SHIMADANOMEシマダノメ
シマダノメ Season4
第1回 深掘りインタビュー
前川大河 選手
『シマダノメ 深掘りインタビュー』も今回からSeason4へ突入。シーズン初回に登場するのは加入2年目でキャプテンを務めることになった前川大河選手です。キャプテン就任までの経緯にはじまり、今季のチームの魅力、もちろん個人的な話題までを深掘りしてきました。 (取材日/3月25日)。
―まずはキャプテン就任の話題から。天野賢一監督からいつごろ就任を打診されましたか?
開幕の1週間前くらいですかね。
―島原キャンプ打ち上げの際にホテルの関係者に向けてチーム代表としてあいさつをされていたので、キャンプ中にオファーがあったのだろうと思っていましたが、意外にもギリギリでの打診だったんですね。どういう感じでオファーされたのでしょうか。
普通に「キャプテンをやってほしい」と。ただ、その前から「今年はチームリーダーとして頑張ってほしい」とは言われていました。
―天野監督から聞いた前川選手をキャプテンに指名した理由は「ピッチ上で攻撃はもちろん守備でも存在感を発揮できる選手だから」「大人しい感じに見えますが、内には熱いモノを秘めている選手だと思っています」というものでした。
なぜ自分なのかの具体的な話はなかったんですよね。
―それでも天野監督は「大河は快諾してくれた」と。オファーを受けたその場で返事をしたのですか、日を改めての返事ではなくて?
はい、その場で。悩むとかはなくて、「言われたら、やるしかない」と思いましたから。
―過去にキャプテンを務めた経験は?
小学生の時だけです。それも、一応キャプテンね、みたいな感じでした(笑)。
―それなのにキャプテンを即決で受けた!
責任は重いだろうし、さぼれないだろうし(笑)、大変さは想像できるから相当な覚悟が必要だろうとは思いましたが、それでも、なかなかなれる立場じゃないし、やってみたいな、と思いました。
―「やってみたい」と思わせるモノは何でしょうか?
やっぱり去年のことが大きい。成績もそうだし、チームとしてのまとまりとかを含めた力強さ、たくましさが物足りなかったと感じていて、それを何とか変えたい、と。もちろん、変えるのはキャプテンを務めなくてもできることかもしれないけれども、それを先頭に立ってやってみたい、と。
―普段、取材している時の前川選手のイメージはシャイ、大人しい、というものだったので、正直、今回のキャプテン就任のリリースを見て驚きました。
自分でもそう思いますし、そう感じられることも理解できます(笑)。
―これまで複数のチームでプレーしていますが、その時にキャプテン就任のオファーが来ていたら受けていましたか?
実際にはなかったのでどうしたかは分かりませんね。やってくれ、と言われたらやったかもしれないし、でも、今回のようにすぐに返事はできなかったかもしれません。天野監督に言われてすぐに返事したのは、僕の中でチームを変えたいという思いがあったこと、それから僕の中に昨年までにいろいろな経験をして自信を持てる部分が生まれていたから、でもあるでしょう。
―いま、おっしゃった「いろいろな経験」の中には、去年の悔しさが含まれている?
そうですね、でも悔しいという以前の問題というか、頑張る以前の問題というか。個人個人で何とかしようという思いは当然あったのですが、それがチームとしてのエネルギーとか力になっていたかと言えばそうではなかったと僕は思っています。
―前川選手をサポートする副キャプテンはGK田中悠也選手(21歳)、DF河野貴志選手(25歳)、MF六平光成選手(31歳)、FW髙澤優也選手(25歳)です。彼らを指名した理由を天野監督は「年齢とポジションのバランスを考えた」とおっしゃっています。そのあたりからも、天野監督はチームづくりにおいて一体感や結束力を大事にしているのだろう感じました。そして逆に言えば、昨季はそこが物足りなかった、ということでもあるのだろう、と。
そうですね。去年は選手それぞれの思いがチームにうまく還元できていなくて、だから苦しい時になかなか修正ができなかった、そのエネルギーが足りなかった、と僕は思っています。
―さて、 キャプテンとして、どうやってチームをまとめていきますか?
