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シマダノメ
深掘りインタビュー!第13回
髙橋大悟選手

シマダノメ 深掘りインタビュー!第13回 髙橋大悟選手

『シマダノメ 深掘りインタビュー』の第13回目は、8月半ばにJ1・清水エスパルスからの育成型期限付き移籍で加入、第21節のヴァンラーレ八戸戦で鮮烈デビューを飾った髙橋大悟選手の登場です。小柄でどこか可愛らしさを感じさせる20歳の若者の顔と、厳しい世界に身を置くプロ選手としての顔。その2つの表情が見えるインタビューとなりました。(取材日=2019年9月5日)。

―ギラヴァンツ北九州でのデビュー戦となったヴァンラーレ八戸戦(9月1日、3-0の勝利)で、池元友樹選手の先制ゴール(38分)につながる左足シュート、そしてその1分後に自身で追加点、さらに81分に同じく新加入の北川柊斗選手のダメ押しゴールをお膳立て、と3ゴールすべてに絡む素晴らしい活躍をみせていただきました。

正直、できすぎ。でも、そのくらいはやらなくちゃいけない、とも思ってギラヴァンツ北九州にはやってきました。もちろんデビュー戦ということで緊張感はあったのですが、あの試合の前の練習でも良いプレーができていたので、うまく試合に入ることはできました。

―デビュー戦での活躍を祝福する声もたくさん届いたのでは?

昔からの知り合い、これまでお世話になった方々、そして清水でのチームメイトからたくさんの連絡をいただきました。本当にうれしかったですね。

―その八戸戦について。あくまで見た目の印象ですが、ボールに触る回数自体は少なかったように思います。

そうですね、特に前半は。そこはすごく反省している点ではあります。もちろん、試合の展開として相手にボールを持たれる時間もありましたし、加入後の練習で味方との連係はある程度のところまでできるようになっていたのですが、実際の試合になると少しずつズレているところがあって、そういうことが原因にもなって僕がボールをうまく引き出せなかったというところはあります。でも、そういう中でも3得点に絡めたということで、自分の中ではホッとしているんです。

―では初ゴールについて。利き足とは逆の右足のループシュートで決めました。

パスを受けた時のファーストタッチが、失敗したというわけではないのですが、自分がしたかったものとは少し違っていたので、左足ではなく右足というチョイスに瞬時に変えました。あの試合の2日前の練習で、それは左足でのものでしたが、同じようなループシュートを決めていて、そのイメージが頭に残っていたので、右足ではありましたが、同じループの選択をしました。

―プロ初ゴールは今季、清水の一員として戦ったルヴァンカップ・グループステージ第6節のジュビロ磐田戦(5月22日、2-0の勝利)で、その時も右足シュートだったんですね?

たまたまだと思いますが、プロ1点目、2点目ともに左ではなく、右足で決めているというのは自分でも不思議な感じはしています。磐田戦でのゴールは静岡ダービーということでサポーターの方々も本当に喜んでくれましたし、忘れられないゴールになると思います。そして、八戸戦でのゴールはギラヴァンツ北九州のサポーターの方々への、あいさつがわりにもなるゴール、これもまた僕にとって忘れられないゴールになると思います。

―話を戻して。ループシュートなど、そういう意外性のあるプレーをすることがもともと好きなタイプなのでしょうか?

好きです。相手の意表を突いたプレーをしたいし、それが自分の持ち味だと思っています。

―でも、そういうプレーに固執し過ぎるとうまく行かない時もある?

