SHIMADANOMEシマダノメ
シマダノメ
第3回 深掘りインタビュー
内藤洋平選手
『シマダノメ 深掘りインタビュー』の第3回目は今季のチームキャプテンに就任した内藤洋平選手の登場です。「キャプテン内藤」「ボランチ内藤」、そして今季に懸ける思いを深掘りしました(取材日=2019年2月25日)。
―キャプテン就任、おめでとうございます。過去に所属したチームでキャプテンを務めた経験はあるのでしょうか?
小学校の時、少年団チームでキャプテンでしたが、果たしてキャプテン経験があると言っていいのか……。中学、高校、そして大学とずっと副キャプテンでした。自分でも『副キャプテン・キャラ』だ、と、そしてキャプテンになるには何かが足りないないと思っていました。
―『副キャプテン・キャラ』とは??
練習と試合でのプレーでチームメイトに認めてもらう。そして、誰に対してでも強い口調で、何でも言えるタイプ、と僕は理解していますが。
―「キャプテンになるには何かが足りない」とおっしゃいましたが、何が足りないと?
それはギラヴァンツ北九州に加入してから昨年までもそうですが、リーダーとしての自覚が足りなかったと思います。いつも考えるのは自分のこと。どういうプレーをすれば自分が目立てるのか。うまくなるにはどうすれば良いのか。何を磨けばポジションを手にすることができるのか。すべてにおいて自分主体で物事を考える。若い選手は、それでいいのだと思います。そうすることで実力が伸びる、という側面も確かにありますから。でも、リーダーやキャプテンというのは、それにプラスして、チームのことも考えて行動し、発言しなければならない。個人のことも当然、考えるんだけれども「自分が目立つため」という視点ではなく「チームが良い方向に行くため」に自分は何をすべきか、どうすべきかを考える。それがリーダーとしての自覚の表れだと思うのです。
―そういう考え方ができるようになったのが昨季の途中からなんですよね?
そうですね。試合出場機会を得るためには監督に自分の事を評価してもらわなければならないということで、初めはこれまで通り自分を中心においてアピール方法を考えていましたが、自分の年齢を含めたチーム内での立ち位置を考えた時に、チームのために何をするべきかを考えて行動することで、僕個人も評価されるんじゃないかという考えに変わっていったんです。
―そういう自覚がすでに芽生えていたから今季のキャプテン就任にも慌てなかった?
そうですね。やるべきことは変わらないですしね。もちろん、発する言葉により大きな責任がついてくるということは十分に意識していくつもりです。
―理想のキャプテン像は?
「強くあること」が大事だと思います。「強さ」と言っても捉え方、考え方は人それぞれだと思いますが、僕が考える「強さ」は、引っ張って行く力、そしてチームメイトやスタッフと一緒に笑える力も「強さ」だと思うんです。特に苦しい時に笑えるって、強くないと笑えないでしょ? もちろん、「笑う」と言ってもふざけるとかそういう意味ではないですよ。
―そういう強さを身に付けるために必要なことは?
自分なりの考え方にしっかりとした軸があること。軸があれば良い決断もできる。良い決断ができるという自信が生まれくれば、それが強さにつながっていくと思います。
―副キャプテンに池元友樹選手と川上竜選手が就任しました。今日の練習時も3人が並んで話をしながら走っていましたね。
今日話していたのは、どうやったらスタジアムに足を運んでいただいたサポーターやファン、街の方々と一体感を持てるか、というアイディアについてです。イケさん(池元)とはチームメイトとしての時間も長く、これまでもサッカーの事以外の話もよくしてくれ、また聞いてもくれる人なので頼りにしています。リュウ(川上)は去年キャプテンを務めて、僕らとはまた違った悔しさを感じているはずで、その悔しは今年、また来年以降も晴らせると思うので、そのためにも彼がしてきた経験を僕にどんどん伝えてほしいし、僕もどんどん聞いていきたいんです。
―チームのことを第一に考える内藤選手ですが、個人的な目標も聞いておきたいんですよね。特に得点に絡む結果を残したいとか?
僕は過去6シーズン、ギラヴァンツ北九州でプレーさせていただいていますが、シーズンの最多ゴール数は「2」なんです。やっぱり、中盤でプレーしているわけですし、やはり物足りない数字です。チームとして結果を残そうと思うと得点力が高くないといけないですし、得点力を上げるためには誰か一人の選手に頼るのではなく、個人個人が少しずつ結果を残すことも大切だと思うんです。特に今季は自分たちからアクションを起こしてのアグレッシブなサッカースタイルを追求するわけで、その中で自分のようにボランチでプレーする選手にはどんどん相手ボール前に顔を出して行くことが求められますし、それは当然、得点に絡んでいく、ということですからね。
―では目標数値は昨季までの「2」を越えるのは当然として「5」あたりとしますか?
いいえ、それでは不十分です。この2年間の反省もあり、今季は地をはいつくばってでも変化と成長を遂げなければならないという状況なのです。「5」とは言わず、二けた得点を目指します。それくらいの気持ちがないと変わることはできないと思いますから。
―ボランチの位置からゴール前に顔を出すのは体力的にもかなりの負担になりますね?
