SHINMOJI KININARINYO新門司キニナリーニョ
新門司キニナリーニョ 第2回
辻岡佑真 選手

辻岡佑真選手は13名いる今季新加入選手の内の一人。J2の『いわきFC』からの期限付き移籍でギラヴァンツ北九州の一員となりました。
2月22日の今季初戦、AC長野パルセイロ戦で今季チームのファーストゴールをCKからゲット。守備だけではなく主にセットプレーからの得点にも期待ができるDFです。
1月の始動から開幕を迎えるまでの辻岡選手のトレーニングの様子を見ていて印象に残ったのは、1対1の守備局面で発揮される強靭なフィジカルと精度の高い左足のキック。まずはこのあたりからキニナリーニョしてきました。

「身体については『つくりあげてきた』という感じですね。IPU・環太平洋大学(岡山県)を卒業してから加入した『いわきFC』でプロの世界で戦える身体づくりを本格的に開始しました」
「身体づくりが順調に進んだのは、トレーニング頻度や強度を上げるだけではなく、その質も意識したこと。また食事も重要とのアドバイスをいただき、トレーニング後の補食も意識したことで、トレーニング効果がより高まったからだと思います」
辻岡選手が「右肩上がりで進んだ」と言う身体づくりは、今後も継続して、さらにたくましい身体になることを目指すのでしょうか。
「いまは身体の使い方、各部位の連動性を高めることを意識しています。ギラヴァンツ北九州には優秀なトレーナーさんがいるので、しっかりアドバイスに耳を傾けています」
「ただ闇雲にやるのではなく、自分のどこが弱いのか、またどこがうまく使えていないのかをしっかり理解した上で、トレーニングするようにしています」
強靭なだけにとどまらず高い機能性をも伴う肉体を目指す辻岡選手の取り組みの成果は、今シーズンが進むうちに徐々に確認できるはずですから、ぜひ注目してほしいと思います。
さて、次にセンターバックとして武器の一つとなる、効果的な攻撃につながるフィード、キックについて聞きました。
「キック、特にミドルパスやロングパスには自信を持っていましたが、北九州に来てからしばらくは、その強みを出せない、生かせない状況でした」
「というのも、チームスタイルである丁寧なビルドアップに貢献するために、正確にパスをつながなければいけない、との意識が強くなり過ぎ、ロングフィードを思い切って蹴るという意識が薄れてしまったのです」
「でも今はボールを保持しながら確実に前進させるビルドアップに効果的に参画できるように。そういうプレーが自信をもってできるように優先して取り組んでいます」
「そこに自信を持つことができれば、おそらく近くにパスを付けるべき時と、ロングフィードで一気にボールを前進させる時を的確に判断することができるようになるはずですから」
「さらに自分と前線の選手との関係が試合を重ねるごとに深まれば、左足フィードという僕の強みを十分に発揮できるようになるんじゃないか、とも考えています」

相手最終ラインの背後を一気に突くロングパスや、攻撃の局面を変える効果的なサイドチェンジパスが攻撃面での辻岡選手の重要な貢献ポイントになります。
加えて、相手ゴールへ向かうチームとしての攻撃ベクトルをつくりだす、グラウンダーの縦パスも実に効果的なのです。その縦パスについても聞きました。
「ただ縦パスを入れるだけではダメ。それは増本浩平監督やコーチ陣からも言われていることです。自分が縦パスを出した後に受け手の選手がミスをした場合、その責任の一端は自分にあると考えるようにしています」
「パスの質、タイミング、受け手のどちらの足に向けて出すのか。それらを一つひとつ意識しています。それらが正確であれば受け手もミスなくプレーできる。ただそんな縦パスを出すのは簡単ではないんです」
「簡単ではない」と言う理由を聞いて、なるほどと納得しました。
「グラウンドや天候のことも含めて、いろいろなことを考えているうちに、判断が遅れ、有効な縦パスとなるタイミングを逃してしまうことがあるんです。難しい。いま苦しみながらやっているところです」
機能的な身体づくりにフィードの精度向上。自分の武器だと認識する部分をさらに向上するための取り組みに精を出す辻岡選手に、今季トライして手にしたい新たな武器があるかと聞いてみました。
「自分が守れる範囲、いわゆるプレーエリアを広げたい。自分一人で、相手二人をケアできるような。そのためには自信とかメンタルの部分を充実させる必要があると考えています」
プレーエリアの拡大と『自信』にはどんなつかながりがあるのでしょうか。
「プレーエリアを広げるためには走力を含めたフィジカル能力はもちろん必要です。けれどもそれだけではダメ。自分が持っている速さとか強さを十分に生かすためには的確な判断が必要です」
「的確な判断があるからこそ、ここだと思った瞬間に走り、飛ぶ、そんな動作を躊躇なくスタートさせられる。自分の判断に自信がなければ、思い切って動き出すことができませんから」
「さらに言えば、的確なコーチングで味方の選手を効果的に動かすことでも、自分のプレーの幅が広がるとも考えています」

あふれるパワーに目が行きがちな辻岡選手のプレーですが、そんなプレーを表現するために実に繊細な配慮、意識があり、かなり頭を使って日々のトレーニングに取り組んでいることが理解できました。
「細かいところにまで頭を働かせることが当たり前のようになってきました。いまは普通の感覚でプレーをする、生活をすることが物足りないくらい。でもそれを楽しめている。楽しめるのは目標があるからです」
最後に辻岡選手が口にした「目標」について聞きました。
「短期目標としてはチームでのことになりますが、今季でのJ2昇格を達成すること。長期目標は個人的なもので、J1でプレーできるレベルの選手になることです」

[取材・構成:島田 徹]
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