SHINMOJI KININARINYO新門司キニナリーニョ

新門司キニナリーニョ スペシャル②
長谷川光基 × 大森真吾 × 小林里駆

年齢、加入年、出身地などさまざまな共通項によって選手たちをカテゴライズできますが、今回は出身大学が同じ3選手をピックアップ。前回の池西希SDに続くスペシャル第2弾として順天堂大学出身トリオの気になる素顔に迫って来ました。

―年齢で言うと、小林里駆選手が一番下。小林選手が順天堂大1年時に……、

大森「僕が2年で…、」
長谷川「僕が3年生。一学年ずつ違うんですよ」

―大学時代、それぞれをどう見ていたのか。長谷川選手は小林選手をどう見ていましたか?

長谷川「FC東京のU-18チームで一緒でしたし、リクは高校1年の時からU-18チームの試合に出ていて、チームメイト という感じだったので、もちろん良く知っていました。順天堂大に来ると聞いて『へえ~、来るんだ』という感じで、特に驚きもなく、新鮮味もなく(笑)」

―小林選手は外から見ているといつも淡々としているように見えますが?

長谷川「淡々としているようにも見えますが、どうでしょう、熱いモノも持っているんじゃないですか。知らんけど(笑)。でも、プレーしているときは、負けず嫌いな一面も見えますね。ね?」
小林「ハイ」
長谷川
「あと、少し生意気なところもあります。僕のことを年上と思っていません」

―Jクラブのアカデミーはそういう上下関係がそこまで厳しくないという印象がありますね。

長谷川「いや、年代で違うような気がします」
小林「そうですね、特にハセの代の先輩たちは関わりやすさがありました」

―2学年下なのに「ハセ」と呼ぶんですね(笑)。大森選手は東福岡高校、高体連出身ですから、Jクラブのアカデミー出身者の先輩後輩というところでの姿勢に違いを感じましたか?

大森「確かに入ってすぐのころは少し違うなとは思いましたが、一つ、二つ上の先輩たちとはそこまで気を使うことなくフラットに接することができていたように思います。さすがに3つ上の先輩たちと接する時は少し緊張感がありました」

―大森選手から見て長谷川選手はどんな人ですか?

大森「とても面白い方です(笑)。ハセの代はハセを含めて面白3人組がいて、その人たちと一つ年下の僕らはよくワチャワチャしていましたね」

―外から見ていて「長谷川選手ってお調子者だな」と思うことがたびたびあったのですが、それは間違ってはいない?

大森「正解です、大正解です!」

―第24節のカターレ富山戦。ギラフェス開催ゲームで見事に勝利を飾った試合後、サポーターの前で長谷川選手に誘われて大森選手もダンスを披露していましたね。

長谷川「あれはコイツの歓迎会です。ギラヴァンツ北九州とミクスタでのデビュー戦でしたから」
大森「あれは先輩としての優しさだと理解しました。『早く溶け込めよ』という」

―小林選手が順天堂大に入学した時、2年生の大森選手をどう見ていたのでしょうか?

小林「怖かった。なんか存在感があったし。下からグイグイいけば話してくれたのかもしれないんですけど、あまり後輩と話すタイプではなかったと思うので。先輩という感じがすごくしました」
大森「ちょっと誤解を解くために言わせてもらうと、僕の場合は同期とすごく仲が良いタイプ、いつも同期とつるむ感じだったからだと思います。後輩も、それから先輩と一緒に飯に行くタイプではなかったので」

―順天堂大学 のキャンパスはどこにあるのですか。

長谷川「僕ら3人が在籍した『スポーツ健康科学部』のキャンパスは、JRの駅で言うと千葉県の『酒々井(しすい)』、成田駅の少し南に位置する場所にありました。 」
大森「もちろん学部によってキャンパスの場所は違って、東京も含めていろいろな場所にありました。サッカー部に所属する選手、特に推薦枠の選手のほとんどはスポーツ健康科学部だったので、酒々井のキャンパスで過ごしていました」

―小林選手は見た目の雰囲気で一般学部なのかなと思っていました。

大森「えっ、それはオレはハセと同じに見られたってこと?」
小林「いや、シンゴ君はこっち側の人間ですよ」
長谷川「誰が『あっち側』なんだよ!」

―順天堂大学サッカー部の部員は当時何人くらいいましたか?

