SHINMOJI NOW新門司NOW
新門司NOW 第5回
とにかく勝ちたい!
井澤 春輝選手の決意
苦しい戦いに終始した前半戦の中で成長著しい姿を見せてくれた選手の一人が、今季から加入したボランチの井澤春輝選手。これまでのプロ生活で、これほど試合出場が続くシーズンはなかったという若武者に前半戦のこと、後半戦のこと、キャンプ中の島原で聞きました。
「とにかく試合に出て成長しなければならない」―今季加入した井澤選手が2021シーズンを迎えるにあたり考えていたことだ。浦和レッズユースからトップ昇格を果たすも、直後に徳島ヴォルティスへ期限付き移籍。そして昨季は鹿児島ユナイテッドFCへ期限付き移籍するも、ケガに泣かされ公式戦への出場機会をほとんどつかめない状況で今季からギラヴァンツ北九州へ完全移籍した。
「完全移籍で北九州に来て、今季結果を残さないと次はない」という大きな覚悟をもって新天地でのシーズンを迎えたが、プレシーズンの沖縄キャンプ終了直後、再びケガに泣かされてしまう。復帰後もなかなか出場機会を得られない日々が続いた。
腐らず、ひたむきに取り組む井澤選手に予期せぬ形でチャンスが舞い降りたのは5月5日に行われたアウェイ栃木SC戦のことだった。新型コロナウイルスの影響を受け、チームは大幅にメンバー変更を強いられることになり、先発出場の機会がまわってきたのだ。
「キャンプでケガをするシーズンが続いていて今季そこは乗り越えたんですが、キャンプから戻ってすぐにケガをしてしまい、正直めちゃくちゃ焦りました。でも、早く治して地道に取り組んでいたところ思いがけず栃木戦でチャンスをもらえて…。準備はしっかりしていたので、せっかく得たチャンスを絶対にモノにするんだという気持ちで臨みましたが、皆のおかげであの試合に勝てたことが大きかったです」
その栃木戦で見せた闘志溢れるプレーは、新加入の井澤選手のことをよく知らなかった多くのサポーターへの名刺代わりとなった。ピッチ上での井澤選手しか知らない人にとっては意外かもしれないが、ピッチ外では笑顔がかわいらしい、ちょっぴり取材が苦手な愛嬌あふれる好青年だ。
「なぜそうなのかは自分でもわからないんですけど、小さい頃から今のようなプレースタイルなんです。確かに僕自身の性格とは違うかもしれませんね。自分自身がうまいプレーをできないのでそっちの方向に行っちゃった、という気もしますが(笑)」
本人はこう謙遜するが、今季チームとして必要としていた球際の強さやアグレッシブさが井澤選手の台頭により改善されたことは前半戦の大きなトピックだった。そのこともあってかこの試合以降、いわゆる”ハルキ推し”のサポーターの方が明らかに増えたような気もした。
出場が続くことで見えたもの
「そこからは試合に絡めるようになりましたが、これほど出場したことが今までなかったので、練習と試合のサイクルに慣れていないことによるきつさを感じたり、なかなか勝てないことで苦しかったりする部分はあります。けど、試合に出続けることでわかったことがあるんです。それはサポーターの皆さんがかけてくれる言葉がこんなに大事なんだってこと。結果が出ないにも関わらず、『次はいけるぞ!』とかポジティブな励ましをしてくださって…。なんとかその期待に応えたいと思って臨んでいたんですけど、勝てなくて本当に申し訳なくて…。それだけではなくて、ホームの試合後に夕食を買いに行ったりする時、ミクスタの横を車で通るんですがたくさんの人が遅くまで片づけをしてくれているのを見て、この人たちのためにも勝たないといけないって思うんです」
今シーズン開幕当初に抱いた「とにかく試合に出たい」という思いが、いまは”ただ試合に出るだけ”ではなく、「勝たないといけない」という次なる思いに昇華された。たくさんの人が自分たちのプレーや結果に期待を抱き、応援してくれていることを、身をもって知ったからに他ならない。
5日間の日程で行っている島原での夏季キャンプ。過酷な暑さの中、ともすれば弱音を吐きたくなる環境でも、井澤選手は変わらずコツコツと与えられたタスクを遂行し、意欲的にピッチを駆け回る。
「最年長の岡さん(岡村 和哉選手)があれだけ声を出して精力的にやっていたら、自分もやらないとって思います。チームの皆は若いし僕も若い方なので、頑張らなきゃいけないですよね。キャンプでいい調整を図れていますし、後半戦はとにかく勝ちたい!そのためには点を取らないといけないですが、前半戦最後のようになかなか点を取れない、勝てない状況になると、どうしても負の空気がチーム全体に出てしまう。そういうのがあると、あんなふうにシュートがポストやバーに嫌われることも出てくる気がするので、もっと自分たちでポジティブに鼓舞しあっていい雰囲気をつくっていきたい。
とにかく、勝ちたいです!サポーターの皆さんも含めてたくさん喜び合いたい気持ちが強いんです」
出場を続けたことで、”自分”だけではなく”ささえてくれる人”が見えるようになったクール&ホットファイター。プレー面もメンタル面も大きな成長曲線を描き続ける彼のプレーが後半戦もきっと我々の心を熱くさせてくれるはずだ。