SHINMOJI NOW新門司NOW
新門司NOW 第1回
岡村和哉 選手
もっと選手の、チームの"いま"を伝えるべく、コラム『新門司NOW』の配信をスタートします! 初回は、チーム最年長のDF6 岡村 和哉選手の最近の"変化"について、お伝えします!!
「これね、”マンバン”って言うんですよ! 今は家でしか結んでいないですが、もう少し伸びたら試合や練習でも結ぼうかと思っています」―最近、髪型を変えた岡村和哉選手にそのことを尋ねるとこんな答えが返ってきた。
2019シーズンにも途中で髪型を変え、後ろで束ねるスタイルにしていた時期があったが、当時のヘアスタイル変更の大きな理由は、前所属のカマタマーレ讃岐でチームメートだった原 一樹選手(2014〜16シーズン、北九州に在籍)に憧れて。今回はと言うと、私生活での変化によるものだそうだ。
「4月に生まれた子どもの抱っことかミルクをあげる時とかに、前に垂れる髪が邪魔で切ろうと思ったんです。でも、髪を短くするにしてもダンディーな父親でもありたいというのがあって、だったら結ぼうかなと思って今のような形にしたんです。後ろを短くしているのは、夏で暑いから(笑)」
てっきり心境の変化でもあったのかと思ったが、育児に際しての不都合を解消するためのものだったらしい。予想に反した回答ではあったが、心境の変化があったと感じた理由は、岡村選手の姿が最近、より頼もしく感じられるから。
今季は、ご存知の通り昨季までの2年間の躍進を支えた多くの選手がチームを離れ、若い選手が一層増えた。それもあってか、練習中に声が出なくなったり、活気がなくなったりする瞬間が垣間見られてしまうが、そんな時、実にタイムリーかつクリティカルな声掛けをしているのが岡村選手なのだ。
もどかしいシーズンを送る今、思うこと
「僕が若い時、ベテランの人の声ってありがたかったなという思いがあって。けど、今の北九州の編成を考えた時に僕があまり言いすぎるのはよくない。どっちかと言えば、しんどい時や崩れそうな時にその流れをぐっと止めたり、もうひと踏ん張りさせられたりすればいいと思っています。試合中でも、たまにガミガミ言ってしまうことはありますが、昔よりはタイミングなどを考えながら声を出せているかなと思っています。そして、何より北九州は言えばわかってくれる選手ばかりですからね。みんな若いですけどそういうところはすごくリスペクトしています」
そんな素直な選手が揃う今季の北九州だが、持ち味を試合で表現できない、また表現できたとしてもそれが続かないもどかしいシーズンになっている。チーム最年長かつセンターバックとして最後尾からチームを見る岡村選手にはどう映っているのだろうか。
「今季は勝って、いい感じになると”安心”が出てしまう気がしています。いい試合やいいプレーをできても、その”自信”が”安心”になってしまい、次の試合ではまた元に戻ってしまう。去年は自信がどんどん続いていたというか、勝ちに貪欲だったなと感じます。試合に出る人出る人が活躍して、チーム内競争に勝ったメンバーが次戦に出場し、しっかり勝っていったのが去年。今年はと言うと、負けることで選手が代わり、それで勝ったら出た人は『勝った、よかった』と安心して、また負けてその人は代えられて…っていうパターンが多い。もちろん皆若いので、いろいろ波はあるにしろ、1試合で安心するのではなく突き進むことが大事かなと思います。ただ、僕たちがやっていること自体は決して間違っていないので、そこだけはブレないようにしたいですね」
普段のムードメーカーキャラとは打って変わって、チームのことを真剣に話すその目は非常に鋭かった。せっかくの機会なので、讃岐で残留争いを勝ち抜いてきた経験もある岡村選手に、いま必要なことを聞いてみた。
「まだシーズンは折り返してもいないし、本当に厳しい状況っていうのはもっと後にくるもの。それまでにこの流れを止めなければならないけど、止めようとするのではなくて、自分たちがもっと成長していった過程で止まっていたというふうにしなければいけないと思う。特に若い選手が揃うこのチームでは。
讃岐の時は、残留を目標にやっていたチームなので、残留するにはこうした方がいいっていうのはあったけど、北九州はそうではないし、個人の成長がチームの成長に直結する組織であるはず。極端な話、試合に負けた時に出ていた選手はショックだけど、出ていない人が次は自分にチャンスが来るんだと思えるか。そういうのでいいと思うので、一人一人がチームのために成長できるかっていうところに意識を向けたらいいと思います。正直、個人的にはもっとしんどいことをずっとやってきたので、今の状況なんて全然なんとも思っていないです。僕らは若いチームと言われがちですが、若いだけじゃないって言われるチームになりたいし、きっとなっていけると僕は思っています」
髪型についての柔らかい内容から随分真面目な話に切り替わったが、若い選手たちへの”親心”のようなものも感じられた。これもひょっとすると、一児の父という立場になったことが影響しているのかもしれない。
最後にお子さんの存在について聞くと、一気に頬を緩ませながらこんな話をしてくれた。
「息子が生まれてからは、いい意味でサッカーに対してリラックスして取り組めるようになったんですよ。練習や試合から帰ったら息子がいる、そしたら当たり前のことではあるかもしれないけど、グラウンドではサッカーに打ち込むだけでいいや、と思えているんです。今まで以上に。家族を養うためにサッカーで活躍しなければいけませんが、そのサッカーをする源が家族なので、いいバランスだなって思えているのかな。それと、少し穏やかになれましたかね。元々穏やかなタイプですが、もっと(笑)。常に上から息子に見られているんだと感じて、人にかける言葉や態度を顧みるようにもしています。
こんなに幸せでいいのかなって思いますね。タイガ(前川 大河選手)にも話したんですけど、自分の好きなことをしてお金をもらえて、家に帰れば嫁さんがいて、めちゃくちゃかわいい息子がいる。これ以上の幸せってないと思う。だから、それに関する辛いことなんか何も気にならない。試合で負けても、その時は落ち込むけど家に帰ればそんなのぶっ飛ぶんでね。自分がどれだけいい環境にいるかっていうのを改めて気づけたし、幸せの材料がプラスされた感じです。もちろん気が緩んでいるとかではなくて、どっしりと構えられるようになったのかなと。
息子が物心つく時まで選手を続けているのは難しいかもしれませんが、親父はしっかりとしたサッカー選手だったんだよって自信をもって言えるようにしたい。だから、頑張れるようになりました。もちろん、遠征中に体調が気になって電話しまくったり、前にはなかったような心配事は増えましたが(笑)。今のところ、サッカーも含めて、プラスしかないです!」
サッカーに向き合ううえでの新たな動力源を授かった背番号6。もがき苦しみながらも前に進もうとする若きイレブンにとって、今までもこれからも最高の道標であり続けてくれるはずだ。