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シマダノメ 第9回
深掘りインタビュー 野口航選手

シマダノメ 第9回 深掘りインタビュー 野口航選手

『シマダノメ 深堀りインタビュー』の第9回目は、加入2年目の今季に入ってプレーの精度と安定感が高まっているMF15野口 航選手の登場です。ケガでスタートが出遅れた今季序盤から定位置をつかむまでの気持ちの変化と、プレーや判断の質が高まった理由やきっかけなどを深掘りしました。今の野口選手、心も体も前ががりです!(取材日=2019年6月20日)。

―いろいろな選手から「今季の練習はかなりハードだ、キツい」という声が聞こえてきます。

僕はそうでもないですけど…、エッ、おかしいんですかね?

―実際、ハードに鍛えられているから『よく走るチーム』になっていると思うのですが?

あ、そうですね。確かにハードではあります。オフ明けの日が2部練習、その翌日ともう一日、筋トレやフィジカルトレーニングが組み込まれていますしね。でも、僕はもともと筋トレが足りないからもっとやらなきゃ、と思っていたので、ありがたいんです。

―ハードだけれども、自分から求めてやっているので精神的にキツくない、ということなんでしょうね。

それもあるでしょうし、いまチームが出している結果というのも、ハードな練習をしているからこそ、だとの認識があるので、おそらく、僕だけではなくチームのみんなが前向きに厳しいトレーニングに取り組んでいると思いますよ。

―筋トレを含めてハードな練習によって体に変化は?

ほかの人に比べたらダメダメですが、以前よりは筋肉もついてきたと思いますし、実際に体重は去年より約2キロ増加しています。

―今年はケガで出遅れましたが、どんな負傷だったのでしょうか?

開幕1週間前の練習で右足首を痛めました。思ったよりも回復まで時間がかかって、今季リーグ戦での初出場は4月末になってからでした。

―そうでした。4月27日の第7節・秋田戦で右サイドバックとして先発フル出場を果たしたんでしたね。つまり第6節まで試合に出ることができなかったわけですが、そこまででチームは4勝1分け1敗と好調なスタートを切っていたわけですから、焦りもあったのでは?

相当焦っていましたね。自分が出遅れた中でチームは好調、ホントに死に物狂いでやらないとポジションはないな、と。

―特に両サイドバックは今季加入の新井博人選手と打越大樹選手あたりが務めていましたから、そういう意味でも焦りはあるんだろうな、と。でも、練習を見ていてもそういう焦りの表情が見えなかったんですよね?

そうですか?いや個人的には焦りまくり。でも、感情が表に出ない、ということはよく周りの人から言われることでもあるんです。自分で抑えている、という意識はないんですけどね。確かにピッチの中、外にかかわらず怒ることはほとんどないですかね。高校(熊本の大津高校)のときはキャプテンを務めていて、その時は仲間には、かなり周りに厳しい物言いで要求していたとは思います。ただ、怒る、声を荒げる、という感じじゃなかったと自分では思っています。

―試合でも実にクールにプレーしているように見えます。

試合に関して言えば、相手のプレーやレフェリーの判定に対して感情をあまり表に出さないことは、悪いことではないと思いますが、ただ、意識的にそうしているかと言われれば、実はそうでもないというところです。

―最近の野口選手のプレーを見ていると、ものすごく高い集中力でプレーしているように感じますし、だからなのか、判断が早く、さまざまなプレーの質が高いように見えるのですが、そのあたり野口選手自身はどう感じているのでしょうか?

今シーズンは、周りがよく見えるようになってきました。前線の選手や逆サイドの選手の動きが見えるようになってきたんですよね。あとは、僕は最終ラインの選手なので、ボールを奪われたらピンチに直結するので、判断は早くする必要がありますし、高い集中力を持ってプレーするようには心掛けています。

―野口選手がプレーしているサイドバックというポジションの役割が去年とは異なり、今季は攻撃力の発揮がより求められていることも、野口選手のプレーの変化に影響しているのかなとみていたのですが?

今年は攻撃に入ったら両サイドバックはフォワードと同じくらいの高さにポジションを取ります。そういう面では、自分の特徴でもある攻撃力をより出せていると思いますし、そうやってプレーすることで自然と積極的な考えや姿勢になるので、それが判断とかプレーの質の面でも良い方向に働いているのかもしれません。

―高い位置を取るということに不安はありませんか。つまりリスクを冒すことに対して。

確かに攻撃から守備に切り替わった時には最終ラインまで戻るのに遅れが出ますが、そこはボランチの選手がしっかりカバーしてくれています。つまりチームとしてそこの手当ては考えられているので、高い位置でプレーすることに不安はありません。

―高い位置でのプレーが増えていることも関係しているとは思うのですが、今季の野口選手は目の前にいる相手選手に向かって仕掛けていく場面が増えたように感じます。

はい、確かにそれは高い位置にいるからこその選択だと思います。自分が相手を一人かわしてボールを前に運ぶことで局面が大きく変わります。だから、行けると思った時には積極的に仕掛けるようにしています。でも、その仕掛けのすべてがうまくいっているかと言えばそうでもなくて、行くべきか、それとも横や後ろにボールをつけてもう一回やり直すのかの見極めのところの精度はもっと上げる必要がありますね。

―ルーキーイヤーの昨季と2年目の今季、自分の中で何か変化を感じますか?

今季一番感じているのは、自分の立ち位置、ポジショニングによって、ボールを受けた時の選択肢がこうも変わるんだ、ということなんです。去年まではボールを受けてからのプレーばかりを考えていたのですが、今年は相手と味方を見ながら、ボールを受ける前のポジショニングをすごく意識するようになったんです。それが、さきほど話した、前がすごく見えるようになった、というところにつながっているんじゃないかと思います。

―90分を通しての集中力に関してはどうですか?

