SHINMOJI KININARINYO新門司キニナリーニョ

新門司キニナリーニョ スペシャル①
池西 希 スポーツダイレクター

今季も21日にホーム、ミクスタで行われる第29節のFC岐阜戦を含めて残り10試合となります。現在5位につけるギラヴァンツ北九州にはJ2昇格の可能性があります。J2昇格へ向けて勝負の「ラスト10」で必要な要素とは何なのでしょうか。池西スポーツダイレクターを直撃してきました。

―第28節を終えてJ3リーグの5位。今季目標としていた「J2昇格プレーオフ圏の6位以上」が達成可能な位置につけていますし、まだ自動昇格となる2位を目指せる位置でもあります。この現状をどう捉えていますか? また何が良くてこの状況が生まれたと思いますか?

現状に関しては非常にポジティブに捉えています。ただ、最後の結果を手に入れるまでは満足するつもりはありません。そして、何が良かったというと、月並みかもしれませんが、期限付きで移籍している選手を含めると今季の選手32人とスタッフによるハードワークの賜物だと思っています。その中身を分析すると、それぞれがリスペクトし合い、みんなが良いチームにしていくための方向性を体現していること。そのあたりのチーム内の関係性の良さは練習や試合にもよく表れていると思います。苦しい時もバラバラになることなく一緒に進もうという意志を持ち続けた結果が今の成績につながっていると思います。

―逆にここまでで足りなかったこと。それは残り10試合で求めるべきモノにもなるとも思いますが、何かありますか?

足りなかったのは、もっと求めあうとか、もっと良いモノをつくりあげるという過程において、厳しく突き抜けて要求し合う意識だと思います。みんなが同じ方を向いているのでチームとしての一体感はあります。ただ、本当の一体感というのはただ仲が良いだけではなく、厳しい試合を勝ち切るような「闘う集団」だけが備えるモノだと思います。特に残り10試合では、求め合う厳しさが必ず必要になると考えています。もちろん、選手がそういう厳しさを持てるようなアプローチを僕や監督、スタッフがしていくことも必要です。

―J2昇格という大きな目標達成の可能性が見える中で迎える「ラスト10」で何が必要か、その中でスポーツダイレクターとしてどのような姿勢を見せたいと考えていますか?

ピッチ内で言えば、得点を取り切るところ。ここまでもチャンスがない試合は一つもありませんでしたが、実際の得点数は思うようには伸びていません。だから得点の確率を上げるための手段を考え、確立していくことが必要だと思います。ボールを持っているか、いないかに関わらず、より多くの選手がゴールに向かっていく姿勢をより強めることで、得点の確率は上がっていくと思っています。

―ピッチ外で求めるべきことは?

チーム全体で言えば、先ほど話した「厳しさ」を含め、残り10試合で大きな目標を達成するための手段としてそれが本当に的確なものなのかを突き詰めて考えること。例えばこれまで28試合を戦う、そのための準備段階にはさまざまなルーティンがありましたが、もっと良いものがあるのではないかという妥協なき検証をし続けることも必要なのではないか。それを考えスポーツダイレクターである僕からチームに伝え、それを引き出していくのが僕の仕事だと考えています。

―第13節から第25節までの13戦無敗という素晴らしい結果が今の成績につながっていると思いますが、夏の補強がそこに及ぼした影響も大きかったと思います。

夏の移籍期間で補強した藤原健介と大森真吾は本当によくやってくれていると思いますし、入ってすぐに自分の良さを出してくれています。またJ1から来た彼らにしてみれば、さまざまな環境に不足を感じているとは思いますが、そこでネガティブな言葉や姿勢を見せることは一切ありません。そういう意味では非常によくやってくれているとは思いますが、でもここからの10試合が彼らの持つ能力の本当の見せどころ。彼らはここギラヴァンツ北九州で結果を出したいという強い覚悟を持って来てくれているので、もっともっとやってくれると期待しています。

―藤原選手と大森選手が加入したことでほかの選手が刺激を受けていると感じますか?

まず6月に藤原が加入したことをきっかけに、同じポジションの井澤春輝、高吉正真のパフォーマンスは明らかに上がっています。J1の技術の高さを間近で見て感じることで、井澤と高吉が持つ能力がさらに引き出されているように感じます。もちろん、大森のプレーを見てほかのFW陣も目の色が変わって来たと感じています。しかし一方で、既存選手の藤原と大森という新加入選手を受け入れる力も高かったと思います。ライバルではあるけれども、彼らの力を自分とチームのために生かそうという非常にポジティブな考え方ができる選手が揃っているんだと分かったことはうれしいことでもあるし、彼らの加入を決めた自分としても良かったなと思える部分でした。もちろん、新加入選手の力だけでここまでの成績を積み上げてきたわけではありません。13戦無敗という記録の最初5試合のダッシュは既存選手の力で実現したものですから。

―残り10試合でJ2昇格へ向けて良いチャレンジを続けていくためにはファン、サポーターの力も必ず必要になってくるのでしょう。

本当に大きな力になっています。例えば、第24節のカターレ富山戦はギラフェス開催ということもあって今季最多の1万2000人を越える方々にミクスタに足を運んでいただき、そのパワーをもらって今季一番のゲーム、圧勝という結果を残すことができました。圧勝というのは僕ら内側だけの印象ではなく、見ている方々もゲーム途中で「これは勝つな」と思っていただけるだけのゲーム運びができたと思います。第26節の福島ユナイテッドFC戦はアウェイゲームでしたが、福島さんの集客イベントで5千人を越える完全アウェイの雰囲気でやるゲーム。それは本当に苦しい戦いでした。それを経験することでギラヴァンツ北九州を後押ししてくれるファン、サポーターのパワーがいかにありがたいかを逆に実感することができました。

―ギラフェスでの完勝を受けてのこともあるのでしょう、第27節のFC今治戦も5千人を越える来場者がミクスタに集いました。

それにもかかわらず負けてしまったことは本当に申し訳なく思っています。ですが、選手とスタッフは皆さんの期待に応えようと練習に懸命に取り組み、試合に臨んでいます。皆さんの声援は監督、スタッフ、選手たちにしっかり届き、特に苦しい時間帯や場面で本当に大きな力になっていることは間違いありません。ですから、もう一度われわれを信じていただいて、残り10試合のうち21日の第29節・FC岐阜戦を含めて5試合あるホームゲームでの後押し、そしてアウェイゲームにも可能な限りお越しいただきたいです。ぜひとも応援よろしくお願い致します。

[取材・構成:島田 徹]