まず練習からプレーで引っ張る、ということ。特に若いチームなので、僕ら中堅を含めて年齢が上の選手が当たり前のように厳しく、真摯にプレーしないと若手はついてこないだろうし、そうならないと、まとまりも出てこない。あとは雰囲気づくり、環境づくりも大事だと考えています。
―雰囲気、環境づくりとは?
まず練習で100パーセントの力を発揮しなければいけない、という雰囲気をつくる。そして、それぞれの選手が思っていることをみんなに向けて話せる環境、伝えられる環境をつくりたいし、選手がいまどう感じているのか、どう思っているのかを、僕が天野監督に伝えていくことも必要だろうと考えています。
―プレーで引っ張ることは今までの姿を見ていても十分にできるだろう、と思います。でも、シャイな前川選手が「伝える」という作業を十分にできるのかが心配です。
言葉を使ってのコミュニケーションが得意ではないことは自分でも分かっていますが、チャレンジしていきます。それと、僕がそういうことが得意じゃないというのはチームメイトも分かっているんでしょうね。(髙澤)優也も練習で厳しいことを言ってくれますし、(藤原)広太朗さんも積極的に声を出してくれているし、ミツさん(六平光成選手)も去年よりもかなり頻繁に声掛けしてくれています。
―頼れる選手がいてくれる。
はい。全部自分でやってやろうとは考えていません。そんな能力が自分にないことも分かっていますから。人に頼ることが悪いことだとは思っていませんし、本当に頼れる人が揃っているチームなので、積極的に頼って行こう、と。
―過去に所属したチームのキャプテンで参考にしたいと思う選手はいますか?
やっぱり岩尾憲選手(浦和レッズ)ですね。
―徳島ヴォルティスに在籍していた時のキャプテンですね。どこがキャプテンとして素晴らしいと感じていたのでしょうか?
全体を見ているところ。それは試合、練習のピッチ上にいる時だけではなく、ピッチを離れた時も、です。あとは、さっきも話に出た「伝え方」の部分ですね。岩尾さんにもともとそういう才能があったのかもしれませんが、いろいろな本を読んで勉強するという努力もしていました。そういうところも含めて真似したいですね。
―過去に複数のチームでプレーしていますが、いずれもセレッソ大阪らの期限付き移籍という形での在籍でしたが、昨季は北九州へ完全移籍の形で加わりました。期限付きと完全で気持ちの部分で何か違いがあったのでしょうか?
そんなに変わらないだろうとは思っていたのですが、「覚悟」という部分では昨季の方が強かったと思います。覚悟を持っていただけに、昨季のことが悔しくてしょうがなかった。自分は何もできなかった、という悔しさですね。
―少し話を変えます。前川選手はどういうサッカー少年だったのでしょうか?
正直、何も考えていなかったような(笑)。感覚的というのか…、とにかく、シュートも、ドリブルもパスも全部をうまくやりたいと思っていましたよ。
―そのための自主練もしていた?
自主練も「練習」だ、という感覚すらなかった。本当に「サッカーは遊び」という感覚だったように思います。
―そういう感覚はサッカーをプレーすることが職業になった今も残っていますか、今はどういうところにサッカーの面白さを感じていますか?
小さいころに持っていた「楽しみたい」という感覚は今も残っていると思います。だから、パスが通り、ドリブルが成功したらうれしいし、楽しい。ほかにも、宮崎戦の2ゴール目のようにチームとしての狙いをしっかりと表現して結果が出ることにも面白さを感じますし、逆に失敗した時も、面白いというか、それもサッカーだし、という感覚があります。
―パスやシュートが失敗した、試合で負けた、ということも楽しむ。悔しがるのではなくて?
悔しい。でも、それを引きずるとか、それでヘコむことはしないようにしています。反省はするけれど、僕はそういう感情になるよりは、次に向かった方がいい、次に成功するためにどうしたらよいかを考えるタイプです。
―オフの時間はどのように過ごしていますか?