やはり最終ラインの一人としてプレーすることの意味というか、それを改めて意識するようになって、常にアラート(警戒)にいるようにはしているつもりです。あとは、最終ラインのみんなで声をかけあって、4枚が連動して動くということへの意識が高いし、そのためにセンターバックのオカさん(岡村和哉選手)やテラくん(寺岡真弘選手)が常に声をかけてくれているので、それも僕自身の集中力の維持につながっていると思います。

―左右両サイドでプレーできるのが野口選手の強みでもあるのですが、今季の左右の比率は?

第10節の熊本戦だけ左、あとは右サイドバックとしてプレーしています。

―左サイドでプレーする時に隣にいるのは寺岡選手、右でプレーする時は岡村選手が隣にいるわけですが、その2人の声掛けに違いはあるのでしょうか?

2人とも、良い意味で厳しい声掛けをしてもらっています。さっき話したポジショニングの話にもつながるんですが、2人は経験もあるので、一つひとつのプレーへのこだわりがすごいんです。特にポジショニングはボールが少しでも動くたびに細かく修正していて、僕の場合は意識するようになったと言ってもそこがまだまだなので、僕一人動きが遅れることがあります。声のトーンとかは多少違いますが、より高いレベルのものを求めるという意味で、2人の声掛けは共通しています。そしてそういう2人の存在が、今季の失点数の少なさに大きく影響していると思います。

―寺岡選手あたりの声掛けはかなり厳しいトーンのものですよね?

確かに厳しいです(笑)。ただ、自分、怒られ慣れているので!僕が卒業した大津高校は上下関係がとても厳しかったですし、3年間の寮生活で先輩といる時間も長かった。平岡和徳先生(現・熊本県宇城市教育長、大津高校サッカー部総監督)からも「理不尽なことに対する強さを持て」と言われてきましたし、もちろん先輩の言われることが理不尽というわけではないんですが、そういう中での耐性を身につけながら、人の話を聞く耳を持つ姿勢を備えることができたので、今も厳しいアドバイスを素直に受け入れられるのです。そう考えると、大津高校での3年間は今につながっているなぁ、と思いますね。

―大津高校から筑波大に進学したんですよね?

平岡先生も筑波大の出身でしたから行ってみたいなぁ、と。筑波大では保健体育の教員資格も取ったので、将来的な選択肢として、教える側の道というものも考えています。

―サッカーの話をしていてもとても論理的に考えを表現します。理系的な頭の持ち主ですよね?

理系ではありません。バリバリの暗記系で学生時代を過ごしてきましたから。社会、国語、英語、とにかくノートに書いて書いて書きまくって覚えるタイプでしたよ。確かに頭をフル回転させて何かを考えるようなタイプに見られることは多いんです。でも、考えているように見える時は、実はただボッーとしていることが多いですし、僕はどちらかというと感覚で動く人間です。「あのクロスには狙いが見えましたね?」と記者の方に聞かれるとき、実は感覚に従って蹴っただけ、なんてこともあります。もちろん、そういう時は「ハイ、狙い通りです!」と答えますけどね(笑)。

―今季ここまでのアシスト数は?

リーグ戦ではまだありません。シーズン前には二けたを目標に挙げたのですが……。一つアシストできれば波に乗れるのかな、とは思うのですが、その一つ目までが遠いんですよね。だけど、自分がクロスを上げなきゃチームのチャンスの数も増えませんし、数打ちゃ当たる、ではありませんが、攻撃に出て行ったらクロスを上げ切るということを意識したいですし、クロスの質を高める努力はこれまで以上にしていくつもりです。

―クロスの質を上げるために必要なことは?

まずクロスを上げる回数を増やすこと。それに関して今季は高い位置でプレーすることができているので、まずまず満足できます。一番の課題は上げる前の判断です。ニアに速いボールを入れるのか、点で合わせるようにファーサイドに上げるのか、それともマイナスの角度で上げるのか。その判断を相手と味方両方の動きやポジションを見て素早く判断することが必要で、その判断のスピードと質を上げていきたいと思っています。

―あとはクロスを上げる時の細かい技術にも気を配らないといけないのでしょう。

そうですね、最近、小林監督から言われたのは、クロスを上げる時の軸足の向きですね。上げる方向に軸足を向けるというのは基本的なことで、それは頭では分かっているつもりでも、いざスピードに乗ったドリブルからクロスを上げようとすると、どうしても腰を回すことで方向をコントロールしようという意識が働くんです。そこを監督から指摘されて、軸足を意識して上げるようにするとコントロールが定まるんですよね。そういうところも踏まえて個人練習をしていって、今は徐々にではあるのですが、良いキックのコツというのがつかめている状況なんです。ただ、練習でいくらできても、試合になって相手がいる状況で、それができるとは限らないので、そこはもっと突き詰めて練習を積んでいかないといけません。

―ゴールへの意欲は?

今年は狙っています。今季のプレースタイルだと逆サイドでつくった攻撃の時はゴール前に入ることが求められていますし、実際にここ数試合で自分にシュートチャンスも訪れていますから、あと一歩かなというところまでは来ています。ケンタくん(福森健太選手)の天皇杯(1回戦・徳山大戦)でのハットトリックも刺激になっていますし、本気で狙いに行きます!

文・島田徹 写真・筒井剛史

(次回シマダノメ『深掘りインタビュー』の第10回目は7月中旬ごろにアップ予定。登場する人物は?お楽しみに!)

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