そうです、最初に失敗したら、その次で取り返そうとして、また失敗。そういうハマり方をします、それが僕の“あるある"の一つでもあります。だから、シンプルなプレーと意外性のあるプレーのバランスは大事にしていますし、それよりも大事なことはチームの約束事をしっかり表現した上で、そういう自分らしいプレーをする、ということですね。

―八戸戦で髙橋選手があまりボールを触ることができていなかったんじゃないか、というさきほどの印象を小林伸二監督にぶつけると「確かにそうかもしれないが、走行距離やスプリントの回数といったデータを見れば、ボールがないところでのチームに必要な仕事をしっかりしてくれたことが分かる」と話していました。

そこはこっちに来て伸二さんにも言われていることですし、僕がプロになって1年半、清水でみっちりと教えられ、特に意識するわけでもなく、無意識のうちにできるようになったことでもあるんです。

―ボールテクニックに優れる選手は、どちらからというと、そういうオフ・ザ・ボールの動きが苦手なところがありますよね。

まさに、高校までの僕はそのタイプの選手でした。でも、それではプロとして生き残っていけないということを学びましたから。

―今は、オフ・ザ・ボールの動きにこだわることに楽しさを覚えますか?

実際はかなりきついんです。でも、そうすることでチームに良い効果が生まれた時は、楽しい、というか、充実した気持ちになれます。

―その動きについて、清水とギラヴァンツ北九州では求められることも違うのでは?

細かいところで言えば、当然、違います。いま、伸二さんから個人的に言われることは、守備のところで、それは清水でのやり方とは違うので、求められることも異なるのは当然です。でも、清水にいた時に先輩方からオフ・ザ・ボールや守備にかかわる基本的なことを教わっていたので、今、異なる役割を求められても焦ることがないんです。少し応用すれば、伸二さんの求めることにもつながっていくので。だから今、清水時代の先輩方に本当に感謝しているところなんです。

―清水では小林監督の下ではプレーしていないんですよね?

そうです。僕が高校生の時に伸二さんが清水の監督をされていて、キャンプの時に僕が練習生として入ってプレーさせてもらっただけです。

―その時の印象と、今の監督の印象に変化は?

まったく変わっていません。サッカーが好きで、サッカーに熱い人。

―小林監督の存在が、今回の移籍の決め手にもなりましたか?

大きな理由の一つですね。とても熱心に誘ってもらいましたから。

―ほかにも移籍を決めた理由が?

はい。例えば、小学生時代から知っているジン(生駒仁選手)の存在も大きい。親友とも言える人間がいるってことは、僕にとってはとても心強いことですから。

―ギラヴァンツ北九州に来て、チームを見て、選手を見て、感じたことは?

どの選手も個性的で、自分にとっては競争し甲斐のある選手ばかりだな、と感じました。これまで自分が積み重ねてきたもので勝負をして出場機会を得ていきたいと思います。

―八戸戦を見ると、左サイドハーフが髙橋選手の基本ポジションになりそうです。そこでのライバルの一人が新垣貴之選手になります。新垣選手は沖縄出身、そして髙橋選手が屋久島出身ということで、南国風と言いますか、性格的に似ている部分があるんじゃないですか?

新垣さんの第一印象は、マイペースな人だなぁ、と(笑)。そこは僕と似ているかな、と思いますね。プレーはリズムが独特で、学ぶべきことが多い選手です。ポジション的にはかぶりますが、そういう性格的な部分からして、一緒にプレーしても波長が合うんじゃないかなと思っているんですよね。

―屋久島の話が出ました。もういろんな人たちから聞かれているとは思うのですが、屋久島の話をぜひ。

僕は中学から神村学園に行ったので、日常生活を送ったのは小学校までということになります。のんびりとした島です。良い所です。清水も海は近かったのですが、雰囲気としてはここ(インタビュー場所はクラブハウスのある新門司マリーナ)の方が似ていますね。

―当然、屋久杉は何回も見ている?

はい。小学校の授業で何回も見に行きました。

―たどり着くのも大変だとか?

いいえ、近いところにもあるんです。遠いのは、おそらく『縄文杉』のことですよ。それももちろん見に行ったことがあるんですが、『屋久杉』といのは樹齢が1000年を超えるもののことで、何本かあるんですよ。

―なるほど。海がきれいなんでしょうから、よく泳いだでしょ?

それはもちろん。でも、クロールとかバタフライとか、競技用の泳ぎはほとんどしませんでした、楽しくないですから。もっぱら、流木に乗ったり、潜ったり、そういう遊び方をしていました。

―そういう自然豊かな島に小学生のチームはいくつありましたか?

僕らの時は4チーム。それぞれ所属メンバーが少なくて、お互いに選手の貸し借りをしないと試合ができない、なんてこともありました。

―所属していたのが『宮浦SSS』というチームで、そこでのプレーが評価されて、中学からあの有名な神村学園中学に。中学は寮生活ですよね?

初めて家を離れて生活したので、本当に寂しくって。加えてサッカー部の練習もきつくて……。時が戻ってもう一度選べるんなら、別のコースを選びたい(笑)。

―そんなにきつかった?

その中学時代と高校時代があるから、サッカー選手としての今の自分がある、というのはよく分かっていますし、後悔もしていません。その上で、「もしあの時代に戻ったなら」という仮定の話をするなら、違う選択をしたいなって思います。それだけきつかった。身体的にも精神的にもです(笑)。

―最近、屋久島に帰省されたのはいつですか?

今年の5月。記録的な大雨でかなりの被害が出たので、心配になって帰りました。実家に被害はなかったのですが、島全体としてはかなり被害が出ました。ちょうど、磐田戦で初ゴールを決めた後の帰省だったので、そういう意味では僕が島の方々にできる激励になったのであればうれしいんですけどね。

―帰った時は「初ゴール、おめでとう!」の声が?

そう言ってくれる人もいましたが、ただ単に「よく帰ってきたな。おかえり」という言葉も多かったですし、逆に「まだまだ、だな」と愛情ある厳しい言葉を掛けて下さる方もいらっしゃいました。

―帰省は、北九州からの方が清水にいた時よりは楽になりますね。飛行機というルートもあるんでしょうが、船だとどのくらいの時間が必要ですか?

鹿児島市内の港から、フェリーだと4時間、高速船だと2時間です。結構、大変なんですが、海のルートもなかなかのもので、屋久島って、2000メートルくらいの山があるので、遠くから見てすごく目立つんです。隣にある種子島が平たんな島なので、余計に目立つ。その独特な形の島が近づいてくると「ああ、帰ってきたなぁ」って感じるんですよね。ホント、良いっすよ。

―サッカーの話に戻りましょう。髙橋選手と一緒に、北川選手、椿直起選手も新たにギラヴァンツ北九州に加わりました。

ほかの2人とも当然、仲良くさせてもらっています。僕も移籍は初めてですが、椿はプロ1年目ということに加えて初めての移籍ということで、特に精神的にはきついはずなので、うまくサポートしてあげたい。僕も清水での1年目、先輩方にたくさん助けていただいたので、同じようなことができるかどうかは分かりませんが、できるだけのことはしてあげたい。サッカーのことは何か言えるような立場にまだないので、サッカー以外のところでのサポートに努めたいと思います。

―北川選手は?

プロになっての年数は同じなのですが、年上でいろいろな経験を積んできているので、とても安心感があります。また、とても優しくて、でも、おちゃらけた部分もあって、とても接しやすい人です。この前の八戸戦の僕のアシストも、シュウト君(北川柊斗選手)が、あの難しいシュートを決めてくれて、僕にアシストをつけてくれたようなもので、感謝しています。

―いま、髙橋選手にある課題は?

プレーに波をつくらないこと。例えば、八戸戦では前半、ゴールを決めるまではあまり良いプレーができなかったのですが、そういう波をなくしたい。どの時間帯、どの相手でも、常に良いプレー、相手が怖がるプレーができるような選手になりたいんです。

―髙橋選手は、いろいろなことができる選手だと思います。ギラヴァンツ北九州のサポーターはこれからのゲーム、髙橋選手のプレーをどういうふうに楽しめばいいでしょうか?

僕自身はサッカーが大好きで、常にサッカーを楽しみたいと思っている人間です。ですから、「タカハシ、今日も楽しんでるか?」っていう目で見てもらえれば、と思います。

文・島田徹 写真・筒井剛史

(次回シマダノメ『深掘りインタビュー』の第14回目は9月末にアップ予定。登場する人物は? お楽しみに!)

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