大森「おそらく4学年合わせて100人くらい。Aチームは35人くらいでしたね」

―大学を卒業して、ここギラヴァンツ北九州で久しぶりに再会して感じたことはありますか?

長谷川「二人ともそんなに変わっていませんね。ただ、リクは悩んでいるん じゃないかな。大学の時は もっと伸び伸びプレーしていたと 思うけど(笑)」
大森「それは僕も思いました。『リクならもっとできるだろう』、そういうふうには思いました。この 夏に会った時にはそういうモヤモヤを感じているんだろうなと思いました。ただ、ハセは何も変わっていない」
長谷川「オイっ!」
小林「良い意味で変わっていないということでしょ?」
大森「そうそう」

―小林選手は今年加入した時に、プロ3年目の長谷川選手に再会してどう感じましたか?

小林「大学の時のチャラさがなくなったな、と。風格とは言えないまでも、プロとしてやる中で少し落ち着いたかなと思いました。でも、ほんの少しですよ」
大森「確かに。サッカーはちゃんとしている」

―長谷川選手はこの夏に大森選手と再会してどう思いましたか?

長谷川「また少しゴツくなったなと。ただ単純に久しぶりだったからそう感じたのかも」

―大森選手はギラヴァンツ北九州への育成型期限付き移籍を決断する時には、2人から事前情報を仕入れる、あるいは相談をしましたか?

大森「ハセには言いましたが、リクには何も」
長谷川「言ったというけど、ほぼ事後報告でしたよ」
大森「そうですね、ほぼ決めたところで、コンサドーレ札幌の強化部の方に『北九州に知り合いがいるなら相談してみたら』と言われて、一応、ハセに『行くことになりそう』って。本気の相談はコンサドーレで一緒だったコウキさん(大谷幸輝選手)にしていたので、ハセには何も聞くことがなかった(笑)」

―では、それぞれのプレーヤーとしてのすごさを解説してもらいたいんです。DFの長谷川さんから見てFW大森選手のすごさは?

長谷川「安定感のあるポストプレーが特徴だと言われることが多いのですが、オレは万能型だと思っています。裏抜けもできるし、ワンタッチゴールも決められるし、守備も頑張るし。ポストプレーヤーのくくりでは収まらない選手です」

―小林選手はパスの出し手としてFW大森選手をどう見ていますか?

小林「めっちゃ出しやすい。とりあえずシンゴ君にボールを預けておけば、という信頼感があるところがすごい。最後のところは自分で決めるし、でも周りの選手もすごく効果的に生かせるし。僕も万能型だと思っています」

―大森選手が入ることでチームの攻撃が多彩になると期待しているのですが、それは間違いないということですね。

大森「まだ期待に応えられていないので、自分的には非常にマズい状況なんです。毎日毎日、焦っています。早く何とかしないと!」

―大森選手は長谷川選手のプレーをどう見ていますか?

大森「ハセからのパスはすごく受けやすい。ボールの持ち方が良いし、両足で蹴れるので、こっちもボールを受けるタイミングを取りやすい。欲しいタイミングでパスを出してくれる。守りの面では、インターセプトも狙えるし、ポジショニングを含めてすごく頭を使える選手です。サッカー脳はすごく良い」
長谷川「サッカー脳“は”ってどういう意味? 大学でちゃんと単位も取ったし」
大森「めちゃくちゃ勉強ができない、というわけではない。たぶん(笑)」
長谷川
「そういう人間に思わせる、オレ流のブランディングです」
大森「自分の事を良く見せるのが普通はブランディングのはずだけど、ハセの場合は逆ブランディングだね。斬新!」

―小林選手の「DF長谷川」への評価は?

小林「1対1の対応、その時の間合いの 詰め方が抜群にうまいと感じます」

―大森選手から見た「選手・小林」とは?

大森「リクは器用。大学時代はFWの僕の後ろでプレーすることが多かった。ポジションを含めて細かい部分で気が効くし、シュートもパンチがある。身体の線は細いんですけど、シュートはパワフル。一瞬のスピードもあるから縦突破もできますね 」

―自分の良さを発揮することと、組織の中でのタスクをどう果たすのか。そこのバランスが難しい?

