが「かかわらない、かかわり方」を極めたいと思っています。質の高い「かかわらない、かかわり方」をするために大事なのは、要はオフ・ザ・ボールの時のポジショニングと動く、動かない時のタイミングが大事だということなんですけどね。

―「かかわらない、かかわり方」は確かに重要だとは思いますが、見ている人にそれは分かりづらくて、やっぱり「北川、消えてんじゃん」というふうにもなりかねないと思うのですが?

なぜ、「かかわらない、かかわり方」を磨こうと考えたかというと、それはあくまで僕がフィニッシャーとしてゴールを決めるために必要な一つの過程だと理解したからです。だから「かかわらない、かかわり方」について評価してもらおうとは思っていません。僕の評価はあくまでゴールが取れるか、取れないか、というところでしてもらうもの。ゴールを取れば、「消えてんじゃん」と言っていた方も、きっと拍手をしてくれるでしょ? 僕のストロングはあくまでゴールを奪うことなんで!

―ここまでの3試合はいずれもアウェイゲームでのものです。まだミクスタでのプレー経験がないんですよね。北川選手のミクスタ・デビューは、10月6日の第25節のセレッソ大阪U-23戦が濃厚となります。やはり緊張するのでは?

緊張って何ですか? 僕の辞書に緊張の文字はありません!

(※ここで取材を間近で見学していた野口選手が乱入します)

野口選手
よく言うよ~。聞いてくださいよ、コイツ悪童なのに大事なところで緊張しーで、大学の時のインカレ決勝(全日本大学サッカー選手権/北川選手と野口選手は当時3年生)の前日、1時間しか寝ていないんですよ、緊張し過ぎちゃって!

北川選手 (ニヤリ)

野口選手
でも、その決勝(2016年12月)で、コイツ、ハットトリック(日本体育大戦、8-0勝利)してんです。バケモノでしょ? 悪童で、緊張しーで、バケモノ!

北川選手 (ニヤリ)

―ナイスコンビです!

北川選手
ワタルはオレの面白いところを引き出してくれる存在です。

―では、バケモノの今後の暴れっぷりに大いに期待します。

北川選手 (ニヤリ)

文・島田徹 写真・筒井剛史

(次回シマダノメ『深掘りインタビュー』の第15回目は10月中旬にアップ予定。登場する人物は?お楽しみに!)

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