これまでボランチでプレーしていた時の自分を振り返った時、相手ゴールから離れたところでのプレーが多かった、という反省があります。それは当然、チームの戦い方も影響しているわけで、逆に今季は自分たちから相手ボールを奪いに行くというスタイルにチャレンジしているので、高い位置でボールを奪える場面が増えるということ。そういうアグレッシブな守備をするために陣形をコンパクトにする、そのために最終ラインを含めた全体的なラインは上がるので、僕らボランチの位置も自然と高くなるので、チームスタイルをうまく表現できれば、僕らが相手ゴールに向かう体力的な負担はそれほどでもないはずです。実際に練習試合ではそういう形で相手ゴールに向かう場面をつくれていますし、手ごたえも感じています。
―理想のボランチ像は?
まず好きなボランチの名前を挙げるなら、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)でプレーしていたポール・スコールズ選手ですね。子どものころから好きでした。子どもの時の僕のポジションはボランチではなくもっと前の方だったんですけど、スコールズ選手の「地味だけど、とても効いている」というところが大好きでした。
―ボランチの理想形は?
理想を言うなら完璧なものを挙げたいから、「ボールを奪えて」「得点を取れて」そして「最後まで走り続けられるボランチ」ということになります。
―3つの要素の中で今の一番の課題は?
全部足りない!
―今季から背番号が「18」から「8」に変わりました。その経緯は?
クラブから「8はどうだい?」とすすめられて、最初は断ったんです。これまで付けていた「18」に愛着もありましたから。でも、再度すすめられた時に思ったんです。心機一転という意味でいいかも、と。昨季までのJ3での2年間を振り返っても、今季は地にはいつくばってでも何としても這い上がっていかなければいけなくて、そのためには個人もチームも大きく変わらなければならない。変化という意味で、背番号を変えることは一つのきっかけになるかもしれないと考えて、「8」をいただきました。
―「8」はかつて所属していた八角剛史選手がつけていた背番号ですね。
プライベートでも交流があるので、今回の背番号変更についてはもちろん連絡しました。ハチさんも喜んでくれましたよ。
―今季のチームは選手が大幅に入れ替わりました。新加入選手の中で一番気になる選手は誰ですか?
気になる? う~ん、岡村和哉選手のケツが半端なくデカいというのが一つ気になる点ではるんですが(笑)、まあ、それは置いといて、う~ん、やっぱり新垣(貴之)かな。独特の雰囲気、間合いを持っています。普段もそうですし、ピッチの中でもそう。物おじせずに、そういう特徴を生かしてどんどん伸びていってほしい、と思う選手ですね。僕の中ではアルゼンチン代表でイタリアのユベントスでプレーしている(パウロ・)ディバラ選手とイメージが重なります。左利きというのがいい。やっぱり左利きには憧れます。一緒にはプレーしていませんが、高校(桐光学園)の先輩にはシュンスケさん(中村俊輔選手/ジュビロ磐田)、藤本淳吾さん(ガンバ大阪)もいますからね。
―新垣選手の独特な雰囲気は、沖縄出身のせいでもあるんでしょうか?
高校が流通経済大柏で、大学も流通経済大。要するに中学までしか沖縄にいなかったけど、今も彼の体の中に流れるのは「沖縄時間」だと思います。それくらい、ゆったりしています。
―最後に、少しさかのぼった話を。昨季の「J3最下位」という現実に対して内藤選手はどういう心境だったのでしょうか?
寂しかった。まずは応援してくれている街の人たちに悲しい思いをさせたから。そして、踏ん張らないといけないのにチームとして踏ん張れなかった。そういう時こそチームがまとまらなければいけないのに、それができなかったことをとても寂しく感じました。
―昨季の最下位の要因を探って行くと、まとまりのなさ、というところに行く着くのでしょうか?
理由というのは一つではないと思います。結果が出ないことで監督が責任を取りましたが、当然、大きな責任は選手にあるんです。でも、選手はどこか言い訳づくりをしていたというか、常にというわけではありませんが、どこかに逃げていた部分があったから、シーズンを通しての結果が、最下位という結果になったのだと思います。
―今季始動を迎えるにあたって、「こうしたい」「こうしてやろう」と考えていたことはありますか?
チームと街のつながりを深めたい、という思いがあります。北九州の街にギラヴァンツ北九州というクラブがあり、立派なスタジアムもあるのに、つながりが浅い、一体感を感じられない。街とクラブ、チームを一体化したいという気持ちは去年までの戦いを振り返って強く思ったことです。
―クラブと街が一体化するために必要なことは?
街の人との触れ合いの場所となるイベントに顔を出すことも大事で、それにも積極的に参加するつもりですが、やはり僕たち選手がやるべきことは勝つこと。結果を残すことです。そのために日々の練習から全力で取り組む。そういう姿を見てもらうことで、街の人たちとの距離も縮まって行くんだと思います。
文・島田徹 写真・筒井剛史
(次回シマダノメ『深掘りインタビュー』の第4回目は3月中旬ごろにアップ予定。登場する人物は? お楽しみに!)
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