小林「いまはそんな感じです。でも、それをできるようにならないと出番も手にできないし、活躍もできないと分かっているので、いまは探っている状態です」
大森「大学の時は1年生から試合に出ていたし、シーズンを通してプレーすることでそれが良い方向に向かっていたと思う。いま、自分で言っていた通りにバランスを取るところで悩んでいるようですが、それは僕らにしても難しいところでもある。でもリクはサッカーに対して真摯だし、ストイックなので、そうして探し、もがいていると、いつかパッとハマることがあると思う。そうなったらポンポンとステップを踏めると思いますね」

―「サッカーに真摯」という言葉が出ましたが、大森さんもそのようなタイプに見えます。

小林「それは間違いありません」
大森「でも大学の時はそうでもなかったかもしれません。どちらかというとハセと同じようなスタンスで」
長谷川「確かに大学時代は練習開始ギリギリにグランドに来ていたよね。練習が始まればちゃんとやるんだけど」
大森「あの頃は自分の中で無理をするのが嫌だった。自然体で生きる、そんな感じ。難しいことはあまり考えずに。それがハセイズムだったから、それに僕も近いタイプだった。でも、プロに入ってケガをしてから変わったかも。食事とか、睡眠とか、オフの過ごし方とか、細かい部分もケアするようになりましたね」

―残りのシーズン、どう成長したいですか?

大森「僕がギラヴァンツ北九州に移籍してきたのも成長したかったから。札幌では出場機会も限られ、得点もそんなに取れなかったので、北九州に来てより多くのプレータイムを手にして、その中で得点感覚を研ぎ澄ませたいと思って来たところがあるので、いち早くゴールを取りたいし、またサポーターの方々もそれを期待してくれていると思うので、そこは本当にやらないといけない。得点を重ねることで、またアシストすることでギラヴァンツ北九州をJ2に昇格させたい。そのために僕は池西希スポーツダイレクターから声を掛けてもらったと思うので、責任を感じながら日々をしっかり過ごしたいと思っています」

―J3でプレーすることへの戸惑いは?

大森「2個カテゴリーを下げるわけですから、正直、ありました。でもJ3のレベルは確実に上がっているし、ギラヴァンツ北九州も良いチームだと思っていたし、何より環境を一度変えて自分を磨きたいという思いもあったので、ギラヴァンツ北九州でトライしようと決めました」

―長谷川選手は残りのシーズンをどう過ごしますか?

長谷川「まずは厳しいポジション争いに勝つこと。自分は今年3年目、プロ生活で大事な局面になると感じているので、ここで試合に出てチームを勝たせられるかがとても大事になります。簡単なトライではありませんが、自分の中ではそれを楽しめているし、ここからもどんどんチャレンジしていこう、という気持ちになれています」

―ポジションを手にするために何が必要でしょうか?

長谷川「杉山耕二、工藤孝太とは違う持ち味を出しながら、やっぱりDFは無失点という結果が一番求められる場所なので、そこにどれだけ貢献できるか。そのために僕の特徴でもある、声で周りを生かしながら、というところをさらに突き詰めていくことが大事なのかなと思います」

―長谷川選手の声の力をどう見ていますか?

大森「さっきも言いましたが、サッカーIQは高いので。これまでレベルの高いところでプレーすることで身に付けたそこの能力は大きな武器だと思います」

―小林選手は残りシーズンでどんな挑戦を?

小林「試合に出ないと、自分の中でのプレー感覚は戻って来ないと思うので、試合に出るためにも一日一日の練習でしっかりアピールしていこうと思っています」

―小林選手のプレーする姿はすっと背中が立っていて格好良いんですよね。

長谷川「何かしてくれそう、そういう期待感があるでしょ?」

―ありがとうございました。長谷川選手が先輩として慕われていると分かってホッとしました。

大森「めちゃくちゃ慕ってますよ」
小林「ピッチでは頼りになりますし」
長谷川「あざっす!」

この順天堂大出身トリオは第27節のFC今治戦から4試合続けて同時メンバー入り。第30節のいわてグルージャ盛岡戦では長谷川選手が3バックの一角として2試合連続先発、大森選手は加入後初先発、小林選手も途中出場。3人が同時にピッチに立つことはありませんでしたが、初めて3人が同じゲームでプレーした日となりました。『JTDトリオ』のこれからに期待です!

[取材・構成:島田 徹]