家にいることも好きなので、テレビを見たり、ゲームをしたり。と言っても、完全なインドア派というわけでもなくて、新型コロナ感染には十分に気を付けながらブラっと外に出かけることも好きです。ご飯屋さんに行ったりとか。
―食べることは好き?
好きです。
―コロナ対策としてグループでの食事は制限されている現在だと思いますが、そもそも「おひとり様」は大丈夫なタイプですか?
さすがに焼肉店へ一人で行くことはありませんが、カフェ、定食屋さん、パスタ屋さんとかは平気です。
―北九州の食に満足していますか。
はい。海鮮系、肉類、野菜、なんでもおいしいですよね!
―うどんは関西とこちらでは出汁からして違うでしょう?
うどんは大阪にいる時からそんなに食べていませんから、違いが分からない…。
―大阪の人はうどん好きだと思っていました。言葉も含めて前川選手は「大阪人」をあまり感じさせませんよね?
それはよく言われます(笑)。
―大阪弁もあまり出ないようですし。
いや、使っていますけど、僕が生まれ育った摂津市がコテコテな大阪弁を使うエリアじゃないからかな。
―またギラヴァンツ北九州での話に戻ります。天野監督が目指そうとしているサッカーについて。
天野監督は特に攻撃時のポジションの取り方にこだわりを感じます。ボールをいかに効果的に前に運べるかという視点でのポジションです。そのことも含めて攻撃にかかわることの練習や話が多いように感じています。もちろん守備の練習もするし、話もありますが、攻撃を主体に物事を考えているように思います。
―AC長野パルセイロとのホーム開幕戦、前川選手はコンディションが整わずスタンドから観戦することになりました。あのゲームをどう見ていますか。
もったいなかった、と。最初は流れが良かったのですが、悪い流れの時間で我慢できずに1点を取られました。その失点でかなりテンションが下がったように僕には見えました。それがもったいなかった。
―ホーム開幕戦のあとのテゲバジャーロ宮崎へ向けた準備期間で前川選手が特に意識して取り組んだことは?
練習の強度が一番大事だと思ったので、「厳しく行こうよ」という声掛けになったと思うし、自分がプレーする時もそこを意識していました。
―第2節の宮崎戦は途中出場でしたが、今季初出場となりました。
僕が入った時は1-1の同点で、もう1点を取らないといけない状況だったので、何とか攻撃を活性化しないと、という気持ちで入りました。
―キャプテンマークを腕に巻いての初めてのプレーでもありました。
やっぱりこれまでとは少し違う感情でピッチに入ったと思います。「やらなきゃ」という思いのレベルが違いましたね。
―宮崎戦の2ゴール目が素晴らしかった。なぜ、あの素晴らしいゴールが生まれたのでしょうか。
選手間の距離感が良かった。ワンタッチパスを連続できたことが良かった。あとは、動き直しというか、パスを出してそこで終わりではなくて、次のプレーに向けてまた動く、ということができたからこそのゴールでした。
―あの得点が天野監督の言うところの「プロアクティブ」なんだろうと思いました。
そうですね、ポジショニングを含めて、選手一人ひとりが相手の状況を見ながら判断、決断していく。開幕までにチームとして取り組んできた、チームのベースになるところを形として表現できたゴールですし、それが実際の試合で表現できたことは、選手一人ひとりの、またチームにとっても自信になりました
―最後に、今季のギラヴァンツ北九州のどこを楽しめば良いか教えてください。
攻撃的なスタイルを目指しています。だから1点を取られても2点を取り返すようなサッカーをしたいと日々の練習から取り組んでいるので、そこをまずは見てほしい。もちろん守備もしっかりしますが、ボールを奪われたらすぐに奪い返しに行く攻撃的な守備をしたいと考えているので、そこも楽しんでほしい。そういうサッカーをするにはメンタル的にも強くなくてはいけないので、そういうたくましさも感じてもらえたら、と思います。簡単なシーズンにはならないと思うので、皆さんの後押しは僕らにとって大きな助けになります。熱いサポートをよろしくお願いします。
文・島田徹 写真・筒